緘黙児が持つ特性や症状 SM H.E.L.P. 2024年10月サミット(その1)

イギリスでは先週末に夏時間から冬時間に切り替わり、時計を1時間遅らせました。お陰で朝起きる時は比較的明るいのですが、夕方は4時すぎるとつるべ落とし的に暗くなってしまいます。あ~っ、また長くて暗いイギリスの冬が始まるんだなと思うと、ちょっと憂鬱…。でも、今のところ秋晴れの日もあるし、紅葉が美しい季節です。

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10月は場面緘黙の啓蒙月間です。アメリカのケリー・メルホーンさんが毎年恒例のSM H.E.L.P. 10月サミットを開催。今年はASD(自閉症スペクタル)との併存と場面緘黙に付随して起こる可能性がある他の不安障害に焦点を当て、専門家を含む8名のゲストを迎えてケリーさんとの対談形式で行われました。

講演者 1 :ケリー・メルホーン

SM H.E.L.P.の主催者。場面緘黙の診断を持つ子どもの母親で、緘黙の子どもやティーンの治療の専門機関に公認された行動分析士補でもある。過去 6 年の間 SM について多くのことを学び、情報を発信してきた。

場面緘黙の子どもが持つ特性や症状

娘の診断が下りたのは4歳半のことですが、もっと小さい頃から兆候がありました。現在は小学6年生になり(注: 米の学校システムは日本と異なります)、治療を続けて6年。幼少の頃は話せないことの他に下記の特性・症状が目立ちました。

  • 質問に応答することが困難
  • 自発的に会話をすることが困難
  • 非言語コミュニケーションをとることが困難
  • 身体がフリーズしたり、動くことも難しくなったりする
  • 不安な時、対応が遅い
  • 通常のアイコンタクトが困難

これらは話せない場所(学校など)のみで起き、安心できる場所(家庭)では起こりませんでした。従って、不安からくる症状であることは明確。でも、年齢が上がるにつれて、これらの特性が徐々に変化していき、ちょっと挑戦的なものになっていったのです。

娘は頭痛や腹痛を訴えることが多くなり、自らの感情をコントロールすることが難しいようでした。特に、学校から帰宅した後や夜寝る前に癇癪を起こすことが増えていきました。

そこで、2019年に場面緘黙協会のコンファレンスに参加し、緘黙の背景にある不安が引き起こす特性について更に学びました。

娘に当てはまったのは、

  • 人や物事をコントロールしようとする
  •  反抗的な態度
  •  扇動的な態度
  • 怒りっぽい/ 癇癪を起こす
  • 完全主義の傾向

娘に当てはまらなかったものは、

  • 集中することが困難
  •  睡眠の乱れ
  • 公衆の前で食べることやトイレに行くことが困難

これらの症状や特性に悩まされている保護者の皆さんは安心して下さい。不安が要因となって起こるのです。私自身、そのことを理解するのに随分時間がかかりましたが、それが解ったとき安心でき、「私はダメな母親なんだ」と自分を責めるのを止めることができました。

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みく注:

ケリーさんのリストには感覚過敏が入っていませんが、こうやってまとめてみると解りやすいですね。腹痛などの身体症状が出る、感情のコントロールが難しい、登校渋りなどもリストに入るかも。私も息子が緘黙だった頃(4歳半~10歳頃まで)、様々な特性や症状に悩まされたものです。

「自分の育て方が悪いのではないか?」 保護者はどうしてもそう思ってしまいがち。情報共有・交換することで、自分だけではないと安心でき、解決策も見つかるかもしれません。そういう意味でも、情報を共有できる場所があることはとても大切だと思います。

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ヨークシャーの夏休み(その3) ハワード城と高架橋

もう10月も半分を過ぎてしまいましたね。イギリスでは日がどんどん短くなって、今月27日には夏時間から冬時間に変わります。天気が悪い日が続くので、お日様が顔を出すとほっとします。これからもっと暗くなると思うと、ちょっと憂鬱…。

さて、またまたヨークシャーの夏休みの続きです。

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カースルハワード(Castle Haward)

家族旅行の5日目は、朝早めにアパートを出て車でヨーク郊外へ。数多くのTVドラマや映画のロケ地になっているカースルハワードは、イギリスでも稀にみるバロック様式の壮麗なカントリーハウス。18世紀初頭に3代目カーライル伯爵、チャールズ・ハワード氏が建て、その後10世代に渡って受け継がれてきた私邸です。1940年に火災があり、現在の建物の大部分は20世紀に復元されたものだとか。ちなみに「カースル(城)」と名がついていますが、軍事的な機能はなく厳密には城ではありません。 

現地で北イングランドに住む友だちと待ち合わせ、まずは屋敷内から見学。今も13代目カーライル伯爵の住まいとなっているため、公開されているのは一部のみ。それでも充分広くて見どころ満載!特に、正面玄関にあるグレートホールのドームは圧巻(写真左)で、壁からドームまでギリシア神話をモチーフにした天井画が見事。彫像がずらりと並ぶ大理石の回廊や、豪華な調度品を設えた各部屋から、当時の貴族の暮らしが見えてきます。でも、こんなに広いと冬はめっちゃ寒いだろうな…といらぬ心配をしてしまう私でした。

8800エーカー(約36平方k㎡)の広大な敷地内には、庭園、湖、プレイグランド、森林、寺院、ボートハウス、農地などが。移動の手段として、トラクターが牽引するカラフルなケリーカーが走っています。1850年に造られたアトラスの大噴水が見事なフォーマルガーデン、壁に囲まれたウォールガーデンに加え、ガーデンセンターも。カフェやギフトショップ、地元の食材を売るファームハウスなど、設備が充実しています。

この後、この地方の食の町と言われるマルトン(Malton)へ。ヨークシャーのケーキやクッキーなどを買い込み、カフェでコーヒータイムを楽しみました。

ナーレスボロ(Knaresborough)

翌日は、ヨークの街を後にして西方へ。ハロゲートの東側に位置するナーレスボロ(Knaresborough)という町に向かいました。この日の午後、リーズ北部に住む友達夫婦の家を訪ねることになっていて、その友だちが是非立ち寄るよう勧めてくれたのです。渓谷にかかる高架橋と田舎町の美しい景色が有名とのことで、すごく楽しみでした。

まずは、渓谷の崖の上に建つナーレスボロ城の城趾を見学。崖側に歩いていくと、町のシンボルとなっている高架橋を見下ろす絶景が目の前に!絵葉書のように美しく、思わず激写してしまいました(^_^;) そこから急な傾斜の路を下ってネッド川の畔にたどり着き、川岸のパブでランチタイム。おとぎ話のような風景にすっかり満足し、その後また崖路を登って、駐車場まで戻ったのでした。

初めて訪ねたリーズの友人宅は石造りで、廃材を再生利用した趣味の良い室内や庭造りに感心することしきり。ご主人自ら屋根裏部屋を改装、今は地下室を改造中とのこと。庭で鶏を飼っているとは聞いていたのですが、「えっ、レグホン?!」と驚くほど立派な鶏が!ご主人が作ったという鶏小屋も大きくて立派でした。翌日カナダに出発とのことで、卵が余っているからとその場でバナナケーキを焼いてくれて、お土産に卵を1ダースも!夕食のデザートの苺とバナナケーキ、すごく美味でした。

車で友人宅に行く途中パラパラと雨が降りましたが、夏の北イングランドでは珍しく雨に降られたのはこの日のみ。それでも、一度も傘を使わずにすんだのでした。

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ヨークシャーの夏休み(その2)ヨークシャー彫刻公園とヨークの街

あっという間に10月に突入してしまいました。雨混じりの曇り空が続く中、週2回ほど秋晴れの日がやってきて、樹木の色もだんだん変わりつつあります。今年は冷夏だったから、紅葉は少ないかも…。

さて、駆け足でヨークシャーでの夏休みの続きです。

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ヨークシャー彫刻公園

シェフィールドの次の拠点は薔薇戦争(1455~1485年)で有名なヨークの街。予約しておいたアパートに行く途中、今回の旅行のハイライトのひとつであるヨークシャー彫刻公園(Yorkshire Sculpture Park)に立ち寄りました。この春訪れた箱根の「彫刻の森」では雨に降られたので、リベンジの好機会!運良く花曇りから夏の陽射しがこぼれはじめ、暑いくらいの気候になってラッキー。

なのに、なのに、夫が前夜飲みすぎて体調を崩してしまい、少し歩いただけでダウン。ひとりで車に戻ってそのまま寝込んでしまいした(^_^;) 仕方なく息子と二人で、500エーカー(約2平方km)の広大な敷地を散策することに…。

緑あふれる敷地内には林、湖、そして、羊や牛のいる牧草地があって、自然の中に90の彫刻が点在しています。ビジターセンターには広いカフェやショップ、特別展示会を行う地下ギャラリーなどがあり、私達が行った時はイギリス生まれのインド人女性作家、バールティ・ケールの『錬金術』展を開催中でした(下の写真右)。敷地内(?)には、歴史的な佇まいのホテルも。もし次に行く機会があったら、お弁当持参で1日かけて探索したいです。

ヨーク市内観光

       

ヨークシャー北部に位置するヨークは、紀元前71年に古代ローマ帝国が創設した要塞都市。城壁に囲まれた旧市内には古い街並みが残り、街のシンボルであるゴシック様式のヨークミンスター(大聖堂)が聳え立っています。大聖堂をMinsterと呼ぶのは珍しく、これは格式の高さを表すそう。

旧市街の外にあるアパートから城壁まで歩き、城壁の階段を登って城壁の上の歩道を通って城門の入口へ。旧市内の歴史的な街並みを楽しみながら、13世紀に建てられた大聖堂まで歩きました。比較すると地味なのですが(笑)、2年前にノルマンディー(仏)のルーアンで観たゴシックの大聖堂を思い出しました。

荘厳な雰囲気の教会内を見学した後は、我が家恒例となっている塔登りに挑戦。この塔の螺旋階段はとにかく狭かった!人ひとりしか歩けない幅なので、前の人が立ち止まると、そこで詰まってしまいます。ユニークなのは、まず100段登ったところで一旦外に出て屋根伝いに歩き、そこから更に175段登って塔の頂上に出ること。頂上では四方をぐるりと周って、ヨーク市内外のパノラマ景観を楽しめます。    

ランチは北イングランドの有名なカフェ/ レストラン、Bettysでと思ったら、やっぱり行列ができてました(^_^;) 20分程待って、階下のテーブルへ。ブランチメニューの中から、私は巨大マッシュルーム、ホウレン草のソテーと焼トマト、半熟卵をのせたハッシュブラウン、夫と息子はそれぞれクラブサンドを注文。デザートのイートンメスが3000円位してビックリ😲

食後はフォス河沿いにある木造建築のマーチャント・アドベンチャラーズ・ホール(Merchant Adventurers’ Hall)へ。14世紀に建てられた大ホールは、当時の貿易商が集うビジネスと社交の場だったそう。最後はその起源をローマ帝国時代に遡るシャンブルズ・マーケット(Shambles Market)を散策。中世の面影を色濃く残す石畳の通りは、映画『ハリー・ポッター』のダイアゴン横丁(Diagon Alley)のモデルと言われ、魔法の道具を売るお店も。ファンが大勢詰めかけていて、ちょっとびっくり。

こうして家族旅行の3日目と4日目も雨に降られずに無事過ごせたのでした。

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