出生時のトラウマ体験と不安になりやすい気質

またまた更新が遅れてしまいました。緘黙を含めた恐怖症や抑制的な気質についていろいろ考えていたんですが、なかなか考えがまとまらず…。そんな時、最近知り合ったフィジオセラピストの友だちから、「不安症になる子って、出生時にトラウマ的な体験をした子が多いの。そういう子ども達には、ソマティック・エクスペリエンシング(Somatic Experiencing 体細胞療法)が効果的なのよ」と言われたんです。

そういえば、うちの息子も微弱陣痛と回旋異常があってお産に時間がかかり、最終的には心拍数低下が心配されたため急遽手術室へ。なんとか帝王切開は免れましたが、鉗子分娩となりました。私も大変だったけど、息子も相当大変だったろうなと思います。

私は息子の抑制的な気質は遺伝によるものが大きいと思っていました。生まれつき脳の扁桃体、アミグダラの反応しきい値が低いため、刺激に過敏に反応してしまい、不安になりやすいんだと思ってたんですね。でも、彼女は「不安を感じる時って、まず身体や細胞が先に反応して、それが脳に伝わって恐いと思うんじゃない?」と…。

むむむ、どうなんでしょう?緘黙のお子さんを持つ方に訊いてみたいんですが、出産の時は大変だったでしょうか?普通分娩で体重も平均的で、よくミルクを飲んでよく眠る赤ちゃんだったら、緘黙になったり、不安症にはならないものなのかな…。

ちなみに、息子はすごく癇が強い赤ちゃんで、それはそれはよく泣いたものです。7ヶ月でスリープトレーニングを始めて一晩中眠るようになるまでは、もう体力限界という感じでした。

4歳半で場面緘黙になり、7歳半でだいたい克服した後も、別に積極的になった訳ではなく、基本的にはシャイで慎重な性格です。成長過程で少しずつ不安の対処法を身につけているようですが、生まれ持った抑制的な気質というのは、根本のところは変わらないんじゃないかなと思っています。

でも、SE(ソマィック・エクスペアリエンシング 体細胞療法)によると、不安になりやすかったり、鬱になったりするのは、過去のトラウマ的な体験によって神経系がうまく機能していないから。でも、赤ちゃんには、もちろん出生時のトラウマ体験を記憶してない訳で。友人によると、身体と細胞が記憶しているということなんですが…。

ちょっと調べたところ、SEはアメリカのピーター・リヴァイン博士(Dr. Peter Levine)が体系化した、心理的問題を身体面から癒していく身体的アプローチとあります。特に、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療に有効ということ。

過去のトラウマを起草させるもの(トリガー)があると、脳から危険信号が出て身体が生理的に反応し、恐怖や不安を感じてしまう――抑制的な気質の人は、脳がちょっとしたことでも危険信号を出してしまうため不安を感じやすい?どことなく接点があるような。

SEで抑制的な気質が改善するということはあるんでしょうか?友だちはSEのセミナーに通っているようなので、次回会った時にもう少し詳しく訊いてみようかなと思います。

早期発見・治療の重要性

あっという間に時間が過ぎて、またまた更新の間が空いてしまいました。ふと気づいたらすでに5月も半ばちかく――いつの間にか前庭のイングリッシュローズの一番花が咲いてました。ここのところ20度を超える日が続き、春爛漫の花薫るような気候です。

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Mary Rose の一番花。今年はピンクの色がちょっと濃いみたい

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ご近所を歩いていると、色々な花との出会いがあります

ところで、しばらくブログを見ないうちに、いきなり文字の色が薄くなっているのに気づきました。字がボヤケてしまい、読みにくくてすみません!多分、WordPressをアップグレードした段階で問題が生じたと思うのですが、主人にきいても原因が判らず…。どうしようもないので、今回は太字にしてみました。

さて、4月20日に参加した場面緘黙ワークショップでは、「障害(disorder)」という言葉がすごく引っかかりました。Hクリステンセンによる研究データ(『場面緘黙のワークショップに行ってきました』を参照ください)を見ると、「分離不安障害」や「社会不安障害」など、併存する症状には殆ど “障害(Disorder)” という言葉がついています。

クリステンセンの論文の抄録をチェックしたところ、対象となった54名の子どもの年齢には触れてないよう。発症年齢を考えると、3~12歳くらいと思うんですが…。併存する障害があるかないかの判断は、DSM4を基準にして、子どもへのアセスメントと親への調査を通して行われたとあります。

併存している症状が、厳密に「障害」と名がつくほど深刻だったのか?話さない子どもに対して厳正な診断ができたのかどうか?また、何歳くらいの子どもが多かったのか?いろいろ気になります。

これに対して、年齢順に併存症をならべたマギーさんとアリソンさんのデータを見ると、最初の4項目(年齢が幼い順から)は「分離不安」や「全般性不安」など、”障害(Disorder)”という言葉がついていません。

「~症」と「障害」の違いについてマギーさんに質問したところ、「簡単にいうと、深刻な症状が長期に渡って持続し、生活に支障をきたすレベルが『障害』」ということ。例えば、「社会不安障害」だと、DSM-Vでは深刻な社会不安の状態が6ヶ月以上続く場合と定義されています(詳しくは『専門家に相談する必要性?』をご参照ください)。

2年ほど前に、《9歳の壁》について書きました(詳しくは『告知するかしないか(その3)』をご参照ください)。小学校の中・高学年になると、場面緘黙の治療は難しくなるといわれています。その理由は、プレ思春期に入る9歳頃から、子どもはものごとを対象化してみることができるようになり、自分と周囲を意識しはじめるため。その時点で、すでに何年も緘黙状態が続いて「話さない子」のイメージが固定化してしまい、自意識も強くなるため、話し始めることがより困難になるのです。

マギーさんとアリソンさんのデータにも年齢は書かれてないのですが、子どもが自分を客観視できるようになり、周囲と比べることが多くなるこのプレ思春期あたりから、併存する症状が悪化する可能性があるのではないか――そう思い当たりました。

例えば、入園したばかりの園児の中には、初めて母親と離れて大泣きする子がよくいますよね?それでも、大体の子は1ヶ月くらいで園に馴染みはじめるんじゃないでしょうか?こういった子ども達は「母子分離不安」はあるものの、「障害」まではいってないはず。

(1ヶ月以上経っても全く母親から離れられず、ストレスで心や体に不調が出てくるようであれば、「障害」になるのかな?その場合は、専門家に相談したり、入園を見合わせる必要もでてくるかと思います。年齢的な目安はありますが、子どもは一人ひとり違うので、我が子からのサインを見逃さないことが重要になってきそう)。

マギーさんとアリソンさんのリストをみると、「障害」という名がつく不安症は最後から2番めの「社会不安障害」。順番からいって、幼児期ではなくプレ思春期~思春期のころかなと想像できます。幼児期でも社会不安を感じている子は多いはずですが、それは家庭とは違う学校や園の雰囲気、知らない大人達に対する、感覚的・生理的なものが大きいんじゃないでしょうか?

それが、プレ思春期や本格的な思春期に入ると、より深刻化する可能性がでてくるように思います。その理由は、社会不安障害の定義は、「他者から否定的な目で見られたり、否定的な評価をされることへの恐怖や不安」というものだから。周囲の目が気になるようになり、自分についてより深く考えることができるようになってはじめて、「他者から見た自分の評価」を下すことが可能になるからです。

子どもの体と心が急激に変化する思春期は、誰もが悩みや葛藤を経験する時期。不安になりやすく繊細な緘黙児は、緘黙だけでなく併存症を抱えていることが多いのに、それに加えて、思春期特有の葛藤を抱えながら毎日を過ごさねばなりません。それが、かなりのストレスとなり、併存症が悪化しても不思議ではないと思うんです。

場面緘黙は早期発見・治療が重要といわれますが、それは緘黙の併存症を悪化させないことにも繋がるのではないかーー今回のワークショップで感じたことのひとつです。

<関連記事>

場面緘黙のワークショップに行ってきました

場面緘黙と他の不安障害の関連性--場面緘黙のワークショップから

専門家に相談する必要性?

告知するかしないか(その3)

 

新しいガーデンセンター発見

5月の3連休も今日で終わりですが、日本ではまだGWが続きますね。ロンドンの今日の天気は曇のち雨。土曜日はよく晴れてポカポカいい陽気だったのに、また寒さが逆戻りした感じ。日が陰ると、とたんに肌寒くなってしまいます。

今日はどうしてもやらなければならないことがあって、家族を巻き込んで決行しました。それは――運転の練習。TAのエージェント経由で新しい生徒さんに日本語を教えることになったんですが、まず第一の課題は教える場所までちゃんと車で行き着けるかどうか…。

祭日の午前中だったら交通量も少ないので、10時頃に夫と息子をせかしてイザ出発。交通量の多い主要道路、A Roadをできるだけ避け、距離は伸びても片側1車線のB Roadを事前に選んでおきました。

そんなのカーナビをつけてひとりで練習すればいいこと――と思われることでしょう。でも、私は「初めて運転する道」「初めて行く場所」にものすごい不安を覚えるんです。ご近所の慣れてる場所だったら、全然平気なんですけどね…。

そのうえ、ロンドンでは郊外といえど駐車スペースを確保するのが結構大変。運転自体もヘタなので、「スペースを見つけられるか」「駐車できるか」にもドキドキしてしまうのです。多分大丈夫だろうけど、「道に迷っても息子が教えてくれる」「イザという時は主人に代わってもらえる」と思うと、不安が少し減るという…。保険のようなものですね。

きっと場面緘黙の子どもも、こんな気持になるのかも。もし免許を取った20歳頃に、バンバン高速に出て練習していたら不安を克服できたのかも--.でも、やっぱり性格上無理な気が…(イギリスではずっとペーパードライバーで、子どもを生んでから必要にかられて運転を再開しました)。それでも、なんとか自分なりに工夫して慣れることで、限定的ですが大丈夫になるのです。

ちなみに、私は日本の免許をイギリスものに切り替えたんですが、こちらで試験を受けたら絶対受からないと思う。自分でいうのも何ですが、2車線道路で隣にバスが来ただけで緊張しちゃうんです。息子を送り迎えする際、よく平気で横に乗ってるなと思います(笑)。

今日もなんとか目的地にたどり着き、駐車もできました。家族も慣れているのか、「ひぇ~」「なんで~」「怖っ」といった私の独り言もスルー。息子は長距離トラック運転のゲームにハマっているので、「こうした方がいいよ」とまるで教官。でも、「ああそうか」と納得できることも多く、ありがたくアドバイスをきいたのでした。

駐車した後、その付近にある Wolve Lane Horticultural & Garden Centre に立ち寄りました。複数の温室と(日本風の?)庭があって、サボテンなど熱帯植物の温室を一般公開。温室で育てた植物を販売するガーデンセンターとカフェもあります。

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北ロンドンの郊外に温室がずらり

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サボテンの種類が豊富で、花をつけてるのも多数ありました

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サボテン室のお隣はゴムの樹(?)のジャングルみたいになってます

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中庭には春の花がいっぱい。でも、噂にきいていた日本風の庭園は見つからず…

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アジサイ専用の温室もありました

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トマトやジャガイモなど野菜もいっぱい。袋で育てる便利な方法も(左)

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ここのガーデンセンターはかなりお得な値段設定

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帰宅途中でカフェによって、ブランチを楽しんできました