場面緘黙啓発月間の広報活動の一貫として、10月7日にはBBCラジオ・スリーカウンティ局が、場面緘黙を特集しました。
メンタルヘルスをテーマにした’Shrink Wrapped’という番組で、たっぷり1時間のあいだ場面緘黙の話題に集中。SMiRAの会員(保護者)2名をスタジオに招き、DJのルィーザさんがそれぞれのケースについて話を聞いています。精神科医のチェトナ・カングさんの解説つきで、とても分かりやすい内容になっていました。後半には、 SMiRAコーディナーターのリンジーさんとミスUKのカースティ・ヘイズルウッドさんの電話インタビューも。
http://www.bbc.co.uk/programmes/p032l5nk#play
(↑ リンクです。クレアさんのインタビューは8分くらから。日本でも聴けるかどうか不明ですが、リンクは25日間有効です)
まずは13歳の娘を持つクレアさんの話から。娘さんは入園前のプレイグループでは誰とも口をきかず、ママにべったりだったそう。幼稚園(3歳から)では2人くらいの友達に囁やけたということ。ただ、大人に対しては全くダメで、親族の中にも話せない人が大勢いたようです。小学校(4歳~11歳)では初日に先生に囁くことができ、質問に答えることもあったそうですが、自分から何かいうことはありませんでした。
「少しは話せる状態でも、場面緘黙なのか?」この問に対して、チェトナ医師は「他の精神疾患と同様に、症状が白黒はっきりしている訳ではなく、グレ-のスペクトラム状に広がっていると考えられる」と答えています。囁けるといっても、どこでも誰にでもという訳ではなく、話せるようになる保証はないため、やはり支援が必要です。
セカンダリースクール(12~16歳)に進学する前、学校の提案で心理士に会ったところ、「ものすごく心配症の子ども」と診断され、それでおしまい。フォローアップは全くなかったそう。これって、うちの息子が4歳で受診した時と同じです――イギリスでも6、7年ほど前までは場面緘黙を知らない専門家がいて、サポートを受けられないことも多かったのです。
幸運なことに、うちの場合は診察アポを待っている間に「場面緘黙」という疾患(?)があることを発見。事前にSMiRAに連絡し、アドバイスを得ることができました。診察のあと、2人の心理士に「場面緘黙だと思うんですが…」と自己申告し、主人と一緒に「言語療法士に紹介してください。お願いします!」と必死で頼み込んだのでした(国民保険を使用する場合は、紹介状がないと受診できません)。
話をクレアさんの娘さんに戻すと、かなり活発な子で、水泳やガールスカウトなど複数のアクティビティに参加していたそう。でも、学校外のこういった活動では全く話せませんでした。5年ほど前、緘黙のドキュメンタリー番組を観たスカウトのリーダーから電話があり、クレアさんはその時初めて「場面緘黙」を知ったのです。
興味深いなと思ったのは、娘さんが家族にも自分の気持ちを言葉にしない(できない)こと。それから、学校外の活動でも、ボディランゲージが変わり、スピードが落ちることです。誰でも緊張すると普段通りにできないものですが、緘黙児は緘動とはいかないまでも、動作が鈍くなり、スピードが落ちる傾向が強いように思います。
想像してみてください。魚みたいに泳げる娘が、スイミングスクールでは水に入るのを怖がる。やっと入ったと思ったら、今度は隅っこでいつものようには泳がない――親としてはフラストレーションがたまりますよね…。
クレアさんは緘黙を知らなかったため、良かれと思って娘さんをプッシュしてしまったと反省していました。親としては、もう少し頑張らせたいのは当然ですよね。でも、このインタビューの当日に、本人から「(ママ達が)私にしゃべらせようとして、酷かった」と言われたとか――そう言われちゃうと本当にショックです。
ところで、娘さんは校庭の片隅で遊んでいて緊張が溶けることもあり、大声で叫んだり、はしゃいで話したりしていたとか。だから、周囲も彼女がしゃべれることは知っていたのです。そのために、いつも上級生に「なんでしゃべらないの?」と責められるハメになったよう…。娘さんには幅広い友達がいたけれど、特別な仲良しを作るのは難しかったと回想しています。
不安のために話せないだけではなく、動作も遅くなって、しかも家で普通にできることができなくなってしまう…。たとえ、少し話せたり、囁やけたりしても、やはり持って生まれた抑制的な性格は変わらないのです。「この子は症状が軽いから」と思って、周囲がプッシュしすぎたり、支援がなかったりすると、状況次第では症状が悪化してしまうことも…。超敏感な子どもへの接し方は、本当に難しいと思います。
話が長くなってしまったので、次回に続きます。今ブルガリアの友達家族が遊びに来ているため、なかなか時間が取れなくて支離滅裂になってしまい、すいません。
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