身体的な緊張をほぐすには?

NHK Eテレの『バリバラー場面緘黙編』を観た後、身体的な緊張をほぐすにはどうすればいいのか考えてみました。

緊張すると喉が閉まったような感じになって、体までいうことをきかなくなる…。そんな体験を重ねる毎に、話せず動けない自分が人にどう見られているかが怖くて、人と接する機会を避けるようになってしまう。

緘黙で苦しんでいる本人は、普通に人と接して話したい・友達を作りたいのに、ものすごく理不尽な状況ですよね…。

でも、事情を知らない人は、無言・無表情で身体を固くしている緘黙の人に、正直どう対処していいのか分からないんじゃないでしょうか?自分が受け入られていないように感じ、それこそ不安になって、そのシチュエーションを回避しようとするかもしれません。「この人は私と接したくないんだ」と誤解されることも多いかも…。

だからこそ、場面緘黙がもっと一般に広まって、もっともっと理解が深まることを願わずにはいられません。ひとりでも普通に接してくれる人が傍にいれば、周囲の見方や反応も変わってくるはず。

それにしても、緊張による無表情やぎこちない身体の動きを改善する方法ってないものでしょうか?

番組を観ていて、人と接する時の緊張度が低いほど、顔の表情やふるまいがより自然な感じになるのが判りました。人前で恥ずかしそうに黙っているのと、無表情でカチンコチンに固まっているのとでは、印象が随分違ってくると思うんですよね。

たとえ無言でも、「あの人感じいいな」と思ってもらえれば、相手の態度も違ってくるんじゃないでしょうか?

緘黙のために身についてしまった無表情と身体の緊張を、なんとか家で改善する方法はないものかと、色々探していたところ、次のような動画に巡りあいました。

ご存知かもしれませんが、大愚元勝という和尚さんの人生相談です。

ひとつめは、ほぼ引きこもりでニートの女性へのアドバイス。

話すことだけがコミュニケーションではなく、ボディランゲージ、絵を描くこと、歌うことなど様々な表現方法があるという言葉に、ハッとさせられます。

また、できないこと・持っていないものばかり追うのでなく、今できること・持っているものを磨くことを提案しています。

うまく話せなくても、素敵な笑顔があれば、思いやりのある手紙が書けばそれでいいと。処方箋として、鏡の前で笑う練習をすること(動画の10分あたりから)をあげています。

実は、私もこれを実行していた時期がありました。

息子が赤ちゃんだった頃、夜泣きが酷くていつも機嫌が悪く、母親の私の方が相当参ってました。睡眠不足で疲れはててしまい、一日を乗り切るのが精いっぱい。当時は、めっちゃ暗い顔をしていたと思います。

相談した保健婦さんのアドバイスは、「息子さんはちゃんと育ってるし、こんなに可愛いじゃない?あなたはよくやってるわよ。毎日鏡を見て、にっこり笑って自分に『頑張ってるね』って言ってあげて」というもの。

で、実際にやってみたら、ほんのりと暖かい気持ちになれたような…(息子の夜泣きは睡眠スペシャリストに相談したり、専門書を読んで、なんとか解消)。自己暗示かもしれませんが、一定の効果があったと思ってます。

気休めかもしれないし、何も変わらないかもしれませんが、気は持ちよう。まず試してみては?大愚和尚は、特に「女の子は」と言ってますが、男の子も是非試してみてください。

ふたつめは、何もしていないのにイライラのはけ口にされるという30歳の女性へのアドバイス

緘黙の人と状況は違うのですが、毎日5分正座をすることによって、身体を変える(22分あたりから)ことを提案しています。

私は昨年からピラテスを始めたんですが、やっているうちに姿勢が良くなったように感じています。みなさん若いんだから、試してみる価値大ありです。

みっつめは、精神的な多汗症に悩む18歳の男子高校生へのアドバイス

こちらも状況は全く違いますが、その元凶は不安です。自分の身体に起こることのしくみ(なぜ緘黙状態になるのか)を理解し、緊張した時にはそのことを考えるのではなく、何か別のことに集中することが問題の解決になるのではと説明しています(15分あたりから)。

大愚和尚さんの言葉、とても愛情がこもっていると思います。話だけでも聞いてみてください。

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『バリバラ』を観て--身体的な緊張

『バリバラ』を観て――身体的な緊張

明けましておめでとうございます。

えっ、もう2018年になっちゃったのか~という感じで始まった新年、もう6日目に入り、今日はクリスマス飾りをかたづけました。

そして、仲間の好意で昨年10月に放送されたNHK Eテレの『バリバラー場面緘黙編』を観ることができました。

10~20歳代の、いわば大人(ひとりは学生)の当事者さんと経験者さん計4名が出演。番組では長期間緘黙で苦しんだ・苦しんでいる人の問題が浮き彫りにされたように感じました。

私の印象に残ったのは、「話せないこと」よりも、身体的な緊張です。

不安や緊張を隠すため(?)に長年身に着いてしまった無表情な顔、そして委縮した身体の不自然な動き…。

無表情だから、困っていてもあまり困ったように見えない…。手足や体の動きがぎこちなくて、話さないことよりもそれ自体が目立つような…。

緘黙のせいで「話せない」だけでなく、他人と接する場面で身体が思うように動かなくなってしまう――そのため外出したり、誰かと会うこと自体が怖くなり、家の外に出ること自体を避けるようになってしまう…。社会生活と直結しているだけに、ものすごく深刻です。

出演したのは、母親と祖母としか話せない加藤さん(男性)、小学校時代に緘黙で今も雑談が苦手な田中さん(女性)、学校ではほとんど話せないほのっぴさん(女性)、外ではほとんど話せない遠藤さん(女性)。

学校や外でほとんど話せないのに、明るいライトに照らされたスタジオで、大勢の人の視線を浴びながら自己紹介?!

と思いきや、ほのっぴさんも遠藤さんも、少し時間はかかりましたが声を出すことができて大感動!

みんなが固唾をのんで見守る中、ものすごい勇気だなと思いました。

きっと、出演者たちの中で「変わりたい!話せるようになりたい!」という気持ちがめっちゃ強かったんだろうなと…。

自己紹介したとき、司会者たちの方を見られたのは、緘黙経験者の田中さんだけでした。

番組冒頭で普段の様子を取材された加藤さんは、音声アプリを使用。無理に声を絞り出そうとはせず、自分が「これなら出来る」と安心できる方法でコミュニケーションしました。

彼は新聞配達の仕事や講演会などの啓蒙活動もしていて、チャレンジ精神がすごいです。まず自分ができそうなことから始めて、行動を広げてきたようですが、そこでは得意のケン玉が大いに役立っているとのこと。やはり好きなこと・得意なことがあると強いですね。「好き」「やりたい」というエネルギーが、緘黙の殻を破る力につながるんだと思います。

専門家の高木先生が言われるように、同じ場面緘黙でもひとりひとり本当に違います。「この人ができるから私も、うちの子も」という訳にはいきません。

声を出せそうな人は音声アプリに頼らない方がいいと思うのですが、音声アプリで自信を得てから、声を出すことに挑戦という人もいるでしょう。信頼できる人に協力してもらい、自分の緘黙・不安状態をしっかり把握することが大切だと改めて思いました。そのうえで、その人に合う方法で少しずつステップアップしていくのが一番かと。

加藤さんの場合は、自宅でも、勤務先の新聞販売所でも、スタジオでも、カメラの前では笑顔は見られませんでした。小学低学年までは話せたそうですが、緘黙になった当時は朝自分の席に座ったら、トイレも行けず、給食も食べられず、一日中ずーっとそのままの姿勢で過ごしたとか…。完全な緘動状態で、毎日緊張でヘトヘトだったのでは?

小学校高学年になると自意識が強くなり、他人の目が気になります。「みんなに変に思われる」と余計に緊張しがち。そのため、緘黙・感動状態が定着する傾向が強くなってしまうのです。

彼の中で、人に声を聴かれることと同じように、感情を外に出すことが一番怖いのかもしれません。母親と二人きりで会話しているシーンでは、言葉が普通にでるだけでなく、身体の動きもずっと自然です。そこに取材スタッフが入ると、すっかり固まって手や腕の動きまでぎこちなくなる…。

そんな彼が、新聞配達の仕事を3年間続けて周囲の信頼を得、講演会や啓蒙活動を通して大勢の人と接しているのは、本当にすごいと思います。

ところで、新聞販売店の所長の「加藤君は大事な戦力」という言葉――本人はもちろん、緘黙の人やその保護者たちにも本当に希望が持てて嬉しいですよね。

どんどん自信をつけて、緘黙克服の力をため込んで欲しいです。

一方、ひとりでの買い物に挑戦した遠藤さんは、自宅で母親が隣にいる状態だと、緊張もそれほど強くないよう。言葉も出やすく、表情も和らいで笑顔に近い…。話すとき、スタッフと視線を合わせているな、というのが判ります。

買い物チャレンジでは、すっとお店に入って店員に会釈も。ただ、事前の分析で緊張レベル2(ふつう)と思っていた「服を選ぶ」行為が、実際やってみたら最難関のレベル5だということが判明。でも、スタッフの所にきて首振りでやり取りしている遠藤さんの緊張度はそれほど高くないように見えました。

急遽、服を決めることだけ母親と一緒にしたのですが、母娘で歩いている時はほっとして嬉しそう。服を決めた時言葉が出て、ひとりで試着した後に店員さんに笑顔で「大丈夫です」と言えました。

新しい洋服、とっても似合ってましたね。

気に入った洋服を手に入れるというワクワク感が、不安に勝ったように見えました。これからも、ひとりでお買い物したり、カフェに入ったりする挑戦をどんどん繰り返してステップアップして欲しいです。もし不安が強い場合は、最初だけお母さんにお店の外で待っててもらったり、店の近くにいてもらえばいいんじゃないかな。

和らいだ表情だと、周りの人も親しみが持てて、とっつき易いですよね。

次回は、どうやったら身体的な緊張をほぐせるか考えてみたいと思います。