再び、場面緘黙は発達障害なのか?


<イギリスの見解と日本の見解>

以前、『緘黙は発達障害なのか?』と題した記事を書きました。イギリスの専門家のあいだでは、「場面緘黙≠自閉症スペクトラム症(ASD)」という見解で一致しているようです。

調べてみたら、イギリスの国民保健サービス(NHS)による緘黙の説明に、下記のような記述がありました。

Another common misconception is that a selectively mute child is controlling or manipulative, or that the child has autism. There is no relationship between SM and autism, although the two conditions can occur in the same child.

(その他のよくある誤解は、緘黙児は強情・狡猾というものや、緘黙は自閉症であるというもの。この2つの症状を併せ持つ子どもはいますが、緘黙と自閉症の間に関連性はありません)。

NHSホームページ 病気A-Z 場面緘黙のページから

こちら→http://www.nhs.uk/conditions/selective-mutism/pages/introduction.aspx

一方、日本では広汎性発達障害やASD、グレーゾーンと診断される緘黙児が多いという研究結果が複数出ています。そのためか、「場面緘黙=広汎性発達障害・ASD」と捕らえる傾向があるよう。

<ASDの人の脳>

先回の記事でご紹介したアスペルガーの女性、ロビンさんは、まず最初にASDの人と普通の人の脳の写真を提示しました。ASDは先天性の脳の機能障害であり、普通の人とは脳の構造が違うというのです…私は知らなかったのでビックリ。

日本語の説明はないかなと探してみたら、『日刊アメーバニュース』の「早期発見がポイント―子供の「自閉症」、MRIで診断可能に」という記事に出くわしました。

こちら → http://news.ameba.jp/20131026-160/

脳の構造が違うため、初めから認知の仕方が普通の人とは違う。だから、心理的な発達も通常とは異なってくる--社会性が育たないのはこういう理由からなんですね。

場面緘黙はというと、発達の問題というよりも、やはり心の問題(心因性の精神障害)だと思うんです。心因性ということは、普通の子、ASDの子に関係なく、特定の心の問題を抱えたときに緘黙になるということではないでしょうか?

家では普通にしゃべれるのに、学校など公の場でしゃべれない--「公の場」では家で使う話し言葉以上のものが求められます。それは、社会的な場で使う「話し言葉」とソーシャルスキルを伴う「コミュニケーション」。さらに、これらは年齢に見合うものでなければなりません。

家だったら、家族に「あれ取って」と言えば通じますが、学校で先生に向かってそうは言えません。また、複数のクラスメイトとの対話では、適切なタイミングで適切なことを言う必要があります。家で使ってる言語&コミュニケーションと比べると、ぐっとハードルが高くなるのです。

言語や発音に問題がある子、コミュニケーションや社会性に問題のある子にとって、学校で話すことはかなりの難題です。授業で上手く答えられなかったり、クラスメイトに何か言われたら、子どもはひどく傷つき、学校で話すことが不安になるでしょう。繊細で不安が強い子は、特にその傾向が強いのではないでしょうか。

ASD児は社会性がなく、コミュニケーションが苦手なため、緘黙になるケースが多くみられるのではと推測しています。特に、自己主張せず、苦手な部分を隠したがるタイプの子が…。日本では診断を受けることなく、ずっと理解・支援なしで普通クラスに在籍しているASD児(傾向の子)も多いようで、学校生活が辛そうです。

関連記事:

緘黙は発達障害なのか?

 

再び、場面緘黙は発達障害なのか?” への4件のコメント

  1. 私のブログで恐縮ですが、自閉症の脳科学的診断については以下の記事が詳しいです。

    http://smetc.blog120.fc2.com/blog-entry-183.html

    上の記事では自閉症スペクトラム障害の人と健常発達の人だけでなく、自閉症スペクトラム障害の人とアスペルガー症候群の人も脳を診れば鑑別できるという研究も紹介しています。まあ、専門知識がない人には読んでも分からないかもしれませんが。

    ただし、これはあくまでも精神科医による診断と脳科学的診断の一致率を計算しているという点に注意が必要です。精神科医の診断が正しくなければ、一致率なんか計算しても意味ないですからね。

    緘黙は心の病ということですが、アメリカのNIMHなんかは精神疾患は脳の病気であるとHPで書いていますので、NIMHはもしかしたら緘黙も脳の病気であると考えているかもしれません。

    そもそも心がどのように生じるのか解明しなければ、心の問題と神経系(脳だけでなく、迷走神経なども含む)の問題を切り離すのは問題のすり替えにしかすぎません。

  2. マーキュリー2世さん

    コメントありがとうございました。
    自閉症の脳科学的診断についての記事、拝見させていただきました。
    う~ん、とっても難解….現状では、精神科医による診断と脳科学的診断の一致率が高いという研究結果が出ているけれど、まだまだ研究中で実用段階には達していないということですね?

    抑制的な気質の人についても、アミグラダが刺激に対して過敏反応しているという説が強力ですが、こちらもMRIで識別できるのかな?

    確かに、精神的な病や症状は、脳の構造や発達と密接に関連しているので、切り離すことはできません。私が言いたかったのは、発達障害と呼ばれるカテゴリーと場面緘黙が含まれる精神的な障害のカテゴリーが違うんじゃないかということだったんですが…。うまく表現できなくて、「心の問題」と書いたのがまずかったですね。

    別エントリーで、再びそのことについて触れたいと思ってるんですが、マーキュリー2世さんのこのコメントとブログ・リンクを紹介させていただいてもいいでしょうか?

  3. 難解な記事をお読みいただきありがとうございます。難しい世界に無理やり引っ張ってしまったみたいで、なんだか申し訳ないです。コメント・ブログに関してはご利用いただいてもかまいません。

    たしかに、場面緘黙と発達障害は違うと思います。心の病=精神疾患というのも間違いかな。ここらへんの定義がいまいちよく分かりません。

    精神疾患が先で脳の変化が後という解釈もできるため、精神医学的な診断と脳科学的な診断の一致率が高い=精神疾患は脳が原因だという結論にはなりませんが、大変興味深いです。まだ実用されていませんが、今後の進展が期待されます。

    抑制気質の脳研究では残念ながら個人レベルで識別できたという報告はありません。集団レベルで扁桃体の活動が普通とは異なっているという研究ならありますが。

    実は抑制気質の扁桃体研究は抑制気質児が大人になってからfMRIをした研究しかないんですね(これは子どもで神経科学的検査をするのが難しいことが一因)。なので、本当に抑制的気質児の扁桃体が過敏かどうかは分かりません(成人以降なら扁桃体が過敏であると主張することは可能ですが)。

    しかもそのfMRI研究では乳幼児期に抑制気質だった人が成人しても精神疾患になっていない場合が多くなっています。ご記憶かどうかは分かりませんが、以前「痕跡」という表現を使いましたけど、それは以上の2点を踏まえて用いた言葉です。決してネガティブなニュアンスを含めたつもりはありません。もう、当時は説明するのも面倒くさくなって、コメントしませんでしたが(笑)。

    ただ、もちろん乳幼児期に抑制気質で成人してからも不安が強いので、扁桃体の反応が通常とは異なるという解釈もできるため、「痕跡」ではないのかもしれませんが。

    長いコメントをお読みいただきありがとうございます。

    ○余談(私の自己満足なので読まなくてもかまいません):中には脳科学を疑う人もいます。実際、fMRIやEEG等は心と脳活動の相関しか分からないので、説得力はないかもしれません。しかし、電磁誘導の法則を利用して外部からヒトの脳神経の活動を変える技術に関する研究では因果関係の立証が可能であります。動物実験なら1つの神経細胞の活動を人工的に増減させるだけで、不安・恐怖のような行動が増減するという研究もありますしね。

    実は脳から分かるのは精神疾患や発達障害かどうかだけではありません。一番びっくりなのは「あなたが思い描いている人の顔、脳スキャンで読み取れちゃいます!」という最近発表されたfMRIの研究です(以下のニュース記事参照)。

    http://www.gizmodo.jp/2014/04/post_14316.html

    ただし、原著論文を確認すると、「あなたが思い描いている人の顔、脳スキャンで読み取れちゃいます!」というタイトルは間違いで「目で見ている人の顔を脳スキャンのデータから再現できる」というのが正確な記述です。完璧に顔を再現できたというわけではありませんが、顔の認識は脳で行われているという説得力のある研究となっています。

    あとは「睡眠中の脳活動パターンから見ている夢の内容の解読に成功」というニュースもありました。こちらは日本のメディアにも取り上げられたのですが、イギリスにいらっしゃるのならば、ご存じないのかもしれません。

  4. マーキュリー2世さん

    丁寧なお返事、ありがとうございました。
    それでは、コメントとブログへのリンクを使わせていただきますね。

    >心の病=精神疾患というのも間違いかな。ここらへんの定義がいまいちよく分かりません。

    本当ですね…。疾患の定義は、様々な団体によって異なるようですし、今研究中のものは将来変更・改定されるものも多くでてくると思います。

    >精神疾患が先で脳の変化が後という解釈もできる

    鶏が先か、卵が先か、みたいな感じですよね。先週、ASD児専門校のTAと話していたら、子どもがどう成長するかによって、脳の発達もどんどん変わってくるので、やはり早期発見と支援が必須といってました。

    >しかもそのfMRI研究では乳幼児期に抑制気質だった人が成人しても精神疾患になっていない場合が多くなっています。

    生まれ持った根本的な気質は、変わらないような気がしますね…。

    >「目で見ている人の顔を脳スキャンのデータから再現できる」

    ここまでいくとSF小説みたいな感じになってきますね。
    しかし、マーキュリー2世さんの知識ってすごい!私はあまり詳しくニュース等を調べてないので、無知ですいません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です