場面緘黙と他の不安障害の併存 SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その4)

新年、明けましておめでとうございます。あっという間にクリスマスが終わり、ついに2025年がやってきました。イギリスは昨夜から嵐の警報予報が出ていて、朝から雨模様。例年の様に散歩にでかけることができず、その時間を活用してやっとブログに着手しました。今年もよろしくお付き合いください。

   我が家では今年もナンチャッテおせち料理とお雑煮で元旦を祝いました。子供の頃は元日の朝、亡父が「まめでくりくりかきとるように」と言い、家族で甘納豆、栗、干し柿を食べたものでした。息子も日本の風習を覚えていてくれたらいいなと願っています。

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ミカエラ・サブルーノ(Michaela Sabruno )さんは、3 歳の頃から場面緘黙症に悩まされてきました。でも、自分が 緘黙であることに気づいたのは、ほんの数年前だったといいます。これまでの道のりには多くの浮き沈みがありましたが、自分自身に挑戦し続けて困難な時期を乗り越え、今では同じ立場にある人達を助ける道に進んでいます。

      自作の絵本『何にでもなれる(You Can Bee “Anything”)』を持つミカエラ・サブルーノ(Michaela Sabruno )さん

まずはじめに、「場面緘黙の子どもは、緘黙だけでなく他の症状も併発していることがあります。発話だけでなく子ども全体を見てから対策を決めて欲しい」と強調。

ティーンの時期は誰でも大変だけど、私の場合は家庭にも問題がありました。学校では友だちもあまりいなくて、自分に全く自信がなくて…。誰かに批判されたり、拒絶されるのが嫌で、できそうなことにもチャレンジしませんでした。強い不安が、やってみたいことからいつも自分を引き止めていたんです。それは大好きなスポーツに対しても同じでした。

10年生の頃に転校して、その高校では勇気を出してスポーツを始めてみたんです。放課後のクラブは、自分のアイデンティテイを確立できる場所でもあったから。チームスポーツのクラブに入ってみて、人間関係でも色々な困難に直面しました。いつも不安に付き纏われ、色々な機会を逃してしまったと思っています。

「失敗したくない」「失敗してしまった」という恐怖心が大きくて、どうやってその状況から逃れていいのか判らず、失敗を繰り返していた様に思います。動揺して良くない選択をしてしまいました。

記憶に焼き付いているのは、教室で後の席の子たちが私のこと(学校で話せないこと)をうちの両親に告げ口したら面白いと言っていたこと…。何も言い返すことができなくて、絶望しました。

高校では不安と鬱が増大して、最終的にはクラブも辞めました。話せないから友だちもできず、虐めにもあったんです…。

ミカエラさんは高校時代から20代までメンタルヘルスが悪化してしまい、その結果として鬱病や拒食症(anorexia)、強迫性障害(obsessive-compulsive disorder: OCD)も発症してしまったといいます。

鬱病に関しては、「毎年どんどん無感情になっていく感じだったんだけど、自分では鬱だという自覚はなかったの」と振り返ります。OCDの症状が酷くなり、自分が鬱病なんだと気づいて、ようやく自分の中で「何とかしなくちゃ」という気持ちが生まれてきたんです。

ある日「私って一体何なんだろう?」と内省し、自分を変える選択をしました。心の深いところで「自分を変えられる」という強い気持ちがあるのに気付いたんです。

その「選択」とは、「鬱病や他の疾患を克服する」ことではなく、自分がどういう風に感じているか・見ているかを理解し、その見方を変えること・どう対処すればいいかのスキルを身につけることでした。

「誰もうつ病から逃れることはできません。それは来たり、去ったりするもの。いつ起こるか分からないもの。それに備えて、対処するスキルを身に着けておくことが大切なんです。人は誰でもそれぞれ違う。欠点に目を向けるのではなく、自分の強みに焦点を当てるべきだと思うんです」

私は多くの人に場面緘黙について知って欲しいと思っています。黙っていても心の中で色々な葛藤があることを理解してもらうために、映画『インサイドヘッド』はとても参考になるはず。

(注:  第88回アカデミー賞長編アニメーション賞受賞。11歳の少女ライリーの頭の中に存在する「ヨロコビ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」「カナシミ」の5つの感情が、ライリーを幸せにするために奮闘する物語)

現在ミカエラさんは2人の子どもを持つ母親です。2023年に蜂を主人公にした絵本『何にでもなれる(You Can Bee “Anything”)』を出版。緘黙のため学校で話すことができず、小学生の頃から書くことで自分の考えや感情を表現してきた彼女。その成果のひとつといえますね。

場面緘黙の人は誰でも併存する他の不安障害を持っている訳ではありません。でも、場面緘黙自体が不安障害のひとつであると考えると、その可能性が高まるのも頷けます。不安障害に対処するにはCBT(認知行動療法)のエクスポージャー法が有効とされているので、対処法として身につけることが重要になってくると思います。

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