先週、イギリスの国営放送BBCで場面緘黙が取り上げられました。『Victoria Derbyshire』という情報番組の中で紹介され、解説役にはSLTのアリソン・ウィンジェンズさん (『場面緘黙リソースマニュアル』の共著者) と緘黙経験者のコメディアン、ヘレン・キーンさんが登場。今回は大人の場面緘黙を紹介したことが特徴的といえます。
BBCニュースのYou-Tubeチャンネルに「話すことへの恐怖症があります」というタイトルで映像(TV番組とは少々異なる)があがっていました。お借りして貼り付けます。すぐ消されないといいんですが…。
まずは、イギリスの地方の町に住む35歳のサブリーナさんの話から。
<サブリーナの独白>
意図して話さないと思われるのは悲しい。でも、自分で変えようと思っても変えられるものじゃないの。お祖母ちゃんには何でも話せたわ。なのに、お祖母ちゃんが脳卒中を起こした時、不安にかられて全く話せなくなってしまった…。それから、お婆ちゃんは亡くなってしまったけれど、それでも話せなくて、大好きとさえ言えなかったの。
映像では、BBCの記者、アシュリーがロッチデールという町に住むサブリーナの家を訪問します。
「現在35歳のサブリーナは、子どもの頃からずっと場面緘黙に苦しんできました。コミュニケーションは母親と電子機器に頼っています」
記者アシュリー(A): SM状態の時、どんな気持?
サブリーナ(S): 捕われた感じ。
A: 今、そういう風に感じてるの?
S: そう。何か訊かれると考えるのが難しくなる。
A: 子どもの頃のことを教えて。
S: 友達を作ったり、必要な時に助けを求めるというようなことが、本当に難しかった。
A: これまでずっと捕われたように感じてきた?
S: そう。
A: 場面緘黙だったせいで、友達を作ったり、ごく普通の生活を送ることにも努力しなければならない生活を、どう感じてきた?
S: やりたかったことを本当にたくさん逃してしまった…。
A: 場面緘黙が長く続くと、楽になるというより、むしろ困難が増すという印象を受けたんだけど、そうなのかな?
S: そう。今はさらに生きづらくなってる。
A: どうして今の方が難しいと思う?
S: 子どもの頃の方が親ができることが多いし、代弁してもらえるから。大人になると全部自分でやるのが当然と思われちゃうけど、私には無理。
母親のダイアンさん(D): 年を追うごとにどんどん症状が悪化して、不安に襲われるようになって…。だから、この娘は本当に辛い思いをしてるのよ。
A:緘黙状態になると、どうなるの?
D:すごく無口になって、内に籠ってしまうの。話しかけられて答えなければならなくなると、パニックに襲われるようになって。答えないから失礼だと思われるし…実際、そう言われるのを何回も聞いたわ。他にも無知だとか、色々ね…「こんんちは」って言われても、答えないから。でも、不安が本当に酷くなると、私にさえものを言うことができなくなるの。何年か前、何かですごく同様して電話をかけてきたんだけど、泣いてるだけで声を出すことができなかったことがあったわ。1時間位電話してたんだけど、全く言葉がでなくて。だから車に飛び乗って、ここまで慰めに来なければならなかった。
A: 1時間ずっと泣いてただけ?
D:そう、1時間泣き続けたの。私がどんな気持ちになったか想像できる?胸がつぶれそうだった。自分の子どもが親にもしゃべれないなんて、本当に辛い。
A:母親としてどう思う?サブリーナにずっと寄り添ってきて、母親として何かもっとしてあげられたと思う?
D:ええ。何であの時気づいてあげられなかったのか。何でもっとしてあげられなかったのかって、何度も自分を責めたわ。もし場面緘黙だということを知っていたら、支援を得られるようにもっと努力したと思う。適切な所に出向いて、助けを求めていたはずよ。でも、知らなかった。場面緘黙なんてきいたことがなかった。
夫と私はただの恥ずかしがり屋だと思ってたの。でも、成長してから場面緘黙だということが判って、母親失格という気持ちになったわ。夫も同じ。子どもが出すサインを受け止められなくて、親として失格だったって…。
A:今僕に話しかけられて、どんな気持ち?
S: 怖い。
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長年話さない状態が続いたために、緘黙が固定化してしまったケースです…。それだけでなく、他の社会不安の症状も悪化して、パニック障害なども併発しているよう。彼女や家族の心中を思うと、いたたまれない気持ちになります。早期発見と早期介入の重要さを再確認するとともに、緘黙を抱える大人への理解が広まり、治療法が確立されるよう願います。次回は動画の続きを訳していこうと思ってます。