日本では発達障害と見なされやすい?(その2)

初めて会う言語療法士が、緘黙の子どもに学校で言語テストを行なえるのか?

地区によっては、言語療法士が家庭を訪問してくれるケースもあるということ。また、子どもが全くしゃべらなかったり、緊張で固まってしまった場合は、言語療法士が何度か学校に通って慣れさせてから、というケースもあるようです。

重要だと思われるのは、言語療法士が学校を訪問する際、SENCO(特別支援コーディネーター)と担任やTAを交えたミーティングを行なうこと。学校での様子、保護者から得た家庭での様子など、現場からの子どもの情報が伝わります。言語療法士が教室で子どもを観察することも多く、言語テストのみでなく、子どもの全体像を把握したうえで、発達障害を疑うべきかどうか判断しているようです。ここに保護者も加わるのが理想ですが、ケースバイケースでしょうか…。

イギリスの言語療法士って、優しい雰囲気の女性が多いように思います。子どもの扱い方にも慣れているので、緘黙児が緘動になりにくいかもしれない。また、小さい子の場合は、テストに絵カードを使うので、指差しで答えることが可能です。

息子はというと、5歳3ヶ月の時に言語療法士に会いました(緘黙になってから10ヶ月後くらい)。息子を別室に呼び出して、1対1で言語テストを行なったようです(学校の手違いで、保護者の私達には事後報告でした)。

●言語テストの内容 Derbyshire Language Scheme Picture Test使用

A) 注意力&聞く力

視線は合うか、集中力はどれくらいあるか、指示に従えるかなどをチェック(社会性やコミュニケーションスキルもチェックしていると思われます)

B) 話し言葉に対する理解力(英語)

絵カードを使って、理解力のレベルをチェック

B) 話し言葉(英語)

絵カードを使って、話し言葉のレベルをチェック

テストでは指差しOKですが、息子は初めから囁き声がでたようでした。この当時、仲の良い友達ひとりに囁ける程度まで回復していました(放課後、友達を家に呼んで遊ばせる”Play Date”が効果的でした)。また、TAと1対1の読本の時間(15分)には、小さな声が出せてました。

言語療法士からの報告書によると、テストは絵カードを中心に、それほど難しくないものを選んだとあります。この頃には、既に私からSENCO(特別支援コーディネータ)へSMIRAの資料を提出済み。緘黙児は試されることを嫌い、それが解ると不安が増すことを考慮して、遊びに近いテストにしてくれたようです。

結果を聞いて笑ったのですが、私の苦手な前置詞や冠詞の使い分けができてないと…。当時、英会話の相手はほとんど私だったので、そのせいですね(反省)。それから、時々文章中で動詞が抜けるとも。基本的なことは理解できているし、文章で答えられるけれど、年齢に見合う言語能力があるかどうかは、将来きちんとテストする必要があるということでした。

別のエントリーで詳しく書きたいと思っていますが、息子の場合は既に発達テストを済ませていた(発達障害ではないという結果でした)ため、心理士への紹介はありませんでした。

う~ん、これでは初めて会う言語療法士が、緘黙児に学校で適正な言語テストをすることができるかどうか、の答えになってませんね。

ただ、日本では学校と家庭、相談機関、医療機関が連携していないところに問題が潜んでいるように思えます。学校、家庭、専門家から見た子どもの全体像がちゃんと把握されているのかな、と…。

それから、日本の学校とか病院とかの公共施設って、とってもよそよそしい感じがするんですよね。イギリスの小学校に行ってみて驚いたのは、校舎の壁に子どもの達が描いた壁画があったり、教室はもちろん、学校のあちこちに子どもの作品がいっぱい飾ってあって、ものすごくデコラティブ(笑)。これも、それほど緊張せずに言語テストができる理由かもしれません。

教室では、通常6人程度のグループ別に席が設けられ、授業によって席を変えたり、ホワイトボードを使った授業では、全員がカーペット敷きの床に座って学習することも多いです。インファントと呼ばれる幼児部(5~7歳)では、自分の机はありません。ジュニア(8~11歳)にあがると、やっと自分の机がもらえるのです。そして、教科書は学校においてあって、時々使う程度というのが驚きでした!

通常は6人くらいのグループで一緒に学び、全員で学習する時は床に座ることも多いですね。また、ロンドンでは人種のバラエティも豊かです。

イギリスの小学校の授業風景1(写真だけ参照してください)

イギリスの小学校の授業風景2(写真だけ参照してください)

どうですか?日本の小学校のように整然とした雰囲気とは、全く違いませんか?日本から駐在員のお子さんが転校してくると、よく「イギリスの学校は楽」と思うらしいんですが、本当にそういう感じなんですよ。先生もフレントリーだし(笑)。だから、イギリスでは緘黙児が緘動になりにくいのかな、とも思います。

あと、複数の心理士に訊いたんですが、発達障害、特にASDかどうかを見分ける時、イギリスではWISCのようなIQテストはしないようなんです。日本ではWISCの結果を見て、できることとできないことの凸凹が大きいと発達障害という風になってるみたいですが…。

私はどうしても息子の特性傾向が知りたくて、7歳4ヶ月の時に心理士にWISCテストをしてくださいとお願いしました。すると、「ASDかどうかをチェックするのは、別のテストです」と。そして、親子面談と個人面談(質疑応答の他、絵を描いたようです)でスクリーニングをした結果、年齢に合った社会性とコミュニケーション力があるという理由から、再びASDではないとの診断がおりました。

息子は感覚過敏で、苦手なこと、新しいことをするのにものすごく抵抗があり、私からみると、かなりこだわりが強いように感じていたんですが…。こだわり+感覚過敏=発達障害という図式ではないような…。自閉症の特徴である3つ組(想像力の障害+社会性の障害+コミュニケーションの障害)が組み合わさって、初めて発達障害となるのかな、と推測してます。

話があちこちにそれて申し訳ないですが、またまた次回に続きます。

 

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日本では発達障害と見なされやすい?(その1)

仮説1: A)日本では場面緘黙が広汎性発達障害と診断されやすい傾向にある

まず、場面緘黙が疑われる場合、どんなルートで診断されるのかイギリスと日本で比較してみたいと思います。私はこちらでの経験しかないので、間違っていたらご指摘ください。

●イギリスの場合

通常、場面緘黙かどうかを見分けるのは言語療法士

まず言語療法士により、言語能力テストが行われる。発達に何らかの問題があるかもしれないと判断した場合は、心理士に連絡が行き、必要があれば発達テストが行われる。(”The Wandsworth Care Pathway for Selective Mutism” 参考。これは、ロンドンのワンズワース地区における場面緘黙治療のケアルートを示した資料です)。私の見聞きしたところでは、緘黙児が発達検査を受ける事はあまりないようです。

ちなみに、イギリスでも全国的に定められたケアルートや支援方法がある訳ではなく、地区やそれぞれの学校によって異なっているのが現状です。SMIRAの本拠地であるレスターシャー州と言語療法士マギー・ジョンソンさんが働くケント州では、特にシステムが整っています--というか、彼らが頑張って整えたのですが。同じロンドン市内でも住んでいるエリアや学校で受けられる支援がかなり違うので、宝くじのような感じですね…。

●日本の場合

場面緘黙かどうかを見分けるのは、児童相談所や発達センターなどの相談機関や医療機関に所属する医師または心理士、相談員(?)(正式な診断ができるのは医師のみ)

まず、保護者は相談機関を訪ねたり、学齢期の子どもの場合はスクールカウンセラーに相談することが多いという印象があります。そこで紹介されて、医療機関を訪ねることになるのかな?緘黙児にWISCなどの発達検査をする傾向が強い印象があるんですが、違っていたらご指摘ください。

………………………………………………………………………………………………

息子の場合は、学校側に場面緘黙の知識がなかったため、最初に小児クリニックの門を叩きました。ですが、通常は学校に言語療法士が来て子どもの様子を観察してから、言語能力テストをすることになると思います。イギリスでは学校と地区の医療機関が連携していて、特別支援教育を受ける子ども達のために、心理士や言語療法士などのセラピストが定期的/不定期的に学校に来てくれるのです。

言語療法士が学校でどうやってセッションをするかというと、授業中に子どもを連れ出して、別室で個別のアセスメントやセラピーを行なうんです。私にはとっても不思議なんですが、楽器の個人レッスンも各教師が学校へ出張してくるんですよね。授業を抜け出して15分~30分のレッスンを受けるんですが、勉強が遅れないか気が気ではありません。でも、それが普通です。地区の陸上競技会やコンテストなどでも、選ばれた子が授業を抜け出して参加したり…。

余談ですが、だからこそ子ども達は特別支援を受けている子どもに、それほど違和感がないのかもしれません。誰かが授業中に抜けるのが普通なので、「あっそう」という感覚なのかなと。教室内もいつもガヤガヤしてるし、基本的にグループ学習だし。その点では、日本で緘黙児が言葉の教室に通う方が、心理的に大変じゃないかなと思います。

長いので、ここで一旦切りますね。

関連記事:緘黙は発達障害なのか?

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田舎の週末

夫の実家は、イングランド中部に位置するノーサンプトンシャー州のカントリーサイドにあります。義両親は海外転勤族だったんですが、退職後イギリスに戻り、かつてのサナトリウムを改築した家に落ちつきました。

家を買うときの第一条件が「景色の良いところ」だったそうで、庭のむこうにはのどかな田園風景が広がっています。義両親の住む村には郵便局が1軒とパブが1軒あるのみ。

最初は「うわ~、こんな不便な田舎で退屈しないの?」と思ったんですが、二人とも忙しくあちこちを飛び回り、とっても充実した日々を送っているよう。高速(無料)を使って2時間弱の距離なので、2、3ヶ月に一度くらい泊りがけで遊びに行きます。

IMG_2658ヴィレッジグリーンの向こうには藁葺き屋根の家

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雑貨店をかねた郵便局は村人の社交の場

IMG_2538庭の先は見渡す限りの田園風景。手前のバードフィーダーに野鳥がたくさんやってきます

義母の趣味はガーデニングと刺繍。以前はアロットメントと呼ばれる共同農園の一部を借りていたんですが、現在は自分の庭の小さな采園で満足してるよう。

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右から、りんごの木、レタス、アスパラ、紅花インゲン

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温室のブドウ。ここで花の種や苗をある程度育ててから庭に移植します

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窓辺に咲くイングリッシュローズ、ジェネラス・ガーデナー

近所には犬を飼っている家が多く、お隣にはゴールデンレトリバーが2匹。時々ブリーダーもやっていて、ちょうど私たちが行った時に、仔犬が生まれたばかりでした~。

IMG_2345初産のジェマちゃんが産んだ仔犬は合計9匹!

大英帝国が繁栄したヴィクトリア時代には、国中に鉄道ネットワークが敷かれたといいます。義両親の村の近くにも、1950年代まで蒸気機関車が走っていたとか。その廃線になった鉄道の短区間が、10年ほど前に地区のアトラクションとして復活。線路沿いにサイクリング&ウォーキングコースを設け、学校の休みや祝祭日などに機関車を走らせています。

古い施設を修復し、鉄道マニアのボランティアが運営しているので、オンボロ感は否めません。でも、の~んびり、ひなびた感じが、なんともいえずいいんですよね。緘黙の大人が趣味でこういうボランティアができたらいいのにな、なんて思います。

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年に数回の特別イベントで『機関車トーマス』がやってくる時は、家族連れで大賑わい。息子が小さい頃何度か乗ったんですが、実はプラスティック製のトーマスの顔を正面につけただけのハリボテ…それでも、子ども達は大喜びです。ファットコントローラーに扮したおじさんがクイズを出したりして、その手作り感覚が微笑ましいのでした。

IMG_2589ウォーキングコース沿いに厩舎があり、馬達がのんびり草を食べる姿が見られます

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線路沿いの植物からも秋の気配

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沿線で摘んできた野の花

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緘黙は発達障害なのか?

 

子どもの場面緘黙を知った時、親がまず心配するのは「治るのか?」ということではないでしょうか?私はその次に、場面緘黙は発達障害なのかどうかがすごく気になりました。

というのも、息子が緘黙だった2005年~2008年当時、日本の多くの緘黙児に広汎性発達障害や発達障害の傾向があるという診断が下りていたからです。何となく、「場面緘黙=広汎性発達障害かそのスペクトラム」という風潮があったような気がします。そのことは、「場面緘黙とは?」(その2)でも触れました。

ちなみに、イギリスでは広汎性発達障害(PDD/Pervasive Developmental Disorders)という言葉は殆ど聞きません。昔、SMIRA代表のアリスさんと話していて、PDDという言葉が通じなかったことがありました。小児クリニック等での体験からいっても、こちらでは自閉症スペクトラム障害(ASD/Autistic Spectrum Disorder)を使うことが多いようです。現在では日本でもそうなりつつあるようですが。

掲示板や保護者会、講演会から判断すると、SMIRAでは純粋な場面緘黙児が主流という印象を受けます(残念ながら、どの程度の割合なのかは調査できていないそうです)。従って、自閉症スペクトラム障害の二次障害としての緘黙については、あまり話題になりません。子どもにASDの傾向ありとの診断がおりた、という話は割と例外的なのです。

「これはどうしてなんだろう?」と、長いこと不思議に思っていました。日本では広汎性発達障害を併せ持つ緘黙児が多くて、イギリスでは少ない--国によって違うのでしょうか?そんなはずはないですよね。他国においても併存のケースは聞きますが、日本ほど多くない印象を受けます。

昨年5月、マギー・ジョンソンさんのワークショップで質問してみたところ、「場面緘黙=ASDではない」という答えが返ってきました。でも、ASDを抱える緘黙児は一定数いるということ。詳しい数字は判らないけれど、その割合はそれほど高くないと思うということでした。特性に類似したところもあるため、ASD児への対応策が緘黙児にも効果的なことがあるとも(例えば、新しい場所や出来事に適応しにくいため、事前に予行練習をするなど)。

(アメリカ精神医学会のDSM -VやICD-10(国際疾病分類)では、自閉症スペクトラムや学習障害などがある場合、場面緘黙は二次障害として扱います。でも、マギーさんは併存の場合もあえて場面緘黙のカテゴリーに加えているそう)。

5年ほど前に、ロンドン大学で教育心理学を教えているトニー・クライン教授とお話する機会があったのですが、教授は「場面緘黙とASDは別」という考えでした。理由を訊くと、「どちらも不安が背景にあるが、不安の質が違う」ということ。(例えば、ASD児が先のことを想像できない不安に対して、緘黙児は先のことを想像して不安になる)。

クライン教授やSMIRAはDSMを基準にしているため、ASDと診断されている子どもは除外されていると考えられます。でも、SMIRAではASD児をスクリーニングしている訳ではないので、会員の割合のコントロールはできませんよね。

日本では、疑がわしいケースは広汎性発達障害と診断する傾向が強いのではないか?また、イギリスの学校ではASD児への支援が充実しているため、二次障害としての場面緘黙が出にくいのではないか、というのが私の仮説です。

また、場面緘黙の定義に注目すると、「話せる人とは年齢にあった会話力&ソーシャルスキルを持っていること」を前提としています。母親が子どもと日常会話を交わしていて、子どもが年齢にあった会話力&ソーシャルスキルを持っているかどうか、判断できるでしょうか?ごく小さい子ならわかりやすいと思うのですが、年齢があがってくると親とろくに話もしない子どもも多くなってきます。

日本語の持つ構造や「察し」の文化のために、子どもの会話能力やソーシャルスキル能力を判断しにくいのではないか、というのがもうひとつの仮説です。

あちこち話が飛んでしまいましたが、これからこの3つの仮設について考えていきたいと思っています。

関連記事:言語療法士マギー・ジョンソンさん

関連記事:ロンドン大学教育心理学教授トニー・クライン氏

 

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『ザ!世界仰天ニュース』(その3)

昨日、インドネシアのバリ島でミスワールドの最終選考会が行なわれ、ミスフィリピンがミスワールドに輝きました(下の映像の最初のイメージがミスフィリピンのメガン・ヤングさんです)。

残念ながらカースティさんは選ばれませんでしたが、セミファイナルではトップ10のうち6位に入りました。世界各国を代表する美女126名のなかで6番目に選ばれたんですから、すごいですよね。映像では堂々としていて、元緘黙の片鱗などまったくありません。

セミファイナルの様子。カースティさんは6位でした(2:24)

イギリスの日曜(29日)のニュースでは、どのメディアも写真入りでミスフィリピンが選ばれたことを報道したようです。BBCのニュースサイトでも、テレグラフ紙の日曜版でも、カースティさんのことは全く言及してなくて、ちょっと残念…。

同時に、イスラム強硬派が各地で抗議デモを展開したため、会場がジャカルタからバリに移されことが大きく書かれていました。武装警官を動員して厳戒態勢が敷かれたということで、無事に閉幕して良かったです。

→BBCニュースの記事はここ

インドネシアでミスワールドの様々なイベントに参加したカースティさん。イギリスに戻ったら、少しのんびりできるといいですね。

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『ザ!世界仰天ニュース』(その2)

カースティさんに自分や子どもを重ねて、ドキドキしながらドラマの展開を見守った方も多かったのではないでしょうか?

特に、幼稚園児役で出てきた最初の女の子の演技、なかなかリアルじゃなかったですか?

幼稚園の先生に挨拶をしようと口をモゴモゴするところ、どっかで見たなぁと思っていたら、うちの息子でした。それも緘黙時代(4歳半~8歳)ではなく、克服後の10歳の頃のこと。威厳のある元教員のおばさまに質問されて、声が出るまでに「モゴモゴ」があって、小さな声でごく短く答えていました。私たち二人に凝視されて、ものすごく緊張したんでしょう。

カースティさん、もしもこのモゴモゴの後にひと声出ていたら、緘黙になってなかったかもしれません。でも、「場面緘黙の要素を持つ引っ込み思案」のままだったかも…。緘黙の始まりって、紙一重のタイミングなのかもしれません。

息子は今でも緊張すると、口数が少なくなり、声が小さくなる傾向にあります。特に、この春帰国した際は見知らぬ集団に合流することが多く、人前では寡黙になってしまい、「大人しい」と言われまくり。本人は日本語ができないことをしきりに気にして、「僕だけ喋れない」と言いつつも、挨拶と片言返事だけはしていました。

それを考えると、うちの息子はまだ「場面緘黙の要素を持つ引っ込み思案」なのかなとも思いますが、もう緘黙状態に戻ることはないような気がしています。

学校ではどうかというと、ドラマの授業で演技もし、クラスでの発言も発表も「嫌だ~」といいながら何とかこなしていて、「大人しい奴」というキャラクターで定着しているようです。

考えてみると、緊張すると口数が少なくなるのは私も同じ。最近まで、『発音・言語・コミュニケーションに困難を持つ子どもの支援』というコースを受講してたんですが、英語と経験不足の壁を感じて、小さくなってました(笑)。

話を番組に戻すと、小学校入学の際、クラスメイトに話そうとして「ん、ん」と少し声が出たり、口を開けたりしたのは、ちょっと違うなと思いました。緘黙モード(緊張時)の時って、無表情になってませんか?

息子に映像を見せて感想を訊いてみたら、「周囲がどんなに意地悪か描ききれてない!」と文句が出ました。えっ?と思って突っ込むと、「クラスのみんなは、違う先生や転校生に、すぐ『この子はしゃべれないから』って告げ口するし、意地悪もいっぱいされた。先生だってキツイこと言ったり、僕を邪魔にする時もあった」と。

小さい子には遠慮がありません--悪気はなくても思ったことをすぐ口にします。そして、周りも同調しやすい。また、先生だって人間です。忙しくて大変な時に手のかかる子がいれば、少しばかり口調がきつくなることもあるでしょう。

緘黙児は繊細で敏感な子が多いので、周囲の空気を深読みして、それで実際の10倍くらい傷ついてしまうのかも…。ちょっと被害妄想気味になっちゃうこともあるかもしれませんね。

番組の最後にカースティさん本人が出てくる場面。終わりの方で、「普通の人にとっては何でもないことも私にとっては大きな挑戦です。でも何度も挑戦することで少しずつ自信になって、成長することができました」とサブタイトルが出ます。

聞き取りにくいですが、実際には、”If anything, it looks quite scary, but I think ,then it’s sort of scary times having to be confident, which is actually improved my confidence. So, as much as I hated it, I am sort of enjoying it at the same time. Because I am sort of achieving these little goals in my head, that to most people wouldn’t even exist.” と言っているようです。

直訳すると、「(モデルの仕事は)自信をもたないといけないから怖い。でも、実はそれが自信につながったんです。だから、すごく嫌だけど楽しくもあるの。普通の人は思いもよらないでしょうが、私は頭の中で常に小さなゴールを達成しているんです」という感じでしょうか。

ということは、つい最近までスモールステップで小さな成功体験を積み重ね、自己評価をあげてきたのかな。ミスイングランドになる過程で自信をつけ、もっと冒険したいう心境になれたみたいですね。

下の映像を見ると、ミスコンに挑戦したもともとの理由は、自己評価をあげて、友達を作り、楽しみたかったからだと言っています。昔場面緘黙だったので全く話さなかったことも告白してますね(0:54から)。

“I’ve always suffered with confidence problems and I used to have Selective Mutism when I was younger, so I didn’t speak at all. And originally I entered because I wanted to get my confidence up and I wanted to make friends and just to have fun, which I did. And now I feel I have qualities and skills to be Miss England.”

こんな美女の口から、「自信がなかった」とか「友達を作りたい」とか聞くと、やっぱり抑制的な気質がベースにあるんだろうなと思います。28日のファイナル、頑張って欲しいですね。

 

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『ザ! 世界仰天ニュース』(その1)

緘黙の関係者はまだ記憶に新しいと思いますが、今年2月に日テレの『ザ! 世界仰天ニュース』という番組で、『静かな少女の秘密』と題されたドラマが放送されました。これは、元場面緘黙だったイギリス人モデル、カースティ・ヘィズルウッド*さん(24歳)の幼少時代をドラマ化したもの。場面緘黙に苦しむ少女と周囲の様子が克明に描き出されていたと思います。

事前にかんもくネットでも話題になっていましたが、ゴールデンタイムの人気番組だった為か、放送の2日後くらいにイギリス在住の日本人の友達から情報が入りました。彼女は全く知らなかったそうですが、日本の友人から連絡が入ったとか。すぐに、中国版ツベで映像を観ることができ、インターネットのありがたさを改めて感じました。

→ 映像はここからどうぞ http://youtubeowaraitv.blog32.fc2.com/blog-entry-26558.html

当時ミスイングランド候補のひとりだったカースティさんは、6月の大会で見事ミスイングランドに輝きました。現在、バリ島でミスワールドの選考会に参加中で、様々なコンテストを終え、最終審査が行なわれるのは今週末の28日だそう。

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写真はMiss EnglandのFPからお借りしました

今頃どうして『ザ!世界仰天ニュース』かというと、カースティさんがイギリスの支援団体SMIRAをサポートすることになったからなんです。ミスイングランドになると、任期中の一年間は複数のチャリティーを支援する任務があります。カースティさんが一番に選んだのがSMIRA。そのSMIRAから、10月19日に予定している創立21周年記念パーティーで、カースティさんを会員に紹介するというニュースレターが届いた訳です。

私もかんもくネットのロンドン支局員として出席させていただく予定なので、本人に会えるんだったら、色々お訊きしたいと思いました。それで、7月末にSMIRA経由でミスイングランド事務所に連絡を取りはじめたのでした。

実は、担当者の方も元ミスイングランドだそうで、写真を見たらものすごい美人でした~(笑)。でも、超ご多忙らしく、なかなか連絡が取れないんですよね…。先日、やっと連絡が来て、何とかパーティの時にインタビューさせてもらえそうです。

で、ほっと一息ついていたら、翌日「カースティがミスワールドになれる様、Knetからも応援メッセージを」というリクエストが。事務局で慌てて準備し送った途端に、もう先方のFBにあがってました(笑)。

さて、『静かな少女の秘密』ですが、みなさんはどんな感想を持たれたでしょう?私はとてもよく出来たドラマだと思いました。シリアスな番組ではないので、どんな風に仕立てるんだろうと不安に思っていたんですが、製作スタッフの温かいまなざしを感じました。

特に、番組中で「障害」という言葉を使わず、場面緘黙を「症状」と説明していたのに、ほっとしました(私自身、緘黙は「症状」で、その背景にあるものは人によって違うと思っています)。曖昧に「病気」としていましたが、これが「障害」だと偏見を持たれる可能性もあるかと思います。かなり研究したのか、「恐怖」、「自信」などのキーワードが、大きくテロップで流れたのも印象に残りました。

*コンテストの画像では、他の人たちはカースティさんの苗字Heslewoodを「ヘスルウッド」と発音していますが、カースティさん自身は「ヘィズルウッド」と言っているようです。夫に訊いてみたところ「どっちでもいいんじゃないの」ということで、ちょっと謎です。

 

 

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『どうして声が出ないの?マンガでわかる場面緘黙』

先週の水曜日、緘黙関連の新書、『どうして声が出ないの?マンガでわかる場面緘黙』が私の手元にも届きました。

かんもくネット事務局の仲間であり、著者であるははさんが、忙しい中郵送してくださり、こんなに早く読めると思ってなかっただけに大感激。

改めて紹介すると、この本はかんもくネットのHPとツイッターを担当しているははさんこと、はやしみこさんが、9月5日に学苑社から出版した2冊目の著書です。

→ 概要をかんもくネットHPでチェック

1冊目の『なっちゃんの声』は、場面緘黙の女の子、なっちゃんの学校での様子を描いた絵本。場面緘黙の子どもを主人公に、感じていることや不安になった時の身体の反応などを、優しさあふれる絵と文章で綴っています。

緘黙の子どもに「話せないのは自分だけじゃないんだ」と伝えると同時に、周囲の大人や子ども達に緘黙児の気持ちや状態を理解してもらえる内容。保護者の方には、子どもの様子を見ながら、ぜひ非一緒に読んで欲しいなと思います。クラスメイトへの理解促進にも役立ちそう。

2冊目の本書、『どうして声が出ないの?』でも、主人公はなっちゃんです。前半はマンガという媒体を使い、どうして声がでないのかその理由を解りやすく説明しています。信号機を使った例えと、階段を使った経験値の説明が秀逸。先輩たちからのアドバイスも、緘黙の読者自身に語りかけてくれているようです。

更に、後半にはどのように場面緘黙を克服していけばいいか、身近なところからすぐ始められる丁寧なガイド付き!スモールステップの取り組み例を見ながら、それぞれ自分に合った取り組みを考案できそうです。支援者にとっても、ためになるアドバイスがいっぱい。

緘黙児がひとりで読んで、何故自分は話せないのか理解することができ、博士や先輩たちからのアドバイスに希望をもらえる素晴らしい内容。何よりも、なっちゃんという同士の存在が励みになるんじゃないでしょうか?そのうえ、どうしたら緘黙を克服できるか、子どもが自分で考え、動き始めるきっかけを与えてくれそう。すぐ始められるスモールステップ、先生とのやり取りなど、きめ細かな説明やアドバイスも嬉しいですね。

海外でも例がない、子どもの気持ちに寄り添った画期的な作品だと思います。(この本にひとつ難があるとすれば、1500円という価格はちょっと高いですね…発行部数が多ければ割安になるんでしょうけど)

緘黙を克服するためには、年齢があがってくるほど、子ども自身の意思が重要になってきます。自分の緘黙状態を一番良く把握しているのは子ども自身。無理のない取り組みを設定し、納得しながらスモールステップを上がって行くことが、肯定的な自己評価と自信につながると思います。

幼稚園児であっても、繊細な緘黙児たちは「黙っているのは良くないこと」と感じ、他の子ども達と自分との違いを認識しているようです。息子もそうでしたが、子どもは自分ができないこと、話せないことに引け目を感じていると思います。

それ故に、親にも言えずに黙っていることが多い--誰にも言えない不安を心に抱えることがどれだけストレスになるか…。自己評価も低くなりがち…。子どもを安心させてあげるためにも、自信をつけさせるためにも、なっちゃんの本をうまく活用できるといいですね。

 

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さらば夏の光(3)

今年の夏、日本だと中学1年の息子には、学校からの宿題がひとつもありませんでした。これは別に驚くことではなく、実は小学生の時から夏休みの宿題なんて出ないのです(私立校のことは不明)。

理由は、夏休みの後に新学年が始まるからだと思います。イギリスでは3学期(春期)に重要な試験が行なわれるので、夏休みは羽を伸ばす時期。それに、新学年から担任や教科の担当教師が変わるため、先生達は宿題をチェックしている余裕などないということでしょう。

では、長~い夏休み中、子ども達は何も勉強しないのか?それは親の方針次第。勉強させたい親はさせる、ということなのです。こういうところが、さすが個人主義の国ですね(笑)。

で、我が家はというと、算数と国語のドリル、読書、トランペットの練習は毎日+今年こそは日本語!と息巻いていたのですが--結局、続いたのは先生から指示があったトランペットと何とか算数、時々国語…。息子は昔から宿題でない限りものすごく嫌がるので、小さな頃は自宅学習バトルで本当に大変でした(だって、息子の小学校の宿題って毎金曜日にぽっちり出るだけ。熱心な家庭では早くから家庭教師(塾というものがない)をつけるため、できる子とできない子の差がどんどん開くのでした)。

そんな息子が自ら進んでやったのが”料理”でした。

イギリスのセカンダリースクールでは、調理実習の時間は小グループ制です。ガス台が人数分あるので、各自がひとりで課題の料理を作ることが基本。息子が最初に作って持ち帰ったのがトマトスープだったんですが、これが仲々のお味。先生に褒められたとかで、料理に興味を持ったようでした。持ち帰った料理を家族に味見させて、その感想をPCでチャートグラフにまとめ、レシピを書き込むのが宿題です。

感覚過敏がある息子は、嗅覚や味覚が鋭くなかなかのグルメです。パンやビスケットなど味の違いが判るので、コピー商品を買うとすぐバレてしまう。「これ○○のビスケットじゃない」と怒られ、しかも食べないので、最後は私が食べるか、捨てるか…。乳製品がちょっとあやしい時など、息子に訊けば判るのでとっても便利です。

この夏に挑戦した料理は、

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初めてのオムレツ

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 パンケーキ(You-Tubeを見ながら)

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今大人気のメレンゲ菓子

9月の初旬、まだ夏休み中の息子の友達を呼んで、庭でバーベキューを楽しみました。息子がバーベキューを担当してくれたので、私はひとりだけ来たママ友とお喋り。夏の終わりの良い想い出となりました。

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 子ども達が好んで食べたのはベーコンを巻いたミニソーセージ

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翌日、残ったチキンと野菜の串で今年最後のバーベキュー

イギリス人の女の子は料理をしない子が多いし、ひとり暮らしでも大丈夫なように、一人前の料理男子に育てたいと思っています(笑)。

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さらば夏の光(2)

イギリスには週単位で借りられるコテッジが各地に点在しています。カントリーライフへの憧れや、暮す感覚の旅を楽しめるという理由で、コテッジホリデーは大人気。家族や友達同士でいったり、グループで一緒に大き目のファームハウスを借りて、わいわい騒いだり。

レストランの食事に飽きたらキッチンで手料理を、出かけるのに疲れたら自宅のように寛げるのが魅力。食器や調理器具はもちろん、冷蔵庫や洗濯機、TVなどの家電は大体揃っています。ただ、wifi の普及はまだまだで、辺鄙な田舎だと携帯の電波が届かないことも…。

カントリーサイドの観光スポットは交通の便が悪いので、コテッジホリデーには車が必需品です。私達は今回北ウェールズからリバプール周辺まで足を延ばしました。

ここからは、<北ウェールズのコテッジホリデー>の続きです。

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コンウィ渓谷にあるウェールズ屈指のイギリス庭園、ボドナントガーデン(Bodnant Garden)。夏休みのイベントで池の生き物をすくって観察する親子連れがいっぱい。覗いてみたら、お玉杓子と一緒に小さなヒルが!

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不思議な治癒力を持つといわれる、聖ウィニフレッドの井戸(St Winefride’s Well)。7世紀から巡礼の地として知られ、今も身体の不自由な信者が訪れています。澄んだ水が滾々と湧き出ていて厳かな雰囲気でした。この井戸にちなんで、町がHolywellと名づけられたそう

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リバプールといえば、やっぱりBeatles。ここはジョンレノンが少年時代に住んでいたミミ伯母さんの家です。ポールやジョージの家と比べて大きく、裕福な地区にあるものの、両親と暮らせず反抗的な少年だったそう

IMG_2136ウールトン地区にあるセントピーターズ教会は、ジョンとポールが初めて出会った場所。墓地には実在のエリナーリグビーのお墓があり、ファンの聖地となっていますが、歌詞のキャラクターとは無関係なんだとか IMG_2142ビートルズの歴史には見向きもせず、ひたすら墓地で見つけたブラックベリーを食べる父子…

そして、イギリスの代表的な食べ物といえば、

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ご存知フィッシュ&チップス。これで小盛です

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と、カレー

かつて植民地だったインドからの移民により、インド料理がしっかり定着。イギリスでテイクアウトといえば、中華料理とインド料理が定番なんです

ホリデー中に出逢った美味しいデザートたちIMG_1953 IMG_2049IMG_2047IMG_2092そして、今は懐かしい急勾配の坂道と海のある風景。また機会があったら行きたいです

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