子どもと学校環境

夏休みに入ったらもっと頻繁にブログの更新をしようと思っていたのに、あれよあれよという間にもう1週間以上が過ぎてしまいました。

学校ではサマータームが終了し、SENエージェント経由の個人レッスンもお休みに入る予定でしたが、生徒さん達の希望によりエキストラでレッスンが入ることに。他に片づけなければいけない仕事もあるし、目前に迫った家族旅行の計画も立てなきゃいけないし…(個人旅行なので誰かがやらなきゃいけないんですが、うちの家族はいつも私に任せっぱなし)。

そう思いつつも、久しぶりに友達家族を招いてBBQをしたり、旦那様の実家にやってきた地方の友達と再会したり。子どもが夏休みだと私もお休みモードになるので、いつもよりゆったりできるような気がしちゃうんですよね。で、今ごろ焦ってます。

さて、話は変わりますが、私は場面緘黙の子どもの支援をしたくて頑張ってSENTA(特別支援員)のエージェントに登録したのに、ふと気づくと何故かTAではなく日本語講師をしているという…。きっかけは、「日本語を習いたい子がいるからお願い」というエージェントからの依頼だったんですが、流れに任せているうちに、目標からかなりハズレてしまいました…。

でも、エージェントから来るTAの仕事って、たいていがASD児のサポートなんです…。イギリスでは特別支援教育が定着していますが、地方自治体から支援の予算が出るのは、「特別教育のニーズ」を認定された子どものみ。認定されると、EHCプラン(Education, Healthcare and Care Plan教育・医療・ケアプラン)を立てて、遂行する義務が生じます。

子どもの問題が場面緘黙だけの場合は、「特別教育のニーズ」を認定してもらうのが難しく、学校が緘黙児のためにTAを雇うことは殆どないんです。だから、いくら待っても緘黙児の支援で声がかかることはないかも…。

(学校にもよりますが、インファント(小学校低学年)ではクラスにTA(学習支援員)が常任し、EHCプランを持つ子どもにはだいたい専属のTAがつきます。特別支援の予算が多い学校なら、TAの数はもっと多いかもしれません。

EHCプランはなくても特別支援が必要な子どもは、これらのTAができる範囲で面倒を見ているという感じです。だから、緘黙児が受けられる支援は、学校や予算、クラスの状況によって千差万別。イギリスだから手厚い支援やケアが受けられるかというと、そうでもないのです)。

さて、私が今日本語を教えているのは、高機能自閉症(ASD)の子どもを対象にした小さな私立の特別支援学校です。2年ほど前、1年間TAの修行をさせていただいたのですが、当時も今も緘黙児はひとりもいません。

生徒は14~19歳のアニメ大好きティーンばかりなのですが、彼らを見ていて感じるのは、学校がちゃんと自分の居場所になっているなということ。

全校生徒が30名ほどのこの小さな学校は、1クラスが6人以下。生徒2人に対し大人が1人という割合で、きめ細やかな支援を行っています。SLT(言語療法士)と作業療法士が常務し、アートセラピーや音楽セラピーなども。

公立の普通校に適応できず転校してきた子が大勢いるのですが、転入当時どんなに荒れていても、いつの間にか先生や学校に慣れて、ある程度友達付き合いができるようになるのがスゴイ。

子どもと学校スタッフの距離がとても近く、生徒がみんな安心して暮らしているというか――セカンダリー(12~16歳)になってくると、自分の長所と短所をちゃんと把握していて、かなり落ち着いて学校生活を送っているようにみえます。

まあ、ティーンなので時々は誰かが事件を起こしたりする訳ですが、なんというか、みんな自分に自信を持っているように感じるんですよね。

授業をしていても、わからないところはどんどん訊いてくるし、ある生徒は「僕は理論的に理解できないと、次に進めない」と、納得するまでプリントを読み返します。自分がみんなより遅れていても、「自分の学習スタイルはこうだから」と卑屈にならないんですよね(まあ、あまり人のことを気にしないのもありますが)。

子ども達にとって、学校の環境が合ってるからだと思うんです。不安が強い緘黙児たちにも、彼らに合う環境の学校があったらいいですよね。

実際に学校環境を変えるのは無理でも、周りの教師や大人の配慮で、緘黙児がほっと安心できるひとときや場所を作ってあげられるんじゃないかな…。繊細な緘黙児はそういうことにはとても敏感なので、先生が自分を気にかけてくれていると感じるだけでも違うんじゃないでしょうか。