サキ君の動画について(その4)-家庭での会話の大切さー

幼少の頃は両親しか話せる人がいなかったというサキ君(動画の1:20分あたり)。学校で話さなかった9年間も、やっぱり親が一番の話し相手だったようです。学校や家庭外で話せないからこそ、家庭での会話やコミュニケーションを増やし、楽しい体験を積み重ねて自信を培うことが本当に大切になってきます。

といっても、保護者は忙しい一日の終わりに、家でほっと一息つきたいという気持ちが大きいですよね。子どもも宿題をしたり、塾に行ったり、TVを観たり、SNSで友だちとやり取りしたりと忙しいし--自分の部屋に閉じこもりがちなティーンも多いかも…。平日家族が集って話す時間といえば、夕食時かTVタイムくらいでしょうか?

緘黙の子どもに「今日は学校(園)どうだった?」と訊いても、あまり反応が返ってこないかと思います。5歳に満たない園児でも、「黙っていることは悪いこと」「自分は他の子と違う」と感じているよう。ちなみに、うちの息子は昔から園や学校の事を話したがりませんでした。でも、何かきっかけがあると、訊いてもいないのに色々ペラペラ喋りまくるのです。自分のことじゃない方が、話しやすいんですね。

食事を囲みながら、子どもが興味を持ちそうな話題をあげてみてはどうでしょう?例えば、好きなタレントやキャラ、ゲームのこととか(兄弟姉妹がいる場合は、発言のチャンスをふってあげる必要があるかもしれません)。家族で楽しくダベリングする時間は緘黙の話題はNGかな。その代わり、短くてもいいので子どもと2人きりの時間をとって、様子を見ながら話してみてもいいかもれません。

それと、話をする際はなるべく長い会話を引き出せるといいですね。子どもが何か言ったら、「うん、うん」「それ面白いね」「それで、それで?」など、相槌をうって子どもの話に興味をしめしながら、話を聴いてあげてください。子どもが次に何か言うまで10秒くらい待って、もっともっと言葉を引き出せるよう、何気なく促すようにするといいと思います。

私がイギリスで子育てしてみて感じたのは、「理屈っぽい子が多いなあ」ということでした。英語には丁寧な言い方や単語はありますが、日本語のような敬語体系はありません。なので、複雑さは別にして、だいたい大人と変わらない言葉遣い。言語構造上、英語だと文章をきちんと言わないと意味が通じないことが多いので、小さい子でもけっこう長い文章で話すんです。

それと、日本のように「察する文化」ではないので、自分の意見を言わないと「この人は何も言わないからこれで満足しているんだ」と思われてしまう。子どもでも、自己主張をすることが求められる訳です。自分はこうしたい、こう思うとハッキリ言わなければならないのもあって、なんか理屈っぽくなるのかなと…。

これに反して、日本語は主語や目的語、助詞などを省略しても意味が通じます。特に、気心がしれた家庭内では、短い単語だけで充分解り合えてしまう。それほど言葉で説明する必要がなく、また、あまりキチンと言うと返って角が立つのが「察しの文化」なんですね(その分、場の空気を読めないと、まずいことになりがちですが…)。

この前も触れたのですが、私は2年ほど前に『話し言葉、言語、コミュニケーションに困難を持つ子どもの支援(Supporting Children with Speech, Language & Communication Needs)』というコースを受講していました。「話し言葉」の課題で、当時13歳だった息子と友だちの会話をモニターして分析したんです。13・14歳の標準は、ひとつの文章が7~12単語で構成され、相手によって丁寧語やスラングを自在に使い分けられるというもの。

人がいくつの単語からなる文章で話してるかなんて、それまで全く考えたことがありませんでした。で、録音した会話を分析してみたら、全部ではありませんが、標準に近い単語数で話していることが判明。「えっ、私と話す時もそんなに長い文章で話してたっけ?」そう思って、主人と息子の会話に耳を傾けてみたら、文章が結構長くて専門的(PCやITに関する会話が多い)なのでした…。私と話してる時と比べると、なんか大人っぽい。もしかして、私との会話では、私の英語レベルに合わせてるのかも…(恥)。

緘黙の子どもたちは、一日の大半を過ごす学校で会話の実践練習ができません。頭で考えたことを、実際に口に出して話術をみがく機会が、普通よりかなり少ないんです。だからこそ、家庭でいっぱい話して欲しいです。親もなるべく単語を省略しない文章を使って、毎日楽しいダベリングタイムを持てるといいなと思います。

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暖冬だと思っていたら、もう1月末からスノードロップもクロッカスも水仙も咲き始めました。

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