SMiRAコンファレンスより。
児童セラピスト、ルーシー・ネイサンソンさん 「NYのグループ治療プログラム、『ブレイブバディズSM(Brave Buddies SM)』を体験して」
NYのChild Mind Instituteは、メンタルヘルスや学習における障害に苦しむ子ども達をサポートする独立した国の非営利団体。このブレイブバディズSMは、2009年に児童心理学者カーツ博士によって考案された、グループ緘黙治療プログラムです。
https://childmind.org/center/selective-mutism-service/
(このプログラムを経験したリリーちゃんと両親がビデオに登場しています)
(みく注:このサイトでは、1日もしくは2日間のプログラムを行っていると記されているので、ルーシーさんが参加したセッションは特別だったのかも…)
ロンドンに住む児童セラピストのルーシーさんが、この短期治療プログラムに参加。今回の講演では、彼女が実際にセラピストのひとりとして体験したことやその感想を伝えてくれました。
『ブレイブバディズSM(Brave Buddies SM)』の概要
- 内容:行動療法を用いたグループセラピー
- 対象:3~8歳
- 期間:1日5時間、5日間継続(事前の導入セッションあり)
- 場所:学校の教室を模した部屋
Brave Buddies は「勇敢な仲間たち」とでも訳せばいいんでしょうか?学校の教室を模した部屋で、授業のような形態を用いて行う小グループ治療プログラムです。緘黙が学校で起こっていることを考えると、疑似学校で治療プログラムを行うことは理にかなってますね。プログラム終了後、実際の学校で効果を持続できるよう、保護者の教育もあるとか。
プログラムを開始する前に行う活動:
- 導入セッション
- ブレイブバディズ
- ペアレントトレーニング
セラピーに参加する子どもたち(薬を服用している子も含む)は導入セッションで合流。子どもたちが同じ部屋で遊んでいるところに、それぞれの子どもを担当するセラピストが徐々に入っていく。
- セラピストはまずCDI (Child Directed Interaction 子ども主体のインタラクション)を用いる。側にいて、子どもの行動を声に出して説明し、模倣し、省みる(褒める)。
- VDI (Vocalisation Directed Interaction 音声主体のインタラクション) を用いて、計画的に、意図的に声を出すよう促す。
- Yes, Noの2者選択ではなく、答えを言わなくてはならない質問やオープンエンドの質問を使用し言葉を導き出す。
- 答えを何秒か待ち、発語がなければ再び答えを促す。
- 質問例: ○○ちゃんは、赤い花がいい、それともピンクの花がいい?
- 子どもが「ピンク」と答えたら、セラピストは「○○ちゃんは、ピンクの花がいいんだね」と長い文章で繰り返す。
- セラピストの質問に答えられたら、後で玩具と交換できるブレイブバッジを与える
導入セッションでセラピストの質問に答えられるようになった子ども達は、次に5日間の集中プログラムへ。
学校と同じように、サークルタイムや工作の時間などを設ける。主任セラピストが加わり、全体の活動を引っ張っていく。
子どもたちは同じ部屋で活動するが、各自に担当セラピスト(導入セッションと同一)がつき、最初は1対1で対応。慣れてきたら、新たな主任セラピストが子どもたち(全体)に質問。子どもはまず自分の担当セラピストに答えを言う。次に、主任セラピストがひとりずつ子どもに質問し、子どもから直接答えを引き出す。答えることができたら、皆の前で褒める。
- 教室のような部屋で何度も話す練習 <連続的なエクスポージャー法> → 実際に教室で話す練習へ
- 担当セラピストを交代させる <「強化法」> → 話せる人の輪を広げる
- より多くの人と話すことに焦点を当てる
- 「忍耐への耐性」を積み上げることに焦点を当てる
- 同じ質問をすることで不安を減らす
- ペアレントトレーニングにより、保護者がセラピストになってエクスポージャー法を持続できるようにする
まとめと質疑の様子は次回お伝えする予定です。
<関連記事>