この9月に、SMIRAの新しい緘黙本『Tackling Selective Mutism 場面緘黙への取り組み(仮)』が出版される予定です。2004年に『Sillent Children(場面緘黙へのアプローチ)』が出版されて以来なので、何と10年ぶり!
前書と同じく、緘黙治療の最前線にいる多数の専門家や支援者が寄稿していて、最新の情報を取りこんだ総括的な内容になっています。編集を担当したのは、SMIRA会長のアリスさんと言語病理学&セラピーを専門とする元SLTのベニータ・レイ・スミスさん(子どもの言語・コミュニケーションに関する複数の著書あり)。レイ・スミスさんから、新書籍のチラシが送られてきたので、紹介させていただきますね。
Tackling Selective Mutism - A Guide for Professionals and Parents Edited by Benita Rae Smith and Alice Sluckin
ここから目次を見ることができます↓
http://www.jkp.com/catalogue/book/9781849053938/contents/
かんもくネット代表の臨床心理士、角田けいこさんも、日本における場面緘黙について寄稿しています。微力ながら、私も英訳とレイ・スミスさんとのやりとりをお手伝いさせていただきました。
緘黙とASDやコミュニケーション症との関連性、吃音、音楽療法などに加え、緘黙のティーンに関する章もあり、大変興味深い内容になっていると思います。
目次をざっと要約すると、下記のような感じです(急ぎだったので、誤訳があったらすみません!)
<序章>
- 1) 場面緘黙の概要とアプローチ法 編集も担当したSMIRA会長のアリスさんと元SLTのレイ・スミスさん
<第1章 場面緘黙の現在の理解>
- 2) 半世紀にみる場面緘黙の見解の移り変わり ロンドン大学 トニー・クライン教授
- 3) 場面緘黙のティーンと保護者の声 SMIRA副会長 ヴィクトリア・ロウさん
- 4) 支援ネットワーク:SMIRA アリスさん、SMIRAコーディネーターのリンジー・ウィテントンさん、レイ・スミスさん
<第2章 場面緘黙に関連・併存する症状>
- 5) 場面緘黙とコミュニケーション症 豪在住の言語病理士、ヒラリー・クリーターさん
- 6) 場面緘黙とASD(自閉症スペクトラム症)の関連性 元SLT、アリソン・ウィンジェンズさん(イギリスの緘黙治療バイブルと呼ばれる『場面緘黙リソースマニュアル』の共著者)
- 7) 場面緘黙と吃音 スペシャリストSLT、ジェニー・パッカーさん
<第3章 介入・治療戦略と支援>
- 8) 緘黙治療と薬の有効性 ハル大学講師&SM支援者 ジェフリー・ギブソン氏 (過去に緘黙の息子さんとITVの緘黙ドキュメンタリーに出演)、LD青少年精神科医 デビッド・ブランブル博士
- 9) 学校と地域コミュニティにおけるアプローチ法 遊戯インタラクション・スペシャリストのジョティ・シャーマさん、ユース・アドバイザーのジェーン・ケイさん、特別支援コーディネーターのスーザン・ジョンソンさん
- 10) 家庭と学校をつなぐアプローチ法 アリスさん
- 11) 効果的なケアプラン マギー・ジョンソンさん(イギリスの緘黙治療バイブルと呼ばれる『場面緘黙リソースマニュアル』の共著者)、ミリアム・ジェメットさん、シャーロッテ・ファースさん (全員SLT)
- 12) 他言語における場面緘黙 アリスさん、レイ・スミスさん、テルアビブ大学他の客員教授、ニッツア・カッツ・バーンスタイン教授、かんもくネット代表の臨床心理士、角田けいこさん
- 13) 声を出すための音楽療法 音楽療法士、ケイト・ジョーンズさん
- 14) ティーンに自信を持たせる教育 教育研究所&ロンドン大学 ローズマリー・セージ教授
- 15) 法的なサポート 元特別支援教員、デニス・レーンズさん、レイ・スミスさん
<第4章 まとめ>
- 16) 場面緘黙からの回復-元緘黙児の保護者からの証言 アリスさんとSMIRAの保護者たち
- 17) まとめ&これからの提言 アリスさん、レイ・スミスさん
- 付録: 成人における場面緘黙 カール・サットン博士
(注: 元と書いてあるのは、退職していて現役ではないという意味です)
この本を読んだ感想を場面緘黙症Journalのブログに書いたのですが、その際、MIKU さんのこの記事を紹介させていただきました。日本の緘黙児支援をめぐる現状についてイギリスの本に載るとは、感慨深いです。MIKUさんのお名前も、本で見かけましたよ!
http://smjournal.blog44.fc2.com/blog-entry-833.html
富重さん
お久しぶりです。
記事を紹介して頂いて、ありがとうございます。私の手元にも、先週ペーパーバック版が届きました。しかし、「SMIRAの新しい緘黙本」ではなく、「SMIRAの主要メンバーが編集・執筆した新しい緘黙本」でしたね…(汗)。アリスさんもレイ・スミスさんもSMIRAの重鎮なので、新書にもSMIRAの名前が入ると思ってたのですが、そうではありませんでした…。ミスが多くてお恥ずかしい限りです。
この本では、SMのティーンを研究したヴィッキー・ロウさんの寄稿や、ティーンの頃緘黙を克服した経験者の声が取り上げられているのが、これまでの傾向と違うところですよね。また、場面緘黙に併存するコミュニケーションや言語、ASDの問題についても深く掘り下げています。実用書ではないですが、富重さんのおっしゃるように多角的に捉えているので、特に教育関係者には参考になるアイデアが多いと思います。