ロックダウン8週間目にして、先週から第一段階の解除が始まったイギリス。気持ちのいい初夏の天候に誘われて、人々は風光明媚な海辺の町にどっと押しかけているよう。今週末は三連休なので、第二の感染の波が来ないか心配です…。
さて、先週から大きな問題となっている学校の再開。やはり6月1日からスタート予定で、各学校は準備に追われています。
政府の方針では、まず小学校(5~11歳)から再開するとしています。全学年ではなく、最も若いレセプションクラス(5歳)と1年生(6歳)、そして来年全国試験を受ける予定の6年生(11歳)を優先。
一度に教室に入れる人数を最大15人までに抑え、4~5人の小グループに分けて他のグループと交わらない様にする、下校の時間を早めるなど、様々な対策を考えているよう。
また、セカンダリースクール(12~16歳)は10年生を、6thフォームやカレッジ(17~18歳)は12年生を(両学年とも来年全国共通試験を受ける予定)、夏休み前に学校に戻す計画を立てています。
私が日本語を教えている特別支援学校でも、子ども達や担当の教師・TAのグループ分けや、様々な規則が決まりました。給食は当分ストップするため、保護者は毎朝お弁当を作らなければなりません。学校にはキッチンがあるのですが、こちらも使用禁止。
ただ、登校は強制ではなく、保護者の希望で安全性が証明されるまでは当面登校しない、または9月まで登校しないという子ども達も。
ヨーロッパの他の国々と比べると、イギリスでは毎日の感染者数も死者数も充分には減っていません。教師も生徒も全くマスクなしで授業を再開と言うのは、やはり心配…。
さて、ロックダウンの期間中、緘黙児の保護者達が集うSMiRAのFBページは、「ロックダウンのお陰で、子どもが元気になった!」という報告が相次ぎました。
学校に行く不安がなくなり、家で大好きな家族と一日一緒に過ごせるという安心感からでしょう。社会的なプレッシャーから解放され、のびのびと過ごせた子が多かったよう。
それと同時に、それまで学校で積み上げたスモールステップの成果が水の泡になりそう、と心配する保護者の声も…。
SMiRAでは、ロックダウン中に家庭の快適ゾーンに引きこもってしまわない様、自分の子どもにあった小さな不安を克服するスモールステップを計画・実行するようアドバイス。ロックダウン中はオンライン授業やオンライン受診に切り替わったため、SLTのマギー・ジョンソンさんからは、これを利用して発話に繋げるようにとの提案も。
その成果か、緘黙児が先生や心理士、セラピストに対して初めて声を出せたという報告もチラホラ。直接顔を合わせるよりも、PCやタブレットの画面越しの方が不安が少ないんでしょうね。
また、ティーンの緘黙児には、自立に向けて徐々に苦手なことや家事に挑戦させるという提案もありました。
緘黙児は新しい環境に慣れるのに時間がかかります。なので、長い休みの間にそれまでの進歩が逆戻りしてしまうことも珍しくありません。でも、もし後退してしまったとしても、そこまで達した経験があれば、またきっと戻れるはず。だからスモールステップでの前進体験は絶対無駄ではないと思うのです。
私の日本語の生徒たちは、オンライン授業では大体自分のカメラをオフにしています(写真嫌いと、多分パジャマ姿を見られたくない?)。この方法だと、緘黙児は自分の顔を見られることなくやり取りできるので、すごく気が楽なのではないでしょうか?
もし電話でなら話せる友達や親戚がいる場合は、下記のようなスモールステップができそうです。
- 端末やタブレット、携帯でまず音声だけで話をする(途中から、相手のカメラをオンにしてもらい顔が見えるようにする)
- 慣れてきたら、相手の画像を見て話す(自分のカメラはオフ、不安が強い場合は最初はマイクもオフにして声を出す練習をする)
- 慣れてきたら、自分のカメラもオンにする
- 同じ建物内で1~3を繰り返し徐々に距離を縮め、最終的には同じ部屋へ
- 最初は背中合わせにタブレットを通じて会話、最終的には実際に顔を見て話す
電話でも話せない場合は、まず文字のメッセージ交換から始めてもいいですよね。
6月から登校を予定しているイギリスの緘黙児たちは、今大きな不安をつのらせています。でも、4~5人の小グループ活動が多くなりそうなので、発話のチャンスかも。親しい友達と同じグループにするなど、学校側が配慮してくれるといいですよね。
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