クリスマスの憂鬱

12月の日々はあっという間に過ぎて、今日は既にクリスマスイヴです。今年のクリスマスは義妹家族とは合流せず、義両親の家で静かに過ごすことになりました。主人は今日まで仕事だったため、明日、クリスマスの早朝に車で高速を飛ばして行く予定です。殆どの人は今晩までに移動を済ませていることと推測してるんですが、なるべく早く出発しないとダメかな…。

IMG_7431イギリスのクリスマスで何が大変かというと、クリスマスを一緒に過ごす家族や親族や友だちに対して、ひとりひとりにしっかり贈りものを準備しなくてはならないことです…。日本だと、クリスマスって子どもと若いカップルが祝う日みたいになってますが、イギリスでは大人・子どもに関係なく、プレゼント交換は必須。

うちの場合、本命プレゼント+おまけプレゼント(チョコやお菓子、ちょっとした小物など)の各自2個以上ずつ。毎年、毎年、何を買えばいいのかすご~く悩み、街や大型ショッピングセンターを何時間も行ったり・来たりすることになるのです。プレゼントを買うのはいつも私の役目――主人に任せると最後までやらないので、めっちゃ焦って大混雑するショップを巡るハメに…。ネットで注文すればいいんですが、グズグズしているうちにデリバリー期限が過ぎちゃうんですよね~。で、それらを梱包するのに、また時間がかかるのです。

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今年もまたショッピングセンター巡り…

例年は、一番大きく部屋数が多い義妹夫婦宅に集結するんですが、それぞれの家族が持参したプレゼントをクリスマスツリーの根本に積むと、本当に壮観(義妹夫婦は友人たちとも贈りものを交換し合うのですごい数です)。ラッピングにも趣向を凝らしたプレゼントの山を見て、毎年すごいなあとため息をつくのでした。

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ミンスパイとカフェオレでちょっと休憩

でも、でも、もらって嬉しいものって、なかなかナイんですよね――ラッピングペーパーのゴミだけで、黒いゴミ袋2つ分…。各自一個だけ好きなものをもらえたら、嬉しくて楽でいいのになあ…。

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今年のラッピングはこれ

もうひとつ憂鬱なのは、どうも私が料理長になりそうなこと…クリスマスくらい誰かに作ってもらったものが食べたい!と思うんですが、義両親は熱心なキリスト教信者なので、イヴの夜もクリスマスの朝もしっかり教会に行く予定なんです。日本のお正月と同様、イギリスのクリスマスは家族団らんのイベント。公共交通機関はストップし、レストランもショップも全部閉まってるから、自分たちで料理するしかないんですよね…。

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前庭のバラ。暖冬なので、12月末までポツポツ咲いてました

話は変わりますが、先週末久しぶりにハムステッドヒースの森林公園を歩いてきました。このところずーっと曇り空と雨ばかりで、この日も靄がかかったようなぼんやりした天気。でも、湿った空気と落ち葉や木樹が放つ芳香に、とてもゆったりした気分になれました。

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名前不明の渡り鳥?向こうに見える建物がケンウッドハウスです

帰り際にケンウッドハウスのクリスマスショップに寄って、最後まで決まらなかった義父へのプレゼントをゲット。贈りものがやっと全部揃って、ほっと一息つけました。

 

 

 

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それでは、みなさんも素敵なクリスマスをお過ごしくださいね。

 

冬休みにできること

お久しぶりです。あっという間に時間が経ってしまい、私が日本語を教えている特別支援校も、息子の学校も先週末からクリスマス休みに突入しました。ちなみに、日本の2学期に当たるSpring Term は1月4日(月)から始まります。イギリスではクリスマスが一年最大のイベントなので、お正月はオマケみたいなもの。来年はたまたま月曜日が4日なのですが、通常は元旦が祭日となるだけで、2日から仕事始めという年もあるのです。

冬休みは、親族や友達が集まる時期だし、ショッピングや映画など出かける機会も多いですよね。そういった機会を最大限に利用して、緘黙児が社会的な体験や人とのコミュニケーションを多く持てるようにできるといいなと思います。というのも、学校外で話せる大人や子どもがいることが、緘黙児にとってとても重要だからです。

従兄弟や親類の人と親しく付き合ったり、話すことができれば、家族以外の人との信頼関係が築けるだけでなく、子どもの視野が広がり、自己評価もあがります。緘黙児は社会不安を抱えていることが多く、自分から話しかけたり、友達を作ることが苦手なことが多いので、従兄弟や親戚の子との繋がりは大切にしたいですね。

緘黙児の中には、親戚や従兄弟たちとも話せないという子もいるでしょう。でも、なんとなく親しみは感じてるんじゃないでしょうか?無理にとはいいませんが、将来も長い付き合いができるよう、なるべく一緒に過ごす時間を作りたいものです。年下の子だったら一緒にいても安心、という緘黙児も多いと思います。まずは、兄弟姉妹も一緒に少人数で遊ばせたり、ファーストフード店などに連れて行ってみてはどうでしょう?

うちの息子は年下の子に「いいところを見せたい」気持ちが強くて、マメにお世話したり、従妹弟たちの分までアイスクリームを注文したりしていました。年が上になるにつれて、家族と一緒に行動しなくなってくるので、できるうちに楽しく無理のない範囲でトライしてみてください。

この時期はお正月映画がたくさん上映されてます。友達や兄弟・姉妹、家族と一緒に観に行く計画を立てるのも楽しみですよね?学校では話せなくても、同世代の子たちと同じ話題を持つことはとても大切。子どもの好きなこと、趣味や活動が緘黙克服のきっかけになるかもしれません。

出かけるときは、なるべく学校の友達に遭遇しないよう、ちょっと遠くまで足を伸ばすのも一考です。自分に注目が集まらないような、騒がしい公の場所だったら、子どもは声を出しやすいはず。家族と一緒に外出して、いっぱいおしゃべりする機会を増やしましょう。緘黙児は顔見知りの近所の人との挨拶や、「ありがとう」「ごめんなさい」を言うことが苦手です。遠くのデパートや大型スーパーなどで、お年玉で好きなものを買い、「ありがとう」を言う練習をしてみてもいいかもしれません。

ものを言えない学校生活からしばし開放されて、のびのびした時間を過ごせますように。

 

14歳まで緘黙と診断されなかったケース

11月15日に投稿した記事『場面緘黙が増加の傾向?』の続きです。10月26日付のDaily Telegraph紙で紹介された記事の後半に、14歳まで場面緘黙と診断されなかったダニエルさんについての記述がありました。幼少の頃から長年緘黙に苦しみ続けた彼女の体験も、お伝えしておきたいと思います。

リンク: http://www.telegraph.co.uk/wellbeing/health-advice/selective-mutism-health-parent-child-advice

ダニエルさんは現在21歳.。カーディフ大学で数学を専攻する大学生です。緘黙と診断されたのは今から7年前の2008年。イギリスでも、ようやく場面緘黙が一般に広まり始めた頃のことです。その1年前の13歳の時、受診した12人目の心理士から、まずうつ病の診断を受けたとか。その後14歳で場面緘黙と診断がおりましたが、それまでクラスメイトや先生からのイジメや重度のパニックアタックに耐え続けていたそうです…。

13歳までに12人もの心理士を訪ねたということは、保護者が早くから異変を察し、治療を求めて奔走したんでしょうね…。イギリスの国民保険制度NHSを使うと、薬代以外は全て無料ですが、専門家とのアポが取れるまで何ヶ月かかることも。その上、クリニックや心理士を指定することはできません。おそらく、家族は私費を投入して(めっちゃ高額です)、色々模索したんだろうなと想像します。

ダニエルさんは現在は知らない人とも話すことができますが、今なお社会不安とパニックアタックに悩まされているそう。ある程度コントロールされた環境だったら平常でいられるものの、誰かが予期せず近づいてきたら、すごく不安になるとのこと。

ダニエルさんは、学校に行くことで緘黙症状がどんどん悪化してしまったと考えています。また、教師が彼女のことをただの恥ずかしがり屋と誤解し、内気さを克服させるためにクラスの前でしゃべらせたことも、悪化の大きな原因だったと…。

先生がよかれと思ってやったことが、二次障害としてパニックアタックを引き起こしてしまった――緘黙の知識がなかったとはいえ、大変胸が痛みます。抑制的な気質が強い子どもの中には、一般的な教育方針でいくと逆効果になる子も…。ちょっとした出来事で学校に行けなくなってしまうこともあるので、要注意です。大変だとは思いますが、関係者の方は子どもの性格や状況をよく見極めたうえで、対策を考えてもらいたいですね。そして、大人しくて問題を起こさないからといって、後回しにしないで欲しいです。

場面緘黙の子どものニーズに即した対応をすると、「特別あつかい」と見なされてしまうかもしれません。特に、クラス全員が同じように進むことを求められる日本では、ひとりだけできないと目立ってしまう傾向が強いかと思います。それでも、担任の先生が普段から「みんな違ってていい」という毅然とした態度を取ると、クラスの雰囲気が随分違ってくると思います。

ダニエルさんは、緘黙の状態を「実際にのどが閉まったようになって、言葉を発することができないの。頭の中では言いたいことがハッキリしてるのに、不安でいっぱいになってしまう」と説明しています。そんな思いを何年も引きずりながら学校に通うのは、相当つらかったことでしょう。

自分の子ども時代にもっと場面緘黙が広く知られていれば、こんな体験はせずに済んだのではないか。自分が受けた試練を他の誰にも経験してほしくない――ダニエルさんはその強い思いで、新聞記者のインタビューを受けたようです。

特別支援教育が根付いているイギリスでも、緘黙児への支援はまだまだ…。もっともっと一般に広く知ってもらって、早期発見・介入が徹底するといいなと願っています。

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場面緘黙が増加の傾向?

 

緘黙の子がすぐ話し始める?

この週末、イギリスでは急に寒さがまして、夜間は-1度まで気温が下がるようになりました。外に出ると頬にあたる風が冷たい!本格的な冬が到来したという感じです。

ちょっと前のことになってしまいましたが、先月ロンドンを訪れていた長野大学の高木潤野先生とお会いする機会がありました。私は日本の情報にうといのですが、高木先生は大学で活発に緘黙児の支援活動を行われていて、近年発足した日本緘黙研究会の事務局長を務めておられるようです。

高木先生の緘黙支援サイト:信州かんもく相談室

http://shinshu-kanmoku.seesaa.net/

高木先生の取り組みについてお聞きした際、日本でもマギー・ジョンソンさんの支援セッションと同じような成果が出ているんだなと思いました。それは、環境さえ整えば、年が上の緘黙の子でも第三者に話し始めるのに、それほど時間はかからないということです。

高木先生の支援方法はとてもユニークで、支援チームには大学の学生たちが支援スタッフとして参加。それぞれの学生さんが、決まった子どもを担当し、継続的にお世話をするというシステムのようです。

「正確にデータを分析した結果ではない」ということですが、1~数回の支援セッションで担当の学生スタッフに話し始める子が半数くらいいるそう。昨年、緘黙の女子中学生3名と、担当の学生スタッフ3名と共にキャンプに行ったところ、夜子供たちだけにしたら初対面同士で話しはじめたとか。

キャンプに行く前から担当の学生スタッフとは話せていたことで、安心感が大きかったのかもしれませんね。また、自分と同じように学校で話せない同世代の子、ということで親近感がわいたのではないでしょうか?ちなみに、キャンプに参加した女子中学生3人は、初回から学生スタッフに話せた子と1年くらいかかった子がいたとか。

これに対して、マギーさんのティーンへの支援方法は、第三者の大人がメンター(指導者・助言者)として1対1で支援し、伴走者として緘黙克服の後押しをしていくというもの。たいていの場合、メンターの役割を担うのは、学校のTA(教員助手、または特別支援員)です。こちらでは、支援を受けた子全員が2、3週間で口をきく(詳しくは、『どうして緘黙のティーンが短期間で話し始めるのか?』を参照)という結果がでています。

年が上の子どもの場合、多分学校ではずっと話すことができず、何年も緘黙状態が続いている子が多いはず。ずーっと沈黙を守っていた子どもが、たった数回のセッションで話せるようになるのは何故なんでしょう?

これには、子どもの不安度が大きく関わっていると思います。大学生も学校のTAも、教師や医師ではなく、割と普通の人というところがミソなんじゃないかな…?緘黙児に「不安を感じる人・怖い人」のヒエラルキー表を作成させると、大体「一番怖い人」は担任の先生であることが多いんです。特に、権威を持つ大人に対して不安を感じる傾向が強いよう。高木先生も「女子学生には話せても、僕には話さないことも多い」と言われてましたが、大人の男性が怖いと感じる緘黙の女の子も多いみたいですね。

反対に、教師ではない学校スタッフに対する不安は、それほど強くないことが多いよう。日本だったら、保健室の先生とか用務員さんの方が普通の先生より不安度が低いと思います。高木先生の支援セッションでは、比較的年齢が近い大学生のお姉さんが相手なので、それほど不安を覚えないんじゃないかな…。それと、緘黙の子は人見知りが激しいことが多く、相性が合わない人とはずーっと話せないかもしれません。

また、支援セッションをする場所や環境もかなり影響してくると思います。自分の学校ではない安全と思える場所であれば、不安度は低いはず。また、自分の学校であっても、自分の教室ではない個室や外の安心できる場所だったり、放課後先生や生徒がいない環境であれば、不安度は変わってくるでしょう。知っている人に出遭わない場所・環境も不安度が低くなるので、キャンプというのはとてもいいアイデアですね。

支援セッションの頻度も重要で、頻繁にセッションを重ねると、支援者に対する親しみも強くなるよう。マギーさんは週に2回くらいの支援セッションができれば理想的としています。反対に、セッションの間が大きく空くと、振り出しに戻ってしまうことも…。せっかく担任に返事をするようになったのに、夏休み明けにまた話せなくなってしまったというケースもあるようです。

クラスには担任だけでTAがいない日本の学校では、緘黙の子にまで手が回らないというのが現状かもしれません。学校外の支援活動で話せるようになった子どもが、自分の学校で話せるように支援の輪を広げていくのは、なかなか難しい問題かと思います。でも、まずは不安度の低い学校外で自信を積み重ねていくことが、第一歩ではないでしょうか?

なお、支援セッションで成果があがらない子どもについては、多面的に原因を調べる必要がありそうです。言葉や発達の問題、深刻なレベルの社会不安などが背後に隠れている可能性も考えられるので。

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どうして緘黙のティーンが短期間で話し始めるのか?

場面緘黙が増加の傾向?

先月の場面緘黙啓発月間では、場面緘黙が多くの新聞・ラジオに取り上げられました。その中で、特に気になったのが10月26日のDaily Telegraph紙で紹介されたこの記事です。リンク: http://www.telegraph.co.uk/wellbeing/health-advice/selective-mutism-health-parent-child-advice

Isla母親のシャーロッテ・マダムスさんと場面緘黙の娘アイラちゃん 写真: ©Andrew Crowley

『 場面緘黙の子どもを持つということ(What it means to have a child with selective mutism)記者:インディア・スタージス』と題された記事に登場するのは、6歳の場面緘黙の少女、アイラちゃんと母親のシャーロッテさん。場面緘黙になったのは3歳のころです。

アイラちゃんの緘黙の原因は、生まれもった抑制的な気質に加え、気管支系が弱く幼少の頃から病院通いをしたことが関与しているのでは、とシャーロッテさんは考えています。というのは、アイラちゃんが最初に話さなくなったのが医者だったとか…。

喘息と乳製品などのアレルギーを持つアイラちゃんは、学校で吸入器やアレルギー薬が必要になっても先生に言えません。以前、喘息の発作を起こした時は、お迎えの時間まで2時間も咳続けたとか。それ以来、「吸入器をください」「喉が乾いた」「トイレに行きたい」などのキューカードを使って意思表示をしています。

シャーロッテさんはインターネット検索で「場面緘黙」を探しあて、言語療法士と小児心理士に相談。学校で唯一口をきけるのは11歳の姉だけでしたが、今ではTA(教育補助員)とディナーレディ(給食のお世話係)に囁やけるようになったそう。

↓ この記事で特に興味深かったのは、下記の記述です。

”What’s more, Alison Wintgens says instances of selective mutism in this country are on the rise.

There is no doubt there are more stresses and pressures around,” she says. “Schooling has become more verbal because of changes to the curriculum. You can’t be a silent achiever any more; you have to work in groups, give speeches and present experiments. While a good thing (selective mutism aside) it puts pressure on those who struggle with social interaction.”

「『場面緘黙リソースマニュアル』の共著者、アリソン・ウィンジェンズさんは、イギリスにおける場面緘黙の発症率は増加の傾向にあると語っています。

その原因として、子どもへのストレスやプレッシャーが増えたこと、カリキュラムの変更により、学校教育で口語に重点がおかれるようになったことをあげています。今や、大人しいけれど勉強ができるだけでは不十分—-グループワークでの貢献、スピーチや実験の結果発表なども要求されます。(緘黙の問題を別にすれば)これは良いことではありますが、社会的な交流が苦手な子どもにはプレッシャーになります」

この傾向は、多分場面緘黙だけではなく、自閉症スペクトラムや学習障害、ADHD、協調運動障害、不安障害などを含めた全般的な発達に関わる障害&発達凸凹でも同じではないか—-と私は思っています。その理由は、今までTAをした4つの小学校の各クラスにおいて、いずれも30人程度のクラスに、5人くらいグレイゾーンの子どもがいたから。

「あれっ、この子は別に問題がないようにみえるのに、どうして授業についていけないのかな?」という子どもが必ず4~6人いるんです。多くないですか?例えば、活発で話し言葉には全く問題がないのに、何度教えても自分の名前を判別できない5歳児とか、簡単な足し算ができない5年生とか…。地方でずっとTAをしている友人に訊いてみたところ、「そうなのよ。すごく増えてると思う」という答えが返ってきました。

これはイギリスだけではなく、多分世界的な傾向なんじゃないでしょうか?杉山登志郎著の『発達障害のいま(2011年講談社現代新書)』では、第一章「発達障害はなぜ増えているのか」の中で、その理由が詳しく記述されています(この本に関連する記事は下記のリンクをクリックしてください)。遺伝子やらDNAやら、環境要因やらが複雑に絡まっているよう。多分、住居や食べ物に使われている化学物質とか、ライフスタイルや家族・コミュニティ形態の変化なども影響してるんでしょうね…。

もうひとつ目新しいなと思ったのは、犬を使ったアニマルセラピー。緘黙の子と犬を引きあわせて、「お手」や「お座り」などの言葉がけをさせるというもの。人間相手ではなく、可愛い犬と一緒だったら、不安度がぐっと減りそうですね。

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イギリスの学校ではASD児が場面緘黙になりにくい?(その3)

日本では発達障害と見なされやすい?(その5)

秋から冬へ

11月に入ってからもう9日間が過ぎてしまいました。今年はエルニーニョ現象の影響なのか、例年よりかなり暖かな気候が続いています。ここのところ雨が多く、毎日どんよりした曇り空ばかり。でも、10月中はイギリスには珍しいほど、気持よく晴れた日が何日も続きました。

そんないい天気に恵まれた10月の半ば、ブルガリアから友人家族がやってきました。10日間ほどうちに滞在して、休みをとった主人と一緒にロンドン巡り。昔の思い出の場所だそうで、リスの餌を持ってセントジェームスパークに何度も行ったとか。ロンドンに公園多しといえど、セントジェームスパークほど人馴れしているリスがいる公園はないかも…。なでられるほど至近距離まで近づいてきたり、人の手から食べ物をもらうリスもいます。

ある日の午後、彼らの三歳になる娘を男性陣に任せて、女二人で散歩に出かけることに。彼女に初めて会ったのは、5年ほど前にブルガリアに行った時。山登りが好きな彼ら(当時はまだ子どもがいなかった)は私たち家族をリラ山脈に案内してくれたのですが、これが本当にキツかった(笑)。朝10時に山小屋を出て、夜10時に戻るまで誰も一度もトイレに行かず、延々と歩き続けた想い出は一生ものです。今回は、澄みきった高い秋空のしたいつもの散歩コースをぶらぶら歩きながら、お互いの5年間について語り合うことができました。

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今は使われていない鉄道高架橋と沼に潜むワニ(誰のイタズラ?)

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週末には一緒にグリニッジ天文台まで行ってきました

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 ヴィクトリア&アルバート博物館のコスチューム館。コムデやヨージヤマモトも

IMG_20151014_151720IMG_20151014_162318IMG_20151014_160838     自然史博物館はとにかく広くて、1日かけても観きれない!ムーミンみたいなマナティー(海牛)に遭遇

彼らが帰った後、急に気候が変わって横殴りの激しい雨が振りました。そしたら、あれっ、寝室の天井から雫が…雨漏りだ~!エドワード王朝時代に建てられた我が家は、住宅が棟続きになった「ロンドン長屋」と呼ばれるテラスドハウスのひとつです。築100年以上経った家の張り出し窓の平屋根は、5年毎くらいに大修理してるんですが、先回10年間保証と言われたにもかかわらず、またまた同じ場所から雨漏り…。

そして、ロンドンでは屋根専門業者というか、評判の業者や腕の良い職人は予約がいっぱいで、なかなか捕まらないんです。しかも、カウボーイと呼ばれる素人まがいのペテン師も多くて…。見えない場所だけに「ここも修理が必要」とふっかけられても、判断が難しい。何度か引っかかって、「ああやられた。今度こそ」の繰り返しなのです。

先日、やっと二人の業者が見積もりに来てくれて、そのひとりに臨時で補正修理をしてもらいましたが、根本的な問題は据え置き状態…予約がいっぱいなうえに天気が悪すぎて仕事が溜まっていく一方のようです。

それ以来、家も、家庭も、仕事も、あっちこっちで色々な問題が起きて、今あっぷあっぷしているのでした…。

それでも、先週の木曜日には息子と一緒にベルギー人の音楽家、ヴィム・マーテンズ(Wim Mertens)のコンサートに行き、すこし息抜きできました。ピアノと管弦楽カルテットかなと思っていたら、ピアノソロ。時々歌も入るのですが、高音の歌声はちょっと苦手かも…。

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フランドル地方出身のこのアーティストの作品を吹き込んだカセットテープ(前世紀ですね)をくれたのは、もうずっと前に亡くなった女友達…。ピアノ中心のミニマルだけど情緒的な旋律を聴いていると、心に様々な情景が浮かんできます。

潮風に吹かれながら彼女と一緒に歩いた伊良湖岬の海岸。もう決して帰ってこない時間や季節…懐かしい人たち。

偶然見つけてチケットを衝動買いし、初めてコンサートに行ったんですが、やっぱり生演奏っていいですね。吹奏楽をやっている息子(友だちが行けなくなって、ピンチヒッターで付き合ってくれた)が「ステインウェイのグランドピアノだ」と教えてくれたものの、私には??? でも、ピアノの音色に包まれるような様な心地よさというか、音に触れられそうな感覚でした。キラキラした音から深みのある音色まで、感性のままに自由自在に操れるってすごい。

   1時間半の予定でしたが、複数曲のアンコールが3回も。しかも、一番最後の曲は観客のリクエストに答えて、多分最も有名なこの曲を弾いてくれました

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コンサートの後にCDサイン会に参加。今年出した最新アルバムを無視して、好きな曲が入ったCDを購入。よく見てみたら、何と83年の作品だったのでした!

イギリスの場面緘黙啓発月が終了しました

イギリスでは、先月が場面緘黙を一般に広めるための啓発月間でした。どうやら、同時にADHDやダウン症、乳ガンなど他に9つの症状・疾患の啓発月間でもあったようです。ということは、大声で主張しないと注目度が低い状況だったのかな…。

そんななか、場面緘黙はラジオや新聞を中心に多くのメディアやSNSで取り上げられ、また少し知名度があがったように思います。支援グループSMiRA経由で申し込まれた各種メディアの取材に多くの会員が応え、自分の住むエリアのラジオ局や地方紙に登場していたのが印象的でした。それぞれが、学校での緘黙児の問題や家族の悩みなど、支援の必要性を具体的に訴えていました。実名での、しかも家族や緘黙児の写真入りの記事というのは、とても勇気がいることだと思いますが、だからこそ説得力があるのかもしれません。

SMiRA (Selective Mutism Information Research Association)では、10月15日(木)に本拠地レスターで一般参加型のオープンイベントを開催。市議会委員でレスター市長アシスタントのマニューラ・スードさんを招き、歴史あるギルドホールで講演会と懇談会を行いました。

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  チューダー王朝時代に建てられた歴史あるギルドホールと中庭のからくり時計

私も参加させていただいたのですが、SMiRA役員、保護者、教育関係者など、参加者は30名ほど。週中だったためか、思ったより小規模なイベントでした。会長のアリスさんの挨拶から、和気あいあいとした雰囲気の中でプログラムが進行。

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      開会の挨拶をする会長のアリスさんと、学校での支援方針について話す学校心理士のルィーズ・サンダーさん。

<プログラムの内容>

  • SMiRA会長、アリス・スルーキンさんによる挨拶
  • レスター市長アシスタント、マニューラ・スードさんによる挨拶
  • SMiRA役員、シャーリー・ランドロック-ホワイトさん講演『場面緘黙とは何か』
  • レスター市学校心理士、ルィーズ・サンダーさん講演『レスター市の緘黙支援』
  • 保護者ジェーン・ディロンさん講演『保護者の視点』
  • 懇談会

なかでも、SMiRA役員シャーリーさんによる最新の場面緘黙の簡潔な説明が良かったです。SMiRA会員にアンケートを取ったところ、緘黙状態になっている時、実際に喉が締まるような、身体的な症状のある人が多いという統計が出たそう。身体面で何らかのサポートができないか、今後の課題として追求したいとのこと。

息子に訊いてみたところ、緘黙している時は安心なんだそう。喉が詰まったようになったり、体が固くなるのは、話さなければいけない状況に立たされた時だということ。息子が5歳の頃、「ずーっと黙ってるなんて、不安だし怖いよね。強いね」と言ったら、「色々空想してるの。そんなに怖くないよ」とアッサリ言われ、「えっ、そうなの?」と驚いた記憶があります。どうなんでしょう?

また、学校心理士のルィーズさんの講演では、予算が打ち切られた後も、場面緘黙の傾向を持つおとなしい子どもを含めたスクリーニングを実施しているという現場の声が。さすがSMiRAのお膝元のレスター市だけあるなと感心していたら、手を挙げて「うちの学校では何もしてくれない」と訴える保護者が…。場面緘黙の支援が進んでいるといわれるイギリスですが、まだまだ全国で規定に沿った支援とまではいきません。学校、先生、専門家、そして資金によって支援の内容はまちまちなのが現状。もっともっと広く場面緘黙を知ってもらい、すぐ充実した支援に繋げられればいいなと願っています。

色々と忙しかったため、記事の更新が大幅に遅れてしまいました。啓発月間で取り上げられた場面緘黙の番組や記事については、これからもちょこちょこ付け加えていきたいと思っています。

場面緘黙から登校拒否に

前回のBBCラジオ・スリーカウンティ局の番組に関する記事の続きです。

クレアさんの娘さんの緘黙は、残念ながらセカンダリースクール(12~16歳)にあがってから悪化してしまいました。入学したばかりの1学期の前半は先生や友達とも話し、質問にも答えていたそう。それが、後半に入ってから状況がガラリと変わってしまったのです。

イギリスのセカンダリースクールは1学年6クラス以上あるマンモス校が多く、日本の大学のようなシステムです。教科ごとに先生が変わるのみでなく、ベースになる教室がないため、常に鞄を持って教室を移動しなければなりません。全ての先生が全校生徒と保護者の顔と名前を知っている、小規模でアットホームな雰囲気の小学校とは対照的。宿題も週に1、2回程度から、いきなり毎日に複数の教科の宿題が出るように。

頑張ればポイントが加算され、家に労いの葉書が届いたりする反面、宿題や教科書を忘れたり、遅刻したりすると、罰として居残り――というアメとムチ政策。小学校ではユルユルだった授業体制から、ぐんと厳しくなるため、勉強の仕方に戸惑う子も大勢いると思います。

また、自分の教室や机がないということは、休み時間毎に居場所を確保しなければならないということ…。まだ友達がいなかったり、自信のない子どもには、かなり辛いのではないかな…。イギリスの小学校では不登校は殆どないのですが、セカンダリーでドロップアウトする子は多いようです。

クレアさんの娘さんは、学校生活のプレッシャーが大きすぎて、次第に不安が募っていったそう。教科ごとに変わる教師、成績やクラスの人間関係――そして毎日の宿題が大きなストレスになったといいます。

緘黙児は完全主義の傾向が強いといいますが、クレアさんの娘さんもそうでした。全部正解と思えなければ不安で、宿題ができない状況に…。そのうちに、毎日学校へ行かせるのが難しくなり、ついには登校拒否に陥って7ヶ月間学校を休むことに…。

学校側は、娘さんの頑固な性格に問題があるとみなし、クレアさん夫婦は周りから「育て方が悪い」と責められたこともあったとか。家庭内で大きな問題を抱えて、ただでさえ辛いのに、周囲が追い打ちをかけるなんて…。これって、あまりに理不尽すぎる…。

しかも、家に引きこもってしまった娘さんが、家族に向かって感情を爆発させるようになったそう。責任の重い夜勤の仕事をしていたクレアさんは、仕事を辞めざるを得なくなってしまいました。どうにかして娘さんを外に連れ出そうと、犬の散歩の仕事を見つけるなど、様々な努力をしたそうですが、家庭が荒れて本当に大変だった様子。

現在はというと、状況はかなり改善してきているとのこと。医師に相談して4ヶ月前に抗鬱剤フルオキセチン(Fluoxetine)を服用し始めたところ、速攻で効果があったそうです。以前より楽観的になり、少しずつ自信が持てるようになってきたとか。学校も、クレアさんの緘黙に理解を示してくれる、規則がゆる目のアカデミー系に転校。再び勉強し始め、料理クラスなどにも参加できているそう。学校外では話せる友達がいるものの、残念ながら学校内では未だ話せていません。

クレアさんの願いは、娘さんが一日一日をしっかり重ねて、少しずつ自信をつけ、不安を対処できるようになることだといいます。そして、充実した人生を過ごせるようになればと…。その気持、ものすごく解ります。他人と比べたりせず、ゆっくりマイペースで歩くことで、道が拓けてくるといいなと願わずにはいられません。

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イギリスでは10月が場面緘黙啓発月間です

おとなしい子 vs 緘黙児

緘黙のスペクトラム?

緘黙のスペクトラム?

場面緘黙啓発月間の広報活動の一貫として、10月7日にはBBCラジオ・スリーカウンティ局が、場面緘黙を特集しました。

メンタルヘルスをテーマにした’Shrink Wrapped’という番組で、たっぷり1時間のあいだ場面緘黙の話題に集中。SMiRAの会員(保護者)2名をスタジオに招き、DJのルィーザさんがそれぞれのケースについて話を聞いています。精神科医のチェトナ・カングさんの解説つきで、とても分かりやすい内容になっていました。後半には、 SMiRAコーディナーターのリンジーさんとミスUKのカースティ・ヘイズルウッドさんの電話インタビューも。

http://www.bbc.co.uk/programmes/p032l5nk#play

(↑ リンクです。クレアさんのインタビューは8分くらから。日本でも聴けるかどうか不明ですが、リンクは25日間有効です)

まずは13歳の娘を持つクレアさんの話から。娘さんは入園前のプレイグループでは誰とも口をきかず、ママにべったりだったそう。幼稚園(3歳から)では2人くらいの友達に囁やけたということ。ただ、大人に対しては全くダメで、親族の中にも話せない人が大勢いたようです。小学校(4歳~11歳)では初日に先生に囁くことができ、質問に答えることもあったそうですが、自分から何かいうことはありませんでした。

「少しは話せる状態でも、場面緘黙なのか?」この問に対して、チェトナ医師は「他の精神疾患と同様に、症状が白黒はっきりしている訳ではなく、グレ-のスペクトラム状に広がっていると考えられる」と答えています。囁けるといっても、どこでも誰にでもという訳ではなく、話せるようになる保証はないため、やはり支援が必要です。

セカンダリースクール(12~16歳)に進学する前、学校の提案で心理士に会ったところ、「ものすごく心配症の子ども」と診断され、それでおしまい。フォローアップは全くなかったそう。これって、うちの息子が4歳で受診した時と同じです――イギリスでも6、7年ほど前までは場面緘黙を知らない専門家がいて、サポートを受けられないことも多かったのです。

幸運なことに、うちの場合は診察アポを待っている間に「場面緘黙」という疾患(?)があることを発見。事前にSMiRAに連絡し、アドバイスを得ることができました。診察のあと、2人の心理士に「場面緘黙だと思うんですが…」と自己申告し、主人と一緒に「言語療法士に紹介してください。お願いします!」と必死で頼み込んだのでした(国民保険を使用する場合は、紹介状がないと受診できません)。

話をクレアさんの娘さんに戻すと、かなり活発な子で、水泳やガールスカウトなど複数のアクティビティに参加していたそう。でも、学校外のこういった活動では全く話せませんでした。5年ほど前、緘黙のドキュメンタリー番組を観たスカウトのリーダーから電話があり、クレアさんはその時初めて「場面緘黙」を知ったのです。

興味深いなと思ったのは、娘さんが家族にも自分の気持ちを言葉にしない(できない)こと。それから、学校外の活動でも、ボディランゲージが変わり、スピードが落ちることです。誰でも緊張すると普段通りにできないものですが、緘黙児は緘動とはいかないまでも、動作が鈍くなり、スピードが落ちる傾向が強いように思います。

想像してみてください。魚みたいに泳げる娘が、スイミングスクールでは水に入るのを怖がる。やっと入ったと思ったら、今度は隅っこでいつものようには泳がない――親としてはフラストレーションがたまりますよね…。

クレアさんは緘黙を知らなかったため、良かれと思って娘さんをプッシュしてしまったと反省していました。親としては、もう少し頑張らせたいのは当然ですよね。でも、このインタビューの当日に、本人から「(ママ達が)私にしゃべらせようとして、酷かった」と言われたとか――そう言われちゃうと本当にショックです。

ところで、娘さんは校庭の片隅で遊んでいて緊張が溶けることもあり、大声で叫んだり、はしゃいで話したりしていたとか。だから、周囲も彼女がしゃべれることは知っていたのです。そのために、いつも上級生に「なんでしゃべらないの?」と責められるハメになったよう…。娘さんには幅広い友達がいたけれど、特別な仲良しを作るのは難しかったと回想しています。

不安のために話せないだけではなく、動作も遅くなって、しかも家で普通にできることができなくなってしまう…。たとえ、少し話せたり、囁やけたりしても、やはり持って生まれた抑制的な性格は変わらないのです。「この子は症状が軽いから」と思って、周囲がプッシュしすぎたり、支援がなかったりすると、状況次第では症状が悪化してしまうことも…。超敏感な子どもへの接し方は、本当に難しいと思います。

話が長くなってしまったので、次回に続きます。今ブルガリアの友達家族が遊びに来ているため、なかなか時間が取れなくて支離滅裂になってしまい、すいません。

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イギリスでは10月が場面緘黙啓発月間です

おとなしい子 vs 緘黙児

大人しい子  vs  緘黙児

SMIRA1

イギリスでは先週から場面緘黙啓発月間が始まり、メディアや精神医学関係機関、SNSなどを中心に盛り上がりを見せています。初日には、SMiRAの本拠地であるレスターのBBCラジオ局が、場面緘黙を取り上げました。

http://www.bbc.co.uk/programmes/p0322npy

(6分50秒くらいから。日本でも聴けるかどうか不明ですが、リンクは今月末まで)

10分ほどのスロットに、SMiRAコーディネーターのリンジー・ウィティントンさんと15歳になる緘黙の少女の母親、エマ・ガスキンズさんが出演。リンジーさんが場面緘黙について解説し、エマさんは娘について語っています。ちょっと時間がないので翻訳はしませんが、興味深いなと思ったところだけ。

「場面緘黙って何?」とDJのエイディ・デーモン氏に訊かれ、リンジーさんは「不安によって起こる症状」と答えました。使ったのは、”disability (障害)”でなく、”condition (症状)”という単語。やはり、イギリスでは「恐怖症」と同様で、「症状」という捉え方になってきているようですね。

背景には様々な原因があって特定できないものの、不安によって話せなくなる状態が場面緘黙。入園・入学時に発症することが多く、話さない状態が2・3週間も続いたら要注意です。なるべく早い段階で言語療法士(SLT)にアセスメントをしてもらい、不安を取り除いてからスモールステップで支援を始めるよう勧めていました。

日本だと心理士や児童精神科医に相談すると思うのですが、イギリスでは場面緘黙といえば言語療法士です。これは、言葉に関わる問題だからという理由に加え、子どもの言語に問題がないかチェックする必要もあるから? 緘黙治療の第一人者と言われるマギー・ジョンソンさんがSLTなので、SLT界では緘黙に関する知識が豊富というのもあるかもしれません。

スモールステップでの治療については、それほど難しいものではないため、やり方さえ理解できていれば、専門家でなくても教師やTAで充分と説明。私は、治療の要は子どもとの相性と愛情と、とにかく根気じゃないかな、と思っています。

(ところで、緊張すると実際に喉が締まったようになって、声が出しにくくなることって普通の人でもありますよね?ネットで探してみたら下記のページを見つけました。「首筋の肩甲舌骨筋が膨らむことによって、声が圧迫される」とあります――これが緘黙の正体??)

→ http://ure.pia.co.jp/articles/-/17026?p

DJのエイディは、「小学校のクラスに、レセプション(準備学年)から6年生まで、7年間ずっーとしゃべらない女の子がいた」と回想。その子が話さないことに周囲がヤキモキして、教師までもが「恥ずかしくないよ。話せば?」と本人に言ってたそう…。自分がしゃべらないことをみんなに注目されて、すご~く嫌だったでしょうね…余計話せなくなっちゃいそう…。

エマさんの娘さんは、緘黙傾向の強い恥ずかしがり屋だった?

イギリスでは3歳から幼稚園、4・5歳から小学校が始まるので、緘黙の発症年齢は通常3~5歳くらいなのですが、エマさんの場合は、娘さんが15歳で学校を変わってから「全く話さない」と宣告されたということ。自分の娘に問題があると認めるのが、ものすごく辛かったと話しています。

エマさんもご主人もシャイで、娘さんも小さい頃から外では大人しくて恥ずかしがり屋――多分学校では少し話せていて、先生たちはそれほど深刻に捉えてなかったのでしょう。緘黙傾向がある恥ずかしがり屋でも、学校で少しはしゃべれて、友達がいて、表情がよく、勉強面で問題なければ、親も先生も「おとなしい子」で安心してしまうことが多いのかも。エマさんの娘さんのように、家でとてもおしゃべりな場合は、特に。

「うちの子は恥ずかしがり屋で、クラスで発言ができない」くらいに思っていたのが、いきなり全く話せなくなったら、それはものすごいショックですよね…。なんだか、身につまされるものがあります。

実は、リンジーさんの娘さんも元緘黙児だったのですが、リンジーさんは子どもが幼児の頃から「何か違う」と感じていました。赤ちゃん時代はよく笑う、おしゃべりでハッピーな子だったのに、1歳半頃からガラリと変わり、極度の引っ込み思案に。知らない人に話しかけられると固まるようになり、その度合いがどんどん悪化していったそう。

場面緘黙になるかならないか、いつなるのか――性格や環境に加えて、子どもをめぐる人間関係や出来事にも大きく左右されそうですね。とにかく、親は諦めず、根気よく、気長にサポートするのみ。でも、決してひとりじゃないので、一緒に頑張りましょう。

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