『ザ! 世界仰天ニュース』(その1)

緘黙の関係者はまだ記憶に新しいと思いますが、今年2月に日テレの『ザ! 世界仰天ニュース』という番組で、『静かな少女の秘密』と題されたドラマが放送されました。これは、元場面緘黙だったイギリス人モデル、カースティ・ヘィズルウッド*さん(24歳)の幼少時代をドラマ化したもの。場面緘黙に苦しむ少女と周囲の様子が克明に描き出されていたと思います。

事前にかんもくネットでも話題になっていましたが、ゴールデンタイムの人気番組だった為か、放送の2日後くらいにイギリス在住の日本人の友達から情報が入りました。彼女は全く知らなかったそうですが、日本の友人から連絡が入ったとか。すぐに、中国版ツベで映像を観ることができ、インターネットのありがたさを改めて感じました。

→ 映像はここからどうぞ http://youtubeowaraitv.blog32.fc2.com/blog-entry-26558.html

当時ミスイングランド候補のひとりだったカースティさんは、6月の大会で見事ミスイングランドに輝きました。現在、バリ島でミスワールドの選考会に参加中で、様々なコンテストを終え、最終審査が行なわれるのは今週末の28日だそう。

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写真はMiss EnglandのFPからお借りしました

今頃どうして『ザ!世界仰天ニュース』かというと、カースティさんがイギリスの支援団体SMIRAをサポートすることになったからなんです。ミスイングランドになると、任期中の一年間は複数のチャリティーを支援する任務があります。カースティさんが一番に選んだのがSMIRA。そのSMIRAから、10月19日に予定している創立21周年記念パーティーで、カースティさんを会員に紹介するというニュースレターが届いた訳です。

私もかんもくネットのロンドン支局員として出席させていただく予定なので、本人に会えるんだったら、色々お訊きしたいと思いました。それで、7月末にSMIRA経由でミスイングランド事務所に連絡を取りはじめたのでした。

実は、担当者の方も元ミスイングランドだそうで、写真を見たらものすごい美人でした~(笑)。でも、超ご多忙らしく、なかなか連絡が取れないんですよね…。先日、やっと連絡が来て、何とかパーティの時にインタビューさせてもらえそうです。

で、ほっと一息ついていたら、翌日「カースティがミスワールドになれる様、Knetからも応援メッセージを」というリクエストが。事務局で慌てて準備し送った途端に、もう先方のFBにあがってました(笑)。

さて、『静かな少女の秘密』ですが、みなさんはどんな感想を持たれたでしょう?私はとてもよく出来たドラマだと思いました。シリアスな番組ではないので、どんな風に仕立てるんだろうと不安に思っていたんですが、製作スタッフの温かいまなざしを感じました。

特に、番組中で「障害」という言葉を使わず、場面緘黙を「症状」と説明していたのに、ほっとしました(私自身、緘黙は「症状」で、その背景にあるものは人によって違うと思っています)。曖昧に「病気」としていましたが、これが「障害」だと偏見を持たれる可能性もあるかと思います。かなり研究したのか、「恐怖」、「自信」などのキーワードが、大きくテロップで流れたのも印象に残りました。

*コンテストの画像では、他の人たちはカースティさんの苗字Heslewoodを「ヘスルウッド」と発音していますが、カースティさん自身は「ヘィズルウッド」と言っているようです。夫に訊いてみたところ「どっちでもいいんじゃないの」ということで、ちょっと謎です。

 

 

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『どうして声が出ないの?マンガでわかる場面緘黙』

先週の水曜日、緘黙関連の新書、『どうして声が出ないの?マンガでわかる場面緘黙』が私の手元にも届きました。

かんもくネット事務局の仲間であり、著者であるははさんが、忙しい中郵送してくださり、こんなに早く読めると思ってなかっただけに大感激。

改めて紹介すると、この本はかんもくネットのHPとツイッターを担当しているははさんこと、はやしみこさんが、9月5日に学苑社から出版した2冊目の著書です。

→ 概要をかんもくネットHPでチェック

1冊目の『なっちゃんの声』は、場面緘黙の女の子、なっちゃんの学校での様子を描いた絵本。場面緘黙の子どもを主人公に、感じていることや不安になった時の身体の反応などを、優しさあふれる絵と文章で綴っています。

緘黙の子どもに「話せないのは自分だけじゃないんだ」と伝えると同時に、周囲の大人や子ども達に緘黙児の気持ちや状態を理解してもらえる内容。保護者の方には、子どもの様子を見ながら、ぜひ非一緒に読んで欲しいなと思います。クラスメイトへの理解促進にも役立ちそう。

2冊目の本書、『どうして声が出ないの?』でも、主人公はなっちゃんです。前半はマンガという媒体を使い、どうして声がでないのかその理由を解りやすく説明しています。信号機を使った例えと、階段を使った経験値の説明が秀逸。先輩たちからのアドバイスも、緘黙の読者自身に語りかけてくれているようです。

更に、後半にはどのように場面緘黙を克服していけばいいか、身近なところからすぐ始められる丁寧なガイド付き!スモールステップの取り組み例を見ながら、それぞれ自分に合った取り組みを考案できそうです。支援者にとっても、ためになるアドバイスがいっぱい。

緘黙児がひとりで読んで、何故自分は話せないのか理解することができ、博士や先輩たちからのアドバイスに希望をもらえる素晴らしい内容。何よりも、なっちゃんという同士の存在が励みになるんじゃないでしょうか?そのうえ、どうしたら緘黙を克服できるか、子どもが自分で考え、動き始めるきっかけを与えてくれそう。すぐ始められるスモールステップ、先生とのやり取りなど、きめ細かな説明やアドバイスも嬉しいですね。

海外でも例がない、子どもの気持ちに寄り添った画期的な作品だと思います。(この本にひとつ難があるとすれば、1500円という価格はちょっと高いですね…発行部数が多ければ割安になるんでしょうけど)

緘黙を克服するためには、年齢があがってくるほど、子ども自身の意思が重要になってきます。自分の緘黙状態を一番良く把握しているのは子ども自身。無理のない取り組みを設定し、納得しながらスモールステップを上がって行くことが、肯定的な自己評価と自信につながると思います。

幼稚園児であっても、繊細な緘黙児たちは「黙っているのは良くないこと」と感じ、他の子ども達と自分との違いを認識しているようです。息子もそうでしたが、子どもは自分ができないこと、話せないことに引け目を感じていると思います。

それ故に、親にも言えずに黙っていることが多い--誰にも言えない不安を心に抱えることがどれだけストレスになるか…。自己評価も低くなりがち…。子どもを安心させてあげるためにも、自信をつけさせるためにも、なっちゃんの本をうまく活用できるといいですね。

 

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さらば夏の光(3)

今年の夏、日本だと中学1年の息子には、学校からの宿題がひとつもありませんでした。これは別に驚くことではなく、実は小学生の時から夏休みの宿題なんて出ないのです(私立校のことは不明)。

理由は、夏休みの後に新学年が始まるからだと思います。イギリスでは3学期(春期)に重要な試験が行なわれるので、夏休みは羽を伸ばす時期。それに、新学年から担任や教科の担当教師が変わるため、先生達は宿題をチェックしている余裕などないということでしょう。

では、長~い夏休み中、子ども達は何も勉強しないのか?それは親の方針次第。勉強させたい親はさせる、ということなのです。こういうところが、さすが個人主義の国ですね(笑)。

で、我が家はというと、算数と国語のドリル、読書、トランペットの練習は毎日+今年こそは日本語!と息巻いていたのですが--結局、続いたのは先生から指示があったトランペットと何とか算数、時々国語…。息子は昔から宿題でない限りものすごく嫌がるので、小さな頃は自宅学習バトルで本当に大変でした(だって、息子の小学校の宿題って毎金曜日にぽっちり出るだけ。熱心な家庭では早くから家庭教師(塾というものがない)をつけるため、できる子とできない子の差がどんどん開くのでした)。

そんな息子が自ら進んでやったのが”料理”でした。

イギリスのセカンダリースクールでは、調理実習の時間は小グループ制です。ガス台が人数分あるので、各自がひとりで課題の料理を作ることが基本。息子が最初に作って持ち帰ったのがトマトスープだったんですが、これが仲々のお味。先生に褒められたとかで、料理に興味を持ったようでした。持ち帰った料理を家族に味見させて、その感想をPCでチャートグラフにまとめ、レシピを書き込むのが宿題です。

感覚過敏がある息子は、嗅覚や味覚が鋭くなかなかのグルメです。パンやビスケットなど味の違いが判るので、コピー商品を買うとすぐバレてしまう。「これ○○のビスケットじゃない」と怒られ、しかも食べないので、最後は私が食べるか、捨てるか…。乳製品がちょっとあやしい時など、息子に訊けば判るのでとっても便利です。

この夏に挑戦した料理は、

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初めてのオムレツ

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 パンケーキ(You-Tubeを見ながら)

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今大人気のメレンゲ菓子

9月の初旬、まだ夏休み中の息子の友達を呼んで、庭でバーベキューを楽しみました。息子がバーベキューを担当してくれたので、私はひとりだけ来たママ友とお喋り。夏の終わりの良い想い出となりました。

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 子ども達が好んで食べたのはベーコンを巻いたミニソーセージ

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翌日、残ったチキンと野菜の串で今年最後のバーベキュー

イギリス人の女の子は料理をしない子が多いし、ひとり暮らしでも大丈夫なように、一人前の料理男子に育てたいと思っています(笑)。

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さらば夏の光(2)

イギリスには週単位で借りられるコテッジが各地に点在しています。カントリーライフへの憧れや、暮す感覚の旅を楽しめるという理由で、コテッジホリデーは大人気。家族や友達同士でいったり、グループで一緒に大き目のファームハウスを借りて、わいわい騒いだり。

レストランの食事に飽きたらキッチンで手料理を、出かけるのに疲れたら自宅のように寛げるのが魅力。食器や調理器具はもちろん、冷蔵庫や洗濯機、TVなどの家電は大体揃っています。ただ、wifi の普及はまだまだで、辺鄙な田舎だと携帯の電波が届かないことも…。

カントリーサイドの観光スポットは交通の便が悪いので、コテッジホリデーには車が必需品です。私達は今回北ウェールズからリバプール周辺まで足を延ばしました。

ここからは、<北ウェールズのコテッジホリデー>の続きです。

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コンウィ渓谷にあるウェールズ屈指のイギリス庭園、ボドナントガーデン(Bodnant Garden)。夏休みのイベントで池の生き物をすくって観察する親子連れがいっぱい。覗いてみたら、お玉杓子と一緒に小さなヒルが!

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不思議な治癒力を持つといわれる、聖ウィニフレッドの井戸(St Winefride’s Well)。7世紀から巡礼の地として知られ、今も身体の不自由な信者が訪れています。澄んだ水が滾々と湧き出ていて厳かな雰囲気でした。この井戸にちなんで、町がHolywellと名づけられたそう

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リバプールといえば、やっぱりBeatles。ここはジョンレノンが少年時代に住んでいたミミ伯母さんの家です。ポールやジョージの家と比べて大きく、裕福な地区にあるものの、両親と暮らせず反抗的な少年だったそう

IMG_2136ウールトン地区にあるセントピーターズ教会は、ジョンとポールが初めて出会った場所。墓地には実在のエリナーリグビーのお墓があり、ファンの聖地となっていますが、歌詞のキャラクターとは無関係なんだとか IMG_2142ビートルズの歴史には見向きもせず、ひたすら墓地で見つけたブラックベリーを食べる父子…

そして、イギリスの代表的な食べ物といえば、

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ご存知フィッシュ&チップス。これで小盛です

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と、カレー

かつて植民地だったインドからの移民により、インド料理がしっかり定着。イギリスでテイクアウトといえば、中華料理とインド料理が定番なんです

ホリデー中に出逢った美味しいデザートたちIMG_1953 IMG_2049IMG_2047IMG_2092そして、今は懐かしい急勾配の坂道と海のある風景。また機会があったら行きたいです

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さらば夏の光(1)

今年のイギリスの夏は、ここ5年間で最も夏らしい天候でした。

昨年までは、子どもが夏休みに入った途端に天気が崩れ、小雨がパラつくさえない日が続くことが多かったんです。そして、皮肉なことに9月に学校が始まると晴れるという…。

今年は夏休み中それほど雨が降らず、特に最後の3週間は晴天が続いて真夏日(最高気温25度以上)も多くありました。自国の天気があてにならないので、イギリス人は夏を求めてギリシャやスペインに行くんですが、今年は国内でも大当たりだったと思います。

夏休みのレポートをしようと思っていたのに、何やら忙しくなってしまい、いつの間にか夏が終わってしまいました…。先週の木曜日の夕方庭で最後のバーベキューをした後、一気に寒くなって今週は秋雨ばかり。

過ぎ去った夏を偲んで、すこしばかり夏の想い出を。

ロンドンの魅力のひとつは、市内に大きな公園がいくつもあってロンドナーの憩いの場となっていること。8つの王立公園を含め、各地区に公園やグリーンスペースがあります。

私の家の近辺にも小さめの公園が3つあるんですが、時間がある時は車でハムステッドヒースに出かけます。320ヘクタールの広大な森林公園に、歴史的な大邸宅ケンウッドハウス(現在工事中)、野外コンサート場、水泳のできる池などが点在。パーラメントヒルからはロンドンを一望でき、素敵なカフェもあります。

誰でも豊かな緑の中でゆったり寛げる--そんな贅沢な公共の空間や施設をヴィクトリア時代から維持・管理し続けているところが、イギリスという国の豊かさであり財産だと思います。世界に知られるギャラリーや博物館も無料のところが多いんです。

8月の終わり、息子と友だちを連れてハムステッドヒース北部にあるケンウッドに行った時の写真です。

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森の入口で(左が息子です)

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広い芝地で凧揚げ

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緑の中のカフェ

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カフェの近くに咲いていたイングリッシュローズ

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コテッジガーデンの緑が爽やか

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愛犬家の社交場でもあります。写真の巨大犬が2匹も走っていてビックリ

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古びたベンチに座ってゆったり

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抑制的な気質(2)

大人になると、真に感動することが少なくなりますが、その代わりそれほと心乱れることなく生活できるようになりますよね--これって、感性が鈍化してオジサン化、オバサン化するってことかな(笑)…。人間も長く生きていると精神的にタフになって、「まっ、いいか」といい加減に済ませることができるようになり、傷ついても立ち直りが速くなってくるのではないかと思います。

この「いい加減さ」というのはバランス感覚の問題で、何でも真剣に考えていたら世の中すごく生き難くなってしまいますよね。生きていくうえで、このバランス感覚というのがすごく大事になってくるのではないでしょうか。

「不安になりやすい子ども=抑制的な気質」と考えると、何事にも慣れるのに時間がかかり、そのために自己評価が低くなる傾向にあると考えられます。傷つきやすい子どもが弱肉強食の社会を生きぬくためのバランス感覚を養うには、やはり社会的な経験値をあげる必要があるような気がします。また、社会的な場面では常に不安がついてまわるので、得意分野で成功体験を積み重ねて自信をつけ、自己評価をあげられるよう、できる限り支援したいものです。

が、これは口で言うほど簡単じゃないですよね。周りの環境や社会のあり方にも、かなり左右されますし…。とにかく、外に出たがらず(家が好き)、集団で行動することを好まない子どもの場合、無理に外に引っ張り出して集団行動をさせてもストレスがたまるだろうし。

まずは、家庭内が楽しくて心休まる場所であることが大切。ですが、心にそう銘じているつもりでも、常にそういう訳にもいかず…時に「マミー、怒らないで!」と子どもに言われて反省する日々なのでした。

ちなみに、私自身もかつてはかなりの心配性でした。友達のひと言を気に病んで、ものすごーく落ち込んだり(当の友人は全然気にしてないことが多い)、学校での発表の前は不安で眠れなかったり…。これは今でもそうですが、神経質な方なので、見知らぬところではなかなか寝つけません。小学校の修学旅行では、確か2泊3日の2晩とも全く眠れず、帰りのバスの中で爆睡。帰宅して布団に入ってから次の日の午後までこんこんと眠り続けた想い出があります(笑)。

自分の気質は幼い頃からそれほど変わったとは思えません。今も神経質なところがあり、傷つきやすい方だと思いますが、昔と比べると立ち直りは随分速くなりました。やはり体験を積み重ねることで、不安をコントロールできるようになったからなんでしょうか。(独り言のようなエントリーですみません)

 

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抑制的な気質(1)

<遺伝的な要因-行動抑制的な気質>のエントリーで、マーキュリー2世さんにコメントをいただきました。場面緘黙と抑制気質の関連については、まだ詳しい調査・研究が行なわれておらず、確実なことはまだ解っていません。ただ、抑制的な気質が緘黙と大きく関わってていることは確かだと思います。

マーキュリー2世さんとやり取りした際に、ケイガンとアシスタント達が行ってきた研究を要約したNYタイムズの記事を見つけました。”Understanding the Anxious Mind(心配性を理解する)”と題され、不安を感じやすい子どもについて、成長にともなう気質の変化について、興味深いことがたくさん書かれています。コメントに書いたことをコピペ(少々変更あり)しますね。

http://www.nytimes.com/2009/10/04/magazine/04anxiety-t.html?pagewanted=all&_r=0

以下は幼い頃不安を感じやすかった人たちは、成人してからも不安への感受性はそれ程変わらないということが記述されている部分です。

People with nervous temperament don’t usually get off so easily, Kagan and his colleagues have found. There exists a kind of sub-rosa anxiety, a secret stash of worries that continue to plague a subset of high-reactive people no matter how well they function outwardly. They cannot quite outrun their own natures: consciously or unconsciously, they remain the same uneasy people they were when they were little.

ケイガンと同僚たちは、神経質な気質を持つ人々は、通常そう簡単には変わらないということを発見した。たとえ外向きにどんなに上手く機能していても、高反応グループの部分集合を苦しめ続ける心配の隠し場所、秘めた不安といったものが存在する。彼らは自分の性質を塗り替えることはできない。意識していても、いなくても、幼い頃心配性だった人たちは大人になってもそのまま変わることはない。

The children tended to get a better grip on their fearfulness as they got older. By adolescence, the rate of anxiety in Kagan’s study subjects declined overall, including in the high-risk group. At 15, about two-thirds of those who had been high-reactors in infancy behaved pretty much like everybody else.

子ども達は成長するにつれ、恐怖感への理解を深める傾向にあった。ケイガンの研究対象だった子ども達の不安度は、ハイリスクのグループを含め、青春期までに全体的な低下を示した。幼児期に高反応を示した子どもの3分の2程度は、15歳になると、ほとんど皆と変わらないようにふるまった。

Most of the high-reactive kids in Kagan’s study did well in adolescence, getting good grades, going to parties, making friends. Scratch the surface, though, and many of them — probably most of them — were buckets of nerves.

ケイガンの研究で高反応を示した子どもの多くは、青春期になると、良い成績を取り、パーティに参加し、友達を作るなど、よくやっていた。しかし、表面を剥がしてみると、(多分彼らのほとんどは)とても神経質だった。

“They don’t like it, but they’ve accepted the fact that they’re just tense people.” Invoking Jungian terminology, he called it the difference between persona (the outer-directed personality) and anima (the inner-directed thoughts and feelings). The persona can be controlled, but the anima often cannot.

「例え好ましくなくても、彼らは自分たちが神経質な人間であるという事実を受け入れていた」。ユングの用語を使って、ケイガンはそれをペルソナ(外向けの個性)とアニマ(内向けの思考と感情)の違いと呼んだ。ペルソナ(仮面)はコントロールすることができるが、往々にしてアニマ(心)はできない。

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この夏13歳になった息子を見ていると、本当にそうだなと感じます。先日、仲の良いグループ(6人)でボーリングに行ったのですが、楽しんで帰ってきても、集団での対人関係や騒音などに対するストレスや不安は未だ健在です。自分の中で不安をコントロールするのが上手くなっただけで、繊細な部分は変わってないようです。(ちなみに、うちの子は私に不安を打ち明けることで、不安を減少させてるところがあります)。

通常、人は成長するにつれて、子どもの頃のように心底ドキドキしたり、不安になったり、心ときめいたりすることが少なくなってきます。慣れもあるでしょうし、経験の積み重ねにより、「新しい体験・人・場所」というものがある程度予測可能となり、心の準備ができるからもあると思います。

抑制的な気質の人は、慣れることも、不安をコントロールすることも、普通の人より時間がかかるし、人間関係のストレスも大きいのでしょう。

恋する度に、初恋の時と同じような感情になると想像してみてください。毎回ジェットコースターに乗ってるようで、かなり疲れるのではないでしょうか?不安の強い人は、ジェットコースターとまではいかなくても、感情の波のふり幅が大きいのかもしれません。

 

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誕生後の1週間

息子が生まれた病院の産科病棟は4人部屋でした。イギリスでは母児同室が普通で、ベッドの枕元にベビーコットが置かれ、母親と赤ちゃんはひと時も離れることはありません。

ということは、誰かの赤ちゃんが夜泣きすると全員起こされてしまう訳です。また運が悪いと、皆が寝静まった後に出産したばかりの母児が部屋に運ばれてくることも…。

すったもんだの末にやっと息子が生まれ、しばし安堵の時間。夫が帰宅し、さあ眠ろうと思ってもなかなか寝付けず、ウトウトすると誰かの赤ちゃんの泣き声で目が覚める、の繰り返し。我が子はというと、ほとんど泣きもせずスヤスヤ眠っていました。

真夜中、「ちゃんと息してるかな?」とコットをのぞいてみたら、息子がぱっちりと目を開けて静かに空を見つめているんです。なんだか思索に耽っているように見え、「えっ、新生児ってこうなの?この子、宇宙人かも…」と、ビビった私でした。

翌朝の朝食は、赤ちゃんを連れて別室へ行かねばなりませんでした。「こんなの日本じゃ考えられない」と思いつつ、キャスター付のコットを押し、自分で紅茶を注ぎ、パンを選び…。トロトロ動いてる私に比べ、片手で赤ちゃんを抱っこしながら余裕で食べてる人もいて、「みんなスゴイ」と感心することしきり。

何人かのママさんから”Your baby is beautiful!”と、嬉しいコメントが。イギリス人とのハーフの息子は、眼が大きくて眉毛がくっきりしていました(現在、ゲジゲジです)。でも、生まれたては「これぞハーフ」という顔だったのに、半月ほどするとしっかり日本の子に(笑)…。

どういう訳か、外人の子どもって生まれたばかりはオヤジ顔が多いようです(ジョージ王子を見てそう思った方も多いのでは?)。それが、数週間すると驚くほど可愛くなるんですよね。

その日の午前中は、母乳指導やら沐浴指導やらがあり、その後同室の皆さんは次々と退院していきました。が、私はどうも体調が戻らないので、もう一晩お世話になることに。

翌日なんとか退院。何だかふわふわするなあと思っていたら、貧血が酷くて3日後に輸血のため緊急入院となったのでした…。息子はというと、新生児黄疸が出てしまい、1週間くらいはずっと眠ってばかり--あまり泣かず、新米母にとってはすごく楽な赤ちゃんでした。

黄疸が治った途端にそれがひっくり返るなんて、思いもよらなかったのです。

 

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誕生

息子は2000年8月に北ロンドンの病院にて誕生。3050gのミレニアムベイビーでした。

高齢初産だったものの、妊娠中は悪阻もなく、血液検査やスキャンでも全く異常なしで、仕事もずっと続けていました。この分なら出産も問題ないだろうとタカを括っていたのです。

が、現実は甘くない。病院の誤診断から始まり、一旦入院したのに家に返され、真夜中に再入院という、ドタバタ喜劇のような序章つきでした。

分娩室に入ってからは微弱陣痛でお産がなかなか進まず、陣痛促進剤を使い、人口破水もしました。が、それでもまだまだ生まれそうにない。

あまりに痛みが酷く、睡眠不足も手伝って体力が限界に近かったので、途中でエピデュラル(硬膜外麻酔)を打ってもらうことに。無痛分娩には反対だったんですが、「あ~、こんなに楽になるなんて夢みたい!」と、医学の進歩に心から感謝したのでした。

結局2本のエピデュラルを打ち、もうすぐ生まれるという段階で、赤ちゃんの回旋異常と心拍数低下の心配を告げられました。「自然分娩が駄目だったら、即帝王切開にします」といわれ、急遽手術室に移動。

手術台の上はシアターライトが煌々と輝き、オペ担当医の他に、担当婦人科医と部下らしき人、麻酔技師やら助産婦やら大勢のスタッフが…。オマケに教育病院だったので、医学生までいました。

しかし、恥ずかしがっている場合じゃない。「ここで産まなかったらお腹を切られる!」と切実な恐怖に襲われ、絶対に自力で産むぞと固く決意。でも、極度に緊張している私の耳に聞こえてきたのは、部屋の隅で準備しているスペシャリストたちの、「今週末テニス行く?」という呑気な会話でした~。

付き添っていた夫はというと、いつの間にか青い手術着と帽子を身につけ、そして何故かサンダル履き!顔は真剣なんだけど、何かちぐはぐ(笑)。

エピデュラルの影響で陣痛が感知できないため、いきむタイミングが解らず、助産婦さんに「波が来たら教えて!」とお願いし、いざ出陣。ほどなくして、息子は鉗子分娩で無事産まれてきてくれました。分娩室に入ってから約16時間、その前のバタバタを計算に入れると、約30時間のドラマでした。

私も辛かったけれど、何だかトラウマになるような誕生だったので、息子にはストレスが大きかったと思います。もしこの体験が息子の気質に影響を与えてしまったとしたら、母親としては大変辛いところです。

 

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時代がもたらす社会的要因(その2)

地方コミュニティの崩壊や時代の変化によって希薄になった人間関係に加え、携帯電話やPCの普及により、相手の顔を見ながら行うコミュニケーションがさらに減少しています。この傾向は、抑制的気質の子どもに限らず、子どもにも大人にも悪影響を及ぼしているように思います。

日本でもそうだと思いますが、イギリスの学校では筆記テストの点数だけが評価の基準ではありません。自分の考えや意見をしっかり伝え、授業やクラスに貢献できるかどうかも成績に響いてきます。特に、国語では「話す」技能を問われます。

緘黙児や大人しい子には、かなり辛い傾向ですね…。

私は昨年冬から、『発音・言語・コミュニケーションの困難を持つ子どもの支援(Supporting Children with Speech, Language and Communication Needs)』という短期コースを受講していました。イギリスではここ5年ほど「話し言葉」の重要性が叫ばれていて、文部科学省が様々な支援プログラムをバックアップしています。

子どもの発音・言語・コミュニケーションのスキルは、他者との交流により、0歳から18歳くらいまで、特定のパターンで発達していきます。これはどの言語でも同じです。

「見て、聞いて、感じて、知る」

「知った言葉を、自分で使ってみて、人の反応を見ながら正しい使い方を覚える」

これを積み重ねて、少しずつ自信をつけ、話し言葉だけでなく社交技術や社会性など、人生において大切なスキルを身につけていくのです。

だから、子どもに一番近い保護者、特にお母さんが子どもに話しかけることはものすごく大切です。携帯やタブレットで息抜きタイムも必要だけど、まだ話ができない子どもだって、お母さんが誰かに挨拶したり、話したりするのを見て、聞いて、感じて、常に学んでいるのです。言葉だけでなく、ジェスチャーやボディランゲージ、顔の表情といった非言語コミュニケーションも。

重要なのは、これらのスキルが、子どもの学習・ふるまい・社会性の発達・情緒の発達に大きな影響を与えるということ。忙しい毎日ですが、家族が一緒に過ごす時間を多くするなど、なるべく子どもと話す機会を多く作りたいものですね。

余談になりますが、バーチャルでの交流もいまや必要不可欠ですよね。書くことで自分の考えをまとめられるなど、利点もあると思いますが、顔が見えないと相手の気持ちや場の雰囲気を察しづらいもの。ネットの匿名性も災いして、エチケット違反も増えてきているような気がします。

 

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