CBTってどうやるの?(その1)

もう4月も終わりですね。イギリスでは全国民の半数以上が1回目のワクチン接種を終えました。その成果なのか、毎日の感染者数はまだ1,700~3,000人の間を行ったり来たりしていますが、死者数と入院患者数が劇的に減少。このままいけば、5月17日からレストランやパブ店内での食事が可能となる予定です。

森の新緑が美しい季節。あちこちに野生の白い花が咲き乱れています

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緘黙治療にはCBT(認知行動療法)のエクスポージャー法を使ったスモールステップが効果的と言われます。そうきくと、CBTセラピストを探さなくてはならないと思いがち。でも、イギリスで緘黙治療を担うのは殆どの場合SLT(言語療法士)で、CBTセラピストではないのです。心理士を受診する緘黙児もいますが、多くはありません(ASD児を除く)。

SLTが緘黙治療の手引書として活用しているのが、イギリスの緘黙治療第一人者といわれるSLT、マギー・ジョンソンさんとアリソン・ウィンジェンズさんが共著した『場面緘黙リソース・マニュアル』。SLTやプロの支援を得られなくても、このマニュアルを片手に奮闘している保護者は大勢います。

マギーさんは場面緘黙を恐怖症と捉え、主にエクスポージャー法を用いて緘黙を克服する方法を段階的に詳しく解説。多くの臨床体験を基にしているので、躓いた時の対処法なども万全に整っています。

今回どうしてこの話題をあげたかというと、自分でも自己流エクスポージャー法をすることが多いから。ごく最近も、スモールステップで新しい車を運転する不安を乗り越えました。それを例にあげて自己流CBTのやり方を説明したいと思います。

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私は車の運転が苦手で、普段は知ってる道しか運転しないご近所ドライバーです。猛スピードでやってくる大型車に追い越されるのが恐怖で、恥ずかしながら高速には数回しか乗ったことがありません…。

わが家の愛車は2004年に駐在員の友達から譲り受けた、ホンダHR-V (;^_^A なんと今年で21歳なのですが、これまで故障らしい故障はなし。ガレージのトニーさんに「エンジンはまだまだ健在。買い替える必要ないよ!」と太鼓判を押され、乗り続けてきました。

が、今年の秋ロンドンの法律が変わるため、ついに買い替えることに。

先のイースター休暇中に新しい車(といっても2017年式の中古ですが)を購入。またホンダのオートマだし、すぐ乗れると思っていました。

が、私たちが古い車に乗り続けている間に、時代は大きく変わっていた!

  • まず、キーがない!
  • アクセルとブレーキの感度が前の車と全く異なる
  • アイドリングストップ機能つき
  • ウィンカーはハンドルの左側(前のは日本産で右側)
  • 計器のデザインが進化して、機能が倍増

主人は難なく慣れましたが(普通そうですよね。じゃないとレンタカーに乗れないし)、私は全く運転できる気がせず…。

でも、休み明けには車で通勤せねばなりません。

1) ひとりで乗るのがまず怖いので、呆れる主人に付き添ってもらい、夕方人のいない近所の駐車場へ。そこで初めて運転してみたのですが、まずアクセルとブレーキの感覚の違いに戸惑うことしきり。

うう~ん、アクセルの加速が遅い!でも、ブレーキはめっちゃ鋭敏!

主人に怒られながら練習しているうちに、ライトが自動で点いてまたびっくり(;^_^A

「じゃあ、帰りは自分で運転して」と言われ、こわごわ道路へ。大通りに出るところで素早く加速できず、後続車にクラクションを鳴らされるという…。

再び主人に注意され、「ここで怒られると自信を失うのに!」と内心凹みながら、なんとか無事に帰宅。でも、駐車するのに何度も切り返して、我ながらドンくさい。

2) 翌日、夕方ひとりで駐車場へ。足の位置に違和感があったので、運転席の位置をさらに前に移動させました。ひょえ~フロントに近い!でも、これでやっとアクセルを踏む感覚が足にしっくりきました。

安定感がでてきたので、思い切って駐車場を出て近所をぐるぐる。エンジンが止まる度にドキドキしたものの、これで「何とか大丈夫そう」と思えるようになりました。

3) その翌日、勇気を出して家から10分ほどの友達宅へ。駐車もスムーズになり、この時点で「来週、学校まで運転できそう」という気持ちに。

4) その翌日、20分くらいのところにある巨大スーパーへ。これで、やっと自信がついたのでした。

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不安を乗り越えるため、最終的には4回に分けてスモールステップを踏みました。不安や恐怖、苦手意識に立ち向かいながら、少しずつ自信をつけていくスモールステップ法は、場面緘黙の克服と同じです。

ちょっと長くなってしまったので、目標の定め方、実行する時の注意点などを次回に書きたいと思います。

息子の緘黙・学童期6~7歳(その2)進歩の停滞 

イギリスは昨日からロックダウン解除の第3弾として、4か月ぶりにパブが再開し外庭での飲食が可能になりました。その他、生活必需品以外を扱うショップや美容室、ジムなども再オープン。2週間後の感染率がちょっと心配ですが、やっと普通の生活に一歩近づいた感じです。

 

4月なのに何度も降雪…我が家ではワイルドに育った塀のアケビが花盛りです

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E先生とL先生のジョブシェアで始まった2年生。前評判があまり芳しくなかったのですが、実際会ってみたら前任と比べてどこかそっけない印象…。

当たり障りなさそうなE先生と、実務的でちょっとむっつりした感じのL先生。なんとなく不安なスタートを切りました…。

そして、その予感が的中したかのように、息子はちょっと後退・停滞気味に。

必要事項や聞かれたことへの返答は、新学期が始まってすぐ先生たちに囁けるようにはなりました。でも、前学年でできていた「小声で話す(結果的には大きめの囁き声だったような)」から「小さめの囁き声」に後退してしまい、それが継続することに。

話すこと以外でも、作文の課題をする時など、「促されないとやらない」、「書く分量が少ない」など、1年生で乗り越えた問題がまた出てきてしまいました。

友達に関しても、安心できる特定の子とだけ喋る傾向が強くなりました。また、日によっては担任と一言も話さないこともあったようです。週中に担任が交代するためか、担任から息子に関する情報があまり入らなくなりました。

やはり、1対1の読本やグループセションなど、1年生の時に受けていた手厚いサポートがなくなったせい?

今思うに、新たな環境での不安や緊張で緘黙症状が後退しても、新担任たちにはそれが判らなかったんでしょう。クラスメート達は息子の緘黙症状に慣れていて、対処の仕方も判っているし、本人も困ったり、都合が悪かったりすることはなかったんじゃないかと。要するに、慣れですね。

学校にしてみたら、予算不足や人手不足があって、前年度かなり進歩した息子は「あまり問題のない子」とみなされていたような…。

また、息子は新学期のざわざわした雰囲気や友人関係の変化にも敏感に反応していたように思います。特に親しかった友達2人に対しても、少々引っ込み思案になっていました。(ちなみに、先学期にすごく進歩したのは、夏休み前の開放的な雰囲気も手伝っていたかと)。

新学期の忙しさのためか、SENCOや担任と話し合う機会があまり取れず、息子の状態が判らなくて段々とフラストレーションが溜まっていきました。現状が掴めないと、どう対策を立てていいかも判りません。

そこで、Knetの『資料No.5 場面緘黙児が自分の不安を把握するためにをやってみました。「学校の先生がどのくらい恐いか教えて」と、5段階評価で。

そうしたら、私が思っていたのとは随分違う評価だったのです。

超恐い(5)のは校長先生、かなり恐い(4)のは担任のE先生と1年の時に読本を1対1で教えてくれていたA先生、そして前担任のF先生。ええっ? 結構恐い(3)のはTAのS先生、ちょっとだけ恐い(2)はSENCOと担任のL先生…。

意外でした。A先生とは個室(カーテンで仕切った部屋)で普通に話せていたし、E先生にも必要事項は囁けます。

新担任に関しては、息子の安心度はE先生よりL先生の方が圧倒的に高いことが解り、ちょっと驚いたのでした。

<関連記事>

息子の緘黙・学童期6~7歳(その1)小学2年の心構え

 

緘黙児と歯医者

イギリスは今週金曜日から4日間のイースター(復活祭)連休に入りました。日曜日の今日はキリストが復活した日とされ、ローストランチを食べるのが習慣。再生を意味する卵型のチョコレートも定番で、子どもがいる家では、絵を描いたり、彩色したゆで卵をぶつけあって遊びます。

規制が緩み、好天にも恵まれて、半年ぶり?に友達を招いて庭でランチ

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さて、今日は医者についての話題です。うちの息子はアレルギー体質はあるものの、体はかなり丈夫な方。小さい頃から殆ど病気をしたことがなく、あまり医者に行くこともありませんでした。が、歯医者さんだけは頻繁に通っていたのです。

というのも、奥歯2本のエナメル質の形成が悪く、3歳の頃から歯医者にかかっていました(最初は虫歯と思って焦ったのですが、妊娠中のカルシウム不足?)。担当のP先生は優しくて子ども好きの男性。4歳半で緘黙を発症する前は、口数は少ないものの普通に会話ができていたのです。

息子が緘黙になってしばらくしてから、定期健診に行くことに。P先生のクリニックは車で20分程度の場所に移転し、新しい住所を訪ねたのは初めてのことでした。

心配ではあったのですが、学校じゃないし慣れている先生なので話せるかもと少し期待していました。が、全くの無言の上、頑なに口を開けようとしないのです!

子ども好きな先生は、「知らない場所だから緊張したのかな?今日は診察は無理そうだから、また2週間後に来てください。しかし、こんなこと開業以来初めてだなあ…」と。

この時、無理やりに口を開けさせていたら、きっと恐怖体験になって歯医者が嫌いになっていたことでしょう。この時のP先生の神対応に感謝、感謝。

2週間後に再訪すると、息子はまた口を開けず、私に目と表情で「いや!」と訴えかけてきました。

どうも、歯科医とアシスタントの視線が自分に集中するのが耐えられない?

とっさのひらめきで、私は息子の顔にハンカチを被せ、「ほら、もう先生から隠れることができたから、恥ずかしくないよ~。大丈夫だよ~」と日本語で話しかけました。視線を遮断することで、「見られている」という意識を変えられるかなと思ったのです(今考えると、変な親子ですよね…(;^_^A)

すると、息子は安心したのか、すぐ口を開きました。その後、P先生は診察や治療の前にサングラスを貸してくれるように。診察拒否はなくなり、自分から進んで口を開け、声は出せなくても頷きで意思表示するようになりました。

多分、歯科医やアシスタントの視線の他に、頭上のライトがまぶしかったり、恐かったり、ということもあったかと思います。

サングラスは自分と外界との間の遮断壁の役割を果たすので、病院やクリニックなどでも使えるかもしれません。サングラスでなくても、度の入ってないメガネでもいいかも。ものは試し、困ったらやってみてください。

4歳半で緘黙になってから、歯医者でも「しゃべらない子」と認識されてしまった訳ですが、無言のままだった時期は1年位だったでしょうか。学校での進歩にあわせるように、ポツンポツンと言葉が出始めました。

6歳の誕生日を迎えた頃から、受付の女性がいる待合室で私と普通に話すようになり、翌年春には診察室で突然私に話し始めたのです。

「これはチャンス」と感じた私(とP先生も?)が、話をさせようとしむけたら、また口をつぐんでしまい、「しまった~!」と反省…。やっぱり焦ることなく子どもの様子を見ながら、少しずつ少しずつが原則ですね。

結果的には、7歳を過ぎたころからポツポツ返事をするようになりました。が、ずっと「照れ」があり、寡黙なのは変わらず…。その後、クリニックは家から5分のところに移転し、息子は5年生になってひとりで歯科医に行けるようになりました。多分、それなりに話せるようになったんだと思います。

ちなみに、息子が歯科医に通っていたのは、エナメル質がない奥歯のフッ素塗布と歯の健康状態を調べる定期検査のみ。20歳になった現在まで、一度も虫歯になったことがないんです。

チョコレートが大好きだった私は小さな頃から虫歯で歯医者に通い、怖い先生によく叱られたものです。が、同じおやつを食べている兄はあまり虫歯になりませんでした。きっと歯の質も生まれつきのものがあるんでしょうね。

  

歯には良くないけれど、チョコレートが冬のロックダウンを乗り切る助けになりました