秋も深まり、黄色く紅葉した落葉樹の葉が散り始めました。10月末に時計を1時間進めて冬時間になったため、午後4時半を過ぎると、つるべ落とし式にまっ暗。もうすぐ冬だな、としみじみ思う今日この頃です。
さて、息子の緘黙の続きです。
今から思えば、滑り台事件のあと息子は緘黙のみならず、すっかり緘動状態になっていました。でも、その時は私も学校側も「場面緘黙 Selective Mutism」という言葉すら知らなかったのです。2005年当時は、イギリスでもまだ場面緘黙が良く知られてなかったんですね。
イギリスだったら、すぐ保護者が学校に行って子どもを支援できそうと思われる方もいるかしれません。でも、実際はそうでもないのです。学校によって方針は異なり、家族が直接学校でできる支援はピンからキリまで。
ちなみに、息子の小学校の幼児部 (Infant School 4〜7歳)では、クラス35人の子ども(4~5歳児)に対して、担任とTAがつきます。更に、クラスにアスペでStatementを持つ子がいたため、その子専用のTAが定時間ついていました。これに加え、複数人の母親がクラスヘルパーとしてお手伝い(ひとり週に1回2、3時間程度だったような)。
私もヘルパーになれれば良かったのですが、早生まれの息子が1月に入学した時には(通常は9月から)、既に空きはなし。その時は、「自分が手伝えるかも」ということは全く思いも浮かびませんでした。
(余談ですが、「何故X君とY君のママがクラスを手伝ってるんだろう?」と最初は不思議に思ってました(笑)。入学式も保護者説明会もなく、お知らせは学校が出す週1のニュースレターか担任からのノートのみ。学校やクラスのシステムは、お迎え時間にクラスのママ達とおしゃべりしながら学んだのです…)
ということで、息子が教室で動けなくなった当時の支援は、すべて学校にお任せでした。場面緘黙への対策ではなく、教室で動けない生徒への対策でしたが、学校の取り組みはすごく的を得ていたと思います。
最初にSENCOに会った時、次のように支援していくという話になりました(息子の緘黙・幼児期4~5歳(その9)をご参照ください):
- 幼稚園時代からの仲良しのT君(別のクラス)となるべく一緒に遊べるようにする
- 小さいことでも何かできたら褒め、少しずつ課題や活動ができるようにする
イギリスでは特別支援が必要な子どもをSEN(Special Educational Needs)リストに加え、症状に合わせて支援していきます。身体的・発達的・精神的な問題で「学習における困難さや障害」を抱える子どもは、症状の程度にかかわらず何らかの支援を受けられるシズテム。障害が重く、地区の教育委員会から認定を受けると、Statement(現在はEHCプランに切り替え)が発行され、学校にその子のための予算がおりるので、追加のTAを雇えるのです。
SENCOとの初めてのミーティングしたのが2月の終わり。その後、SENCOと担任が相談して、もっと具体的なIEP(Individual Educational Plan 個別教育プラン)を立ててくれました。
サポートの形式: 小グループもしくは1対1
ターゲット1: 毎日自分でひとつアクティビティを選ぶ
- 達成基準:毎日観察
- リソース&テクニック:ブロックやレゴなど組み立て式の玩具を使用
- 作戦:他の子どもや大人と一緒に行う
- 担任とTAへの提案:隣で遊び方をデモンストレーション&説明
ターゲット2: 大人の呼びかけに、顔を見て対応する
- 達成基準:1対1、小グループ、クラス
- リソース&テクニック:名前を呼び、ジェスチャーを使ってフォーカスさせる
- できたら褒めて、正しい行動を強化する
- 担任とTAへの提案:誰かに話しかけられたらその人の顔を見るよう話す
(レセプション・クラスは就学への準備コースのような感じで、遊びながら学ぶ方式。やっていることは幼稚園とあまり変わりません。教室内の4つの大テーブルにそれぞれ違う活動・遊びがセットされ、毎日算数や国語の基礎的な課題を2つほどこなすよう、先生が誘導します。この他、クラス全員でカーペットに座って読みきかせやアルファベットなどを教える時間も)。
IEPは1学期ごとに見直し、成果を吟味したうえで次のターゲットを決めます。たいていは、保護者、SENCO、担任でIEPミーティングを行うのですが、専門家が関与している場合は専門家も加わります。
現在、IEPを立てることは義務ではなくなったようなんですが、文書にすることはとても有効だと思います。当時は、専門家が関わらない場合はSchool Action、加わる場合はSchool Action +となり、支援がより手厚くなる制度だったように思います。
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