ロンドンのクリスマス

12月15日になんとか無事帰国できました。が、忙しさとネット環境不備のため、今日までブログの更新ができませんでした。クリスマス前にと思っていたのに、結局ギリギリです…。でも、文章と写真はすでに準備しておいたので、投稿しますね。

2週間ほど前、友人に会うためにウエストエンドの繁華街に行ってきました。デパートが建ち並ぶオックスフォードストリート界隈は、普段も買い物客で混雑するのですが、クリスマス時期はそれに輪をかけたすごい人混み。クリスマス直後には恒例の大バーゲンセールが行われ、デパート前に寝袋持参の強者たちが行列を作ります。

イギリスではクリスマスが一年で最も大きなイベントで、日本のお正月のような感じ。11月下旬には街にクリスマス飾りやイルミネーションが灯され、どんよりした灰色の街がぱっと華やぎます。でも、今年は….なんかとっても地味–もしかして予算がないのかな、と勘ぐってしまったほど。それでも、それぞれ趣向を凝らしたデパートのショーウィンドーは今年も楽しめました。

IMG_3616         1909年創業の老舗デパート、Selfridgesの正面玄関で待ち合わせ。                         最先端を行くファッションとグルメ賞賛のフードホールで評判です

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今年のXmasディスプレイはミニュチュアのサンタクロースが主役

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       庶民派デパート、John Lewisではクリスマスにちなんだ動物などのディスプレイ。                                タオルで作った七面鳥

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コンピューター関連の機器で作った白熊?

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John Lewis の店内ディスプレイ

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ミンスパイなどクリスマス食品のハンパー(詰め合わせバスケット)

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ウエディングドレスの専門店

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オックスフォードストリートの飾り付け(地下鉄駅入口から)

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                         明かりが灯るとこんな感じ。この通りを走れるのはブラックキャブと呼ばれるタ              クシーと2階建バスのみ IMG_3638

オックスフォードストリートの脇道

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我が家の植木鉢入りツリー。3年前に2000円くらいで買った小さな木が年々育ってます。IMG_3663  IMG_3665

皆さん素敵なクリスマスをお過ごしください

 

ヒースロー狂想曲--こんなのアリですか?

本当は、昨日の朝11時20分の便で日本に向けて発つはずでした。

が、まだロンドンの自宅にいます….。そうです--飛行機に乗れなかったのでした。「乗り遅れた」、といえばそうなんですが、全く私の責任ではありません。

一昨日、昨日と、ロンドンは久しぶりに濃い霧に包まれました。複数の便がキャンセルになり、ヒースローは混乱気味。

霧のせい?  いえ、ヒューマンエラーだと思います。

元々フィンランド航空で予約したチケットでしたが、コードシェアをしているBA(英国航空)に変更されたということで、BAのカウンターでチェックイン。これが出発の1時間50分ほど前。ヘルシンキまでの搭乗券を印刷したところで問題が発生したらしく、階下の事務所から確認が入るまで待つことに。

新しい人達が次々とチェックインしていく中、待てども待てども呼ばれず…途中で担当者が代わり、新担当の手が空いた際2回かけあったのですが、「昨日キャンセルが続出して事務所は大混乱してるから、もう少し待って! 待ってるのはあなただけじゃないのよ」とけんもほろろ…。かなりオーバーブッキングがあった様子で、周囲には10名弱の人が集まってスタッフと押し問答に。

結局、私達は「階下からマネージャーが来て説明するから」と無視され…待つこと1時間。「えっ、もう搭乗時間過ぎてる?!」という状態になってからマネージャー氏がやってきて、「この便は定員がいっぱいになったため、搭乗は締め切りました。皆さんの便を変更します」と…。

「ええええ~っ!」と皆怒って文句を言った後、マネージャー氏が皆のアイテナリーをチェック。私の搭乗券を見た途端、「早く、搭乗しなさい!」と。でも、スーツケースも預けてないし、ヘルシンキからの搭乗券もないし、何せもう出発20分前でしょ?!

彼が無線でチェックした時、既にもうラストコール状態でした。それなのに、搭乗しろと主張するんです!一緒に待ってた中国人の女の子達に「グッドラック!」と背中を押され、走りましたよ~。

クリスマス前の忙しい時期です。セキュリティチェックには長蛇の列…係員にお願いして前へ走り、ようやくチェックを終えて、搭乗口へひた走る私。何故か高校時代に現国で習った太宰治の『走れメロス』を思い出してました(笑)。

で、やっとのことで24番ゲートに辿りつき、階段を下って搭乗口に行くと--誰もいな~い!! もう出発した後だったのです。こんなのアリですか?!

仕方なくお隣のセクションの受付に事情を話すと、「トランジットにBAのカウンターがあるから、そこに行って」とそっけない返事。同じBAの職員だけど、「私の責任じゃないから」と、誰も謝ってくれないのでした…。イギリスでは何か問題が起こると万事がこんな感じ。カスタマーサービスがしっかりしてないので、仕方ないと諦めるしかないことが多いのです(クレームするにも、自分で全部しなきゃならない)。

探し当てたBAのカウンターにはやっぱり列ができていて、待つこと40分。皆さん問題がある方ばかりで、ちっとも進まないのでした。やっと私の順番が来て事情を説明し、色々調べてもらって14日の便に振り替えた時には、正午をとっくに過ぎてました。ちなみに、この担当者は大変一生懸命やってくれて、感じも良かったです(きっと、こういうクレーム処理にも慣れているのでしょう)。

そこから、パスポート審査でまた並び、スーツケースを取り返し、カフェでひと息入れ、荷物預かり所を探して大きいスーツケースを預け、地下鉄で家に戻った時には4時を回っていました。朝家を出たのは8時20分…何のための一日だったのか…もうクタクタ。

イギリスではクリスマス時期が日本の師走と同じで、よく”run round like a headless chiken (やみくもに走り回る)” という表現を使うんですが、まさにそのもの。いい大人が必死こいて空港を走る姿は、見られたものではなかったでしょう…。

ipadを操作しながら、おやつを食べてソファで寛いでいた息子に紅茶を淹れてもらい、やっぱり家はいいな、とつくづく思ったのでした。

 

しばらく更新できなくて、すみません

家庭の事情で12日に急遽帰国することになり、先週からバタバタしています。イギリスのクリスマス風景をお伝えしようと思い写真は撮ったのですが、「明日は更新しよう」と思いつつも、次から次へとやることが増えて全くできず…。

明日は学校勤めなのですが、実はまだパッキングもできてなくて…。夕方、息子の学校で初の進路懇談会もあり--超焦っています。

また帰国して落ち着いたら、ぼちぼち書き始めますね。

イギリスの学校ではASD児が場面緘黙になりにくい?(その1)

『日本では発達障害と見なされやすい?』のシリーズでは、日本では場面緘黙児がPDD(広汎性発達障害)と診断されることが多いように思えること、またその理由について考えてきました。今度は、イギリスの学校環境やシステムの中では、ASD児が二次障害として場面緘黙を発症する率が低いのではないか、という私の勝手な仮説について考えてみたいと思います。

その前に、『日本では発達障害と見なされやすい?(その5)』でも触れたのですが、杉山登志郎氏の著書『発達障害のいま』に着目したいと思います。日本における高機能自閉症の権威のひとりといわれる杉山氏は、あいち小児保健医療総合センターの心療科(児童精神科)の部長として、2010年まで9年間、臨床の最前線にいた方です。

2011年夏にこの本が出版された時は随分話題になったようですが、読まれた方はどの様な感想を持たれたでしょうか?私は2011年秋に帰国した折、Knetのおしゃべり会 in 名古屋に行く途中立ち寄った書店で、偶然にこの本と出遭いました。読んでみて、難解な中にも目からうろこの発想が沢山あったように思います。特に、発達障害が何故増えているのか、発達の凸凹とトラウマについては興味深く何度も読み返しました。

ご存知かもしれませんが、この本の中には「選択性かん黙」についての記述があります(P170)。      要約してみると、

1) 緘黙はASD(自閉症スペクトラム障害)ではないと考えられてきたため、国際的な診断基準にもそのための除外診断の記載があるが、最近になって重症の緘黙児には高頻度にASDの子どもがいることが明確になってきた。

2) 軽症の緘黙児は不安感が強いとか、家族の中で見えない対立があるなどの家庭環境の要因がみられる。しかし、コミュニケーション全体に遅れを認める難治性の緘黙児は、殆ど実はASDの併存症として生じている。

3) このグループは思春期に転帰が分かれ、外でコミュニケーションが取れる子と、取れないままの子に二分される。

4) ASDの併存症としての緘黙症に対しては積極的な治療、つまり入院治療を行うと成果があがる。入院して家族と離れて生活するだけで、早い子は2週間、粘る子でも1ヶ月、最悪の場合は3ヶ月あれば、家庭外でも会話によるコミュニケーションが可能となる。

(『発達障害のいま』 杉山登志郎 講談社現代新書 2011年)より抜粋&要約)

ここから、またまた続きます。

関連記事:

緘黙は発達障害なのか?

 

日本では発達障害と見なされやすい?(その6)

イギリスにおけるASD(自閉症スペクトラム障害)のアセスメント

この間、セカンダリースクール(12~16歳)に通うSMの女の子のお母さんと話す機会がありました。娘さんは幼稚園入園時から場面緘黙になり、小学校低学年で一端回復したものの、5年生の頃から徐々にまた緘黙傾向が強くなったそうです。娘さんの社会性を心配して最近ASDのアセスメントを受けたと聞き、その経過を教えてもらいました。アセスメントの際、日本のようにWISCなどの知能テストが行われるかどうか知りたかったからです。

言語療法士経由で学校に相談したのは、娘さんが6年生の時。学校から地区のCAMHS(Child and Adolescent Mental Health Service 子どもと青少年の心の健康を専門とするクリニック)に紹介してもらい、実際に精神科医に会うのに2年もかかったとか!イギリスの国民医療サービス(NHS)は無料だし、専門医の質も高いんですが、システムが複雑で待ち時間が長いのが玉に瑕…。同じNHSの医師に私立の病院で診てもらうと、目玉が飛び出るほど高額なんです(万単位)。

まず、CAMHSに紹介された時点で、オンラインの申し込用紙に娘さんの情報などを記入。その後、学校側と専門家がミーティングを行い、精神科医に診断してもらう必要があるかどうか相談する予定だったそうですが、CAMHS側が診断必要ありと判断したため、10ヵ月後に最初のアポが入ったとか。

初診は何と医師ではなく精神科のナースによる面談。その結果を専門家たちが話し合い、ASDの可能性があるのでアセスメントが必要と判断されたそうです。

それから次の受診日を待つこと1年。精神科医が両親に問診を行い、その結果ASDではなく社会不安障害という診断がおりたそうです。娘さん個人にも別個に質問する予定でしたが時間が足りず、そちらの方は次回に回されたそうですが、まだそのセッションは行なっていないとのこと。

CAMHSからの報告書によると、ASDのアセスメントに使われたのは、Dimensional Developmental and Diagnostic interview (3DI) Observational assessment

不安障害の診断に使われたのは、SCARED (Screening for Child Anxiety Related Disorders)
だそうです。

言語療法士たちは、最初からASDではなく不安障害ではないかという意見で、これはASDの疑いを除くためのアセスメントではないかと話していたそう。やはり、日本のようにWISCなどの知能テストで自閉症スペクトラムかどうかを判断することはないようですね…。

「日本では発達障害と見なされやすい?(その2)」で触れたのですが、うちの息子も主治医(GP)に頼んでCAMHSに紹介してもらい、7歳の時にASDのアセスメントを受けました。その際は5ヶ月後に診察してもらえたので、私が住む地区は待ち時間が短い方なのかもしれません。結果からいうと、問診してすぐにASDの心配はないと言われました。

受診の理由は、当時かんもくネットでPDDと診断されるお子さんが多く、心配になったこと。息子には感覚過敏があり、学校で男子のグループの中に溶け込めなかったり、家で意固地になることが多かったためです(友達関係に関しては、診察を待っている間にかなり改善されました)。

うちの場合は、私と医師、(父親が隣について)子どもと医師が別々に問診を受けました。多分、彼女の家族が受けたのと同種類の質問だったと思いますが、報告書には「アスペルガーシンドロームのスクリーニング質問表使用」とあるだけ…。加えて、学校での様子や友人関係、成績などについて担任からの情報と、それに対する医師の所見も記載されていました。

スクリーニング質問表は既成の自己診断テストをもっと具体的にした感じかな。息子の普段の生活の態度や性格など、細かいところまで具体的に訊かれた記憶があります。

「軽度発達障害フォーラム」というサイトでPDD(ASD?)自己診断テストを見つけました。気になる方は参考程度にトライしてみてください。自己診断で特に問題がないようであれば、それ程心配することはないように思います。もし心配な場合は、早急に児童相談所などに相談に行くことをお勧めします。どんな問題であれ、子どもが直面している困難を見極めて、どの様なサポートが必要かを知ったうえで、早めの対策を練ることが大切かと思います。

PDDオンライン自己診断

http://www.mdd-forum.net/check_sheet/checksheet_pdd.htm

PDD・アスペの定義と診断基準

http://www.mdd-forum.net/asp_teigi.html

ASDの定義自体が一般の健康な人を含んだスペクトラム(連続体)なので、少々社会性に欠けるとか、コミュニケーションが苦手であっても、環境に適応できていれば、個性の範囲に入るのではと私は思っています。また、そういう傾向を持つ子どもには、その傾向に対するASD児への対応を参考にできると思います。

私は9月から自閉症児専門の小規模な私立校で、週に1回TAの研修をさせてもらっています。生徒は殆どアスペの男児ばかりでなんですが、会話をしていると、話題が一方的で視野が狭く、会話のキャッチボールができないという共通点があるように感じます。視線は合うし、質問にもちゃんと答えるものの、こちらのボディランゲージや周りの状況を全く読めないよう。話題が自分の興味に集中して、話が膨らまないんですよね。ちなみに、30名強の生徒のうち、場面緘黙の子はひとりもいません。

緘黙は発達障害なのか?

日本では発達障害と見なされやすい?(その1)

日本では発達障害と見なされやすい?(その2)

日本では発達障害と見なされやすい?(その3)

日本では発達障害と見なされやすい?(その4)

日本では発達障害と見なされやすい?(その5)

ハリーポッターの魔法

先週末、息子と一緒にロンドン郊外にある『ハリーポッタースタジオツアー』に行って来ました。このアトラクションは昨年3月にオープンしたのですが、我が家は興味がなくて、日本の友達に訊かれるまで知らなかったという(笑)。ラッキーなことにタダ券をいただき、一日かけて楽しんできました。

当日は余裕をもって家を出たのに、Euston駅が大混雑していて切符を買うのに長蛇の列。予定していた急行を逃してしまい、あわてて次の電車に飛び乗ったら大失敗!鈍行だったぁ…。目的駅まで20分のはずが50分もかかってしまい、私は焦りまくり。一方、息子は落ち着き払って座っていました--というか、恥ずかしいから他人の振りをしてたのか…。

Watford Junction駅についたのが12時10分ころ。本当は専用のシャトルバスに乗る予定だったのですが、20分前に会場入りするよう言われていたため、慌ててタクシー乗り場へ。運転手さんに「何時のチケット?」と訊かれ、「12時半」と答えると、「余裕、余裕。遅れたって、ちゃんと入れてもらえるから」とのことでした。

考えてみれば、大人£29(約4900円)、子ども£21.50(約3500円)とけっこう高価なので、まあ少し遅れても門前払いはないですよね…。ちなみに、チケットは完全予約制で、当日券は買えません。

最初に映画館仕様の席に座って映像を観た後、銀幕のスクリーンがさっと上がると、現れたのはホグワーツの大広間へと通じる大きな木の扉。なかなか心憎い演出です。この日誕生日の人達が呼ばれて(複数人いた)、彼らが扉を開けました。

IMG_3411         クリスマス飾りを施した大広間。床は本物の石ですが、壁はプラスティック製で本         物そっくりに彩色してあるんです。自由に撮影できて触れるものもいっぱい

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         ダンブルドア校長をはじめとする先生達がお出迎え。手前の”The Owl Podium”は本物の金でメッキしてあるとか

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 それぞれの映画で使用したコスチュームもいっぱい展示されてました

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ダンブルドア校長のオフィスとキャビネットのディテール

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魔法薬の教室の一部と、これ誰?

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            ウィリアム王子とキャサリン妃もトライしたという魔法の杖を振るレッスン。                    ギフトショップには各キャラクターの杖がちゃんと販売されてました

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中庭には3階建ての夜の騎士バスやホグワーツの橋などが

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映画に出てくるクリーチャーも勢揃い。ダイアゴン横丁は歩いて抜けられます

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圧巻はホグワーツ城の1/24スケールモデル

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帰りはちゃんとシャトルバスで駅に戻れました

本物の舞台セットの中を実際に歩くこともでき、コスチューム、小道具から特殊効果テクノロジーに至るまで一挙に公開されていて、とてもよくできてるなと感心することしきり。子どものお付き合いで最初と最後の映画しか観ていない私でもかなり楽しめたので、ファンには必見ですね。ハリーに扮した子どもも結構いましたよ。

息子はというと、私よりもクールな感じだったかな(笑)。ハリーポッター本は初版から空前のブームを巻き起こしましたが、息子(グループ)はそれほど興味を示さず。映画は友達と一緒に全部観てるんですが…。関連グッズを買い集めることもなかったので、私もほとんど知識がないという訳です。ちなみに、息子のマイブームはというと、3~4歳の頃『サンダーバード』、6~9歳『ドクターフー』、9~10歳『スターウォーズ』という感じでしょうか。昔からメカに心惹かれるようです。

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お土産はパンフとチョコレート

 

カースティさんのインタビューがKnet Newsに公開されました。

カースティさんがSMIRAを支援することになったと知り、思いついたのはKnetでカースティさんにインタビューをさせてもらうことでした。『ザ!世界仰天ニュース』に出演して、日本のお茶の間に場面緘黙を広めてくれた彼女。場面緘黙に関わる人たちは、カースティさんに親しみを感じ、興味を持っているだろうなと思いました。今緘黙で苦しんでいる子ども達や保護者にとって、彼女の言葉が励みになるだろうなとも。

Knet会員から質問を募集して、まずミスイングランドのオフィスに質問表を提出しました。SMIRAのパーティで直接インタビュー するのが希望でしたが、「彼女は事前に質問内容が解ってる方が落ち着くから」と、言われたためです。この辺に、元緘黙の片鱗が残ってるのかもしれません ね。

その頃、カースティさんはインドネシアで数週間に渡って開催されたミスワールドのコンテストを終えたばかり。両親も応援にかけつけ、帰国したのは多分10月の初めだったんじゃないでしょうか。久しぶりにイギリスに戻って忙しかったはずですが、SMIRAパーティの1週間ほど前に、丁寧な回答を文書で送ってくれました。

質問と回答がかんもくネットHPのKnet News に今日公開されましたので、どうぞご覧ください。共感できること、参考になること、励みになることがいっぱい書かれていると思います。

カースティさんへの質問と回答

文面から、カースティさんの真面目で誠実な人柄が伝わってくるような気がしませんか?同時に、とても芯の強いところも。学生時代、みんなの様に気兼ねなくお喋りできなかった悔しさも手伝って、勉強も随分頑張ったそうです。

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SMIRAパーティでケーキに入刀するアリスさんとカースティさん

SMIRAのパーティでケリーさんがスピーチされた際、「場面緘黙を乗り越えた娘のことを誇りに思います」と涙ぐまれたんです。その時、カースティさんの目にも涙が浮かび、ケリーさんが席に戻ってくると、「もう泣かせないで~」と、二人してハンカチで目頭を押さえてました。こういう強い信頼関係をずっと保っていられるなんて素敵だなと、とっても羨ましく思いました。

関連記事: 『ザ! 世界仰天ニュース』(その1)

        『ザ!世界仰天ニュース』(その2)

        『ザ!世界仰天ニュース』(その3)

       SMIRAのパーティでカースティさんにお会いしました(その1)

       SMIRAのパーティでカースティさんにお会いしました(その2)

 

P.S. パーティの時カースティさんが教えてくれたんですが、『ザ!世界仰天ニュース』の続編がもうすぐ日本で放送されるらしいとのことです。

 

お父さんは場面緘黙?

うちの息子は、You Tube で日本語の面白い番組を見つけるのが得意です(日本語は全然駄目ですが)。この間、偶然に大食い番組の動画を見つけ、一緒に笑いながら観ていました。そうしたら、推薦動画に『探偵 ナイトスクープ 23年間会話のない夫婦』というのが目に付き、何気なくのぞいてみてビックリ!

それは、奥さんにだけ全く話しをしない、という男性の話でした。このご夫婦には18歳~25歳までのお子さんが4人いるんですが、何と一番上の娘さんが物心ついた頃から、両親が会話するのを見たことがない!というのです。でも、お父さんは子どもには普通に話すんです--とっても不思議…。子ども達は昔からこの状況に慣れっこになっていて、疑問に思いつつもずーっとそのまま暮らしてきたとか。末の息子さんが番組に依頼したことで、その現状を打破しようと探偵が動き出します。

まず、冒頭の映像を観ると、お父さん、おとなしそうな方ですね。お母さんは普通に話しかけてるのに、お父さんは反応しません。でも、お母さんを極度に避けているという風でもなく、子どもには積極的に話しかけています。普段から口数は少なそうな感じ。

このご夫婦、いかにも善良そうで、子ども達もすれたところがない印象。両親に会話はないけれど、ほんわかした雰囲気の仲の良い家族だなというのが伝わってきます。何よりも、お母さんのお父さんに対する愛情が感じられ、お父さんもまんざらではなさそう…。(私が彼女だったら、とっくの昔に切れてると思います)。

探偵がお父さんを問いつめたところ、話さなくなった原因は、「子ども中心の生活になり、放ったらかしにされてスネた」というもの!最初のうちは意地で話さなかったのが、途中から引っ込みがつかなくなったのだとか。ここ10年は話したい気持ちでいっぱいだったと、最後に補足がありました。

--奥さんにだけ話せないとう症状を持つこの男性は、果たして場面緘黙なんでしょうか?

私には断言できませんが、自意識過剰になって声がでない状態なのは、テレビ画面を利用してお母さんと対話の練習をするシーンで明らか(11分40秒あたりから)。答えようとしてもなかなか声が出ず、喉から「…ん」と搾り出すような音が…。この光景、見覚えありませんか?

通常、場面緘黙の子ども(人)は、場所・人・状況に応じて、緘黙の度合いが変わることが多いんですが、この男性の場合は人、それも奥さんに対してのみ、どこでも・どんな状況でも話せなくなっていました。

奥さんが会社に電話すると、お父さん自身が電話に応えたのにもかかわらず、奥さんと判った途端に沈黙…。わざとじゃなく、精神的なものなんでしょうね。話そうとすればするほど緊張して、喉がぎゅ~っと閉まったみたいになったんじゃないかな…。

練習を繰り返し、テレビ画面のお母さんの質問に何とか答えられるようになったお父さん。お母さんの待つ奈良公園に向かいますが、それまでの彼の様子からも、彼女が待つベンチに行くまでの様子からも、抑制的な気質が透けて見えるような気がしました。

結局、話し始めるのに30分かかったものの、見事23年の沈黙を破ることができました!家族で喜び合うのを見て私も大感激したんですが、第三者の介入がなければもっと長く沈黙が続いてたかと思うと、複雑な心境になりました。

この番組で使った方法は、緘黙の子どもにもそうですが、大人にも使えそうです。特に大人の場合、家族ではない第三者が介入することが現状の打破に効果的かもしれません。

1) 伴奏者としての第三者が介入することの利点
①本人のやる気のスイッチを入れる
②自分の状況をより客観的に見られる
③背中を押してくれる第三者が側にいることで、より安心できる

2) ビデオを使った会話の練習の利点
①話せない人、苦手な場所や状況のシミュレーションを体験しながら、話す練習ができる
②自分のペースで練習できる
③話せない人、苦手な場所や状況に、映像を通じて少しずつ慣れることができる

学校で話せない子どもだったら、教室で先生が簡単な質問をする映像、大人の場合は話せない親族や友達が問いかける映像もいいかなと思います。親しみをこめて話しかけてくれたら、嬉しいし、不安も減りそうです。映像はハードルが高いという場合は、携帯電話の文字メッセージや音声メッセージを使いながら、徐々に電話で話せるようにし、次に映像を使ってという進めかたもありますね。

緘黙治療のコンセプトさえ理解していれば、心理士などの指導なしでも、本人に一番合う方法でステップアップしていけるんじゃないでしょうか。

 

SMIRAのパーティでカースティさんにお会いしました(その3)

SMIRAパーティでは出席者が少なかったこともあり、カースティさんだけでなく、カースティさんのお母さんのケリーさんと話す機会にも恵まれました。『ザ!世界仰天ニュース』に出演されていたので、すぐ判りましたが、若々しくて綺麗な方です。カースティさんより4歳年上のお姉さんも美女ということで、美人の家系なんですね~。

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カースティさんとお母さんのケリーさん

カースティさんは学校で話せず苦しんでいた期間でも、「喋れない自分はどこかおかしいのでは?」と疑ったことは、一度もなかったそうです。これは、家族が彼女に対してごく普通に、温かく接していたことが大きかったんじゃないかなと思いました。緘黙児は自己評価が低くなりがちなので、できるだけ自信が持てるように、家族が心配を見せず、どっしりと構えている必要があるかもしれません。

ケリーさんに、「カースティさんが他の子と違うと心配になりませんでしたか?」と質問してみたところ、「姉弟と比べると、昔から大人しくて、絵を描いたりすることが好きでしたね。アーティスティックなタイプです」という答えが返ってきました。言葉は少ない方だったそうですが、それがカースティさんの個性と捕らえ、全く心配はしていなかったそう。ただ、極端な引っ込み思案のため学校で話せないのが、心配の種だったそうです。

うちの息子は学校で我慢していることが多かったせいか、それとも私に甘えている部分が大きかったせいか、緘黙が酷かった頃は家で良く癇癪を起こしたものです。カースティさんはどうだったのかなと思い、これも訊いてみたのですが、返事をきいて驚きました。

ケリーさんは、カースティさんが話せる時間、ほっと安心できる時間を作るため、毎日お昼休みに自宅に連れ帰っていたそう!自宅でランチを食べさせて、学校でどんなことがあったか二人で楽しくおしゃべりしたとか。そのせいかどうか、癇癪を起こしたりすることは全くなかったそうです。

イギリスの小学校は通常人数が少なくて、1学年1クラスという小さな学校も珍しくありません。1学年に3クラスあると、規模が大きいと見なされるくらいです。日本と比べ融通はきくと思うのですが、ランチタイムに自宅に連れ帰るというのは珍しいケース。学校を相手に、ケリーさんがかなり頑張ったのではないかな…。

『ザ、世界仰天ニュース!』で、カースティさんが自宅で話しているビデオを教室でクラスのみんなに見せるシーンがあります。これがきっかけとなり、カースティさんは場面緘黙から少しずつ脱却していきました。番組の中では、担任はケリーさんに相談したように描かれていますが、実際はそうではなかったようです。

ケリーさんによると、「娘がちゃんと喋れることを証明するつもりで、学校にビデオを送った」のだそう。それが、ケリーさん親子に何の相談もなく、全校集会の時にいきなり生徒全員にビデオを見せたのだとか…。ものすごい荒療治ですよね。

カースティさんの場合は、ビデオを見せたことが彼女の背中を押してくれる結果となりました。でも、子どもによっては、それが致命的な心の傷になってしまうケースも有り得ると思います。何か思い切った手段を取る時は、子どもの性格や、その時の心理状態、周囲の人間関係や環境などをよく見極める必要があります。ちなみに、うちの息子だったら、永遠に恨まれていたかもしれません。

感受性が強い緘黙児は、ちょっとした出来事がものすごいステップアップに繋がる時もあるし、反対に大きなダメージになることも…。1歩ずつ順調に進んできたのが、いきなり3歩後退することも往々にしてあります。また、全然進歩してないと思われる時期もあれば、一気に進歩することもあるかと思います。

親ができるのは、子どもをよく見て、子どもの心に寄り添い、その時に最善と思われることを遂行することではないかな、と思います。

 

関連記事: 『ザ! 世界仰天ニュース』(その1)

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        『ザ!世界仰天ニュース』(その3)

       SMIRAのパーティでカースティさんにお会いしました(その1)

       SMIRAのパーティでカースティさんにお会いしました(その2)

 

SMIRAのパーティでカースティさんにお会いしました(その2)

SMIRA創設21周年記念パーティでのカースティさんの挨拶は、自分が場面緘黙で苦しんだ経験を持つこと、どんな風に克服したか、そして今後は自分と同じように場面緘黙に悩む子ども達を助けていきたいという内容でした。

時々メモを見ながらも堂々としたスピーチでしたが、途中で少しだけ躓いて、「ご覧のように、本当はまだシャイなところが残ってるの」と微笑んだのがとても印象に残りました。それほどスピーチに慣れていない感じが、かえって彼女の誠実さを強調していたように思います。

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自分に贈られた花束を、カースティさんはアリスさんに進呈

緘黙で全く話せなかった小学校低学年の頃、カースティさんが最も恐れていたのは、学校で出席を取る時だったとか。クラスの男子がふざけてカースティさんの名を呼ぶので、毎回「あ、また来る。嫌だな」とドキドキしたそう。誰が名前を呼ぶか毎日小競り合いにまでなっていたらしく、多分担任やTAもそれを認識していたのではと思います。でも、彼女が黙っているし、泣いたりしないので、そのまま習慣になってしまったのかな?

それから、学校行事やグループ活動などの際、話せないために無視されたり、後回しにされたと感じたことも多く、それがとても辛かったとも…。カースティさん、今でもとても感受性が強いように見えるので、当時はかなり傷ついたんだろうなと思いました。

カースティさんに限らず、緘黙児にとって「挨拶」は鬼門になることが多いようです。学校で出席を取るのは朝一番なので、まだその日の教室の空気に馴染めず緊張度が高いこともあるかもしれません。その上、返事をすることが当たり前のシチュエーションです。一度返事ができないと、翌日はもっとハードルが高くなるのではないでしょうか?そして、返事ができないことが続くと、ますます返事がしにくくなるので悪循環ですね。

ちなみに、うちの息子は授業中に短く話せるようになっても、出席の返事だけはなかなかできませんでした。それができたのは、インファント(幼児部5~7歳)からジュニア(中等部8歳~11歳)に移行した時。校舎と教師陣が入れ替わった初日に、「この機会がチャンス」と、自分から思い切って返事をしました。

日本では、「はい、元気です」と返事をする学校が多いのかな。イギリスでは “Good morning, Miss ○○” と返事をすることが多く、そのうえ給食かお弁当かチェックするので、結構しゃべらなくてはなりません。保護者は「何でうちの子は返事もできないの?」と思いがちですが、出席の返事はかなりハードルが高い分野です。本人も気にしていると思うので、返事の仕方を工夫してもらえるよう、先生に頼めるといいですね。

幼稚園や小学校低学年なら、出席の返事の代わりに手を叩くなどの動作を使って出席を取ることもできます。慣れてきたら、動物の鳴き声や番号など短い単語で答えさせたり、声を出しやすいように体を動かしながらというのもいいかなと思います。先生が生徒の前に来てくれたら、囁き声で答えることもできるかもしれません。

出席の返事にしても、学校行事にしても、ちょっとした工夫や気遣いで、緘黙児が安心できたり、話しやすい環境を作れると思います。また、緘黙児が傷つかないようにフォローもできると思うのですが、先生に強制する訳にはいかないので難しいところですね。

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