もうすでに4月…この春休み(私立なので月曜日からイースターホリデーに突入しました)はやるべきことが山積みになっているのですが、遅々として進んでいません。 まだプライベートと受験の生徒さんの授業は残っているし、予期せず日本から友達がやってくるし、快晴の日が続くので家の中ばかりにいたくないし…。
陽射しも暖かなロンドンは、まさに春爛漫!色々な花が咲き乱れて綺麗です。ハムステッドヒースでは森のアネモネが満開でした
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さて、クレア・キャロルさんの対談の続きです。
ASD(自閉症スペクトラム障害)とSM(場面緘黙)併存ケースの治療法
これはSMのみの場合も同じですが、話せないことだけでなく、児童やティーンの全体像を把握してからスモールステップを計画すること。担任、TA、そして友だちを含めた小さなグループを作り、子どもの興味に沿ったスモールステップを始めます。
馬が好きな女の子の例
SM治療のトレーニングを積んだTAがSM児と友人2人を含むポニークラブを作成。TAを媒介にして、馬に関する話題で一緒にゲームをしています。女児は話し始めたものの、TAが返答をシェイピング(shaping法: 最初は吐く息やささやき声から始め、単語から短文、長文、自発的な言葉へと発話をより高度なものへと導く方法)する必要があるそう。
場面緘黙は人間関係によっても起こるため、まず人間関係を築く必要があります。研修を受けた支援スタッフを配置して、まず人への不安を和らげることから始めます。1対1か、それとも小グループか、その子どもに適切なプログラムを作成することが大切。
年齢が上のティーンの場合は、通常のケースと同様に、支援スタッフと1対1、もしくは信頼できる小グループで町に出かけてカフェで注文してみる、というような社会的なチャレンジに広げていくといいでしょう。
クレアさんは既に治療プログラムを開始している支援者達から相談を受けることが多く、問題解決の方法についてこうアドバイスしています。
「よく相談されるのは、子どもを取り巻く大人全員が研修を受けていないために起こる問題。ASD児はコミュニケーションロード(communication load :コミュニケーション負荷)に非常に敏感なため、ちょとした不注意な言葉で深く傷ついてしまったり、声のトーンだけで影響を受ける子もいたりするので要注意です」
すぐに治療に取り掛かるより、まず関係者が場面緘黙について学ぶこと。スモールステップで停滞してしまうケースが多いのは、躓いたところで支援者が困惑して止まってしまうから。ステップを更に細かくする自信がないため、同じステップを何度も繰り返して子どもの自信も削ってしまう結果に。また、話すことばかり優先して、人間関係を充分に育てることをしないのも問題。ASD児の場合は、特に信頼関係が発話を招くことが多いので、機械的にスモールステップを続けるのでなく、一歩下がって何故上手くいかないのか考えてみる必要があります。ASD児は好きなもの・ことに関しては不安が少ないため、本人の興味を利用すると良いでしょう。
緘動(身体がフリーズして動けない)になるケース
あるASD児はSMが表面化した際、SM以上の問題があることが明らかでした。話せないだけでなく、置かれた環境に完全に圧倒されて身体がフリーズ状態に。ゼスチャーなどの非言語コミュニケーションも取れず、ペンを持つこともできず、トイレに行くことさえできなかったのです。こういうケースは、まず環境から変える必要があります。支援プログラムの中には、普段見慣れない支援者が学校を訪問して週複数回介入するというものもありますが、これでは信頼関係を築くのは困難です。
一般的に、中学生が学校のトイレを使えないとは思わないものです。でも、子どもが何に対して不安を感じているか、明確にすることが必須です。
また、SM児は幅広いコミュニケーションの問題を抱えている傾向が強いことも忘れずに。例えば、書字ができない、長い返答ができない・書けない、自分の意見をまとめることができないといった言語の問題もあります。
学校側は「昼休みに作文のグループがあるから、行ってみて」と勧めるかもしれません。こういう場合、ASD児にはもっと丁寧な説明や声掛けが必要です。例えば、「昼休みに作文のグループがあるから、明日一緒に行くからね。試してみて楽しかったら続けよう」というふうに。SM児は自発的に何かをすることが苦手なため、信頼できる大人や友だちが付き添うことで不安を軽減できます。子どもが自分で選べるように支援しましょう。
またまた長くなったので、次回に続きます。
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