イギリスは晴天のいい天気が続いています。が、やはりデルタ変異種が蔓延傾向にあり、6月21日のロックダウン完全解除は4週間ほど延期となりそう…。政府はワクチン頼みですが、ワクチンだけでは予防できません!分析によるとデルタ変異種で亡くなった方43人中14人は1回以上の接種済。その中には、2回接種済みの方も複数。ファイザー社のワクチンだと1回接種で予防効果率は50%くらい、2回目で90%近くになるよう。でも、接種後2週間経たないと効果がでません。みなさんも、どうぞお気をつけて。
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Selective Mutism H.E.L.Pは米国の保護者ケリー・メルホーンさんが主催するオンラインサミット。2年目となる今年は5月中旬に開催され、専門家や緘黙体験者9名が場面緘黙や不安に関して話した他、ケリーさん自身がスモールステップ体験を語ってくれました。
ケリーさんの娘さんは現在7歳。4歳半で場面緘黙と診断され、すぐ専門家を探して治療を始めました。治療法のひとつがCBTのエクスポージャー法で、実践して学びながら娘さんのペースをつかんだよう。前回までがエクスポージャー法の話題だったので、ケリーさんのケースと照らし合わせてみました。
エクスポージャー法でスモールステップに取り組むにあたり、大切だと思われる点:
1) 子どもの不安度を人・場所・環境に分けて細かくチェック(学校の内外)
2) その子に合うスモールステップを計画・実行する(子どもを参加させ、高学年からは主導権を握らせる)
3) ステップ毎に克服できそうな目標を定める(無理な目標は禁物)
4) モチベーションや明確な目標を持たせる
5) 1回10~15分ほど、推進力を失わないため週に3回以上(『場面緘黙リソースマニ ュアル』より)
6) 不安度の低い挑戦から始め、徐々にハードルをあげていく
7) そのつど柔軟に修正しながら、小さな成功体験を積み重ねていく
8) 実践の後には必ず振り返りをし、成功・不成功の内容を分析。反省点を次のステップに生かす
ケリーさんのスモールステップ
最初の挑戦:お店でお菓子をひとつ選び、レジカウンターまで持って行く。
結果:カウンターまで行くことができず、通路に座り込んで泣き出した
振り返り:「自分はいったい娘に何をしてしまったんだろう?!」と、驚きと困惑でいっぱいに。母娘ともに、次のチャレンジが怖くなった。
1) 子どもの不安度を人・場所・環境に分けて細かくチェック
ケリーさんは娘さんの不安度を把握しておらず、これなら簡単にできるだろうとステップを設定。ハードルが高すぎたことが判明したと同時に、子どもの緘黙の深刻さも理解することに。緘黙児はひとりひとり違うので、試行錯誤しながら模索していくしかないと思います。
でも、そんなことでは怯まなかったケリーさん。SNSで他の保護者たちに相談し、娘さんができそうな、もっと細かなステップを考案し、実践していきました。
二度目の挑戦:一緒にカートを押してレジカウンターまで行き、ケリーさんがカートから買うものを出して隣にいる娘に渡し、娘がそれをレジのコンベアベルトに置く
結果:成功
振り返り:できたけれど、娘はまだ不安な様子 → 慣れて不安がなくなるまで、数週間続ける
2) その子に合うスモールステップを計画・実行
~ 8) 実践の後には必ず振り返りをし、成功・不成功の内容を分析。反省点を次のステップに生かす
娘さんに合う挑戦を見つけ出し、娘さんのペースに合わせてそれを繰り返しています。子どもによって不安度も進みぐあいも異なるので、とても重要なことですね。ステップ実行の前に、「どのくらい難しい?」「私が隣にいたらできそう?」と確認し、一緒に計画を立てたとか。
モチベーション:4回できたらアイスクリームがご褒美、少しずつ難しいステップへ。
4) モチベーションや明確な目標を持たせる
4歳半の子どもなので、好きな食べ物や玩具をご褒美に。ステッカーチャートなどでも効果があります。
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<ケリーさんのスモールステップ計画全容>
① ひとりでお菓子をレジまで持っていく 失敗
② 一緒にレジに行き、ケリーさんがカートから買うものを出して隣りにいる娘に渡し、娘がそれをレジのコンベアベルトに置く 数週間繰り返し クリア
③ 母親の隣でなく向かい側に娘を立たせ、買うものをコンベアベルトに乗せさせる(母親のほうが店員に近い位置) しばらく練習 クリア
④ 娘が店員の近くまで行って、買うものをコンベアベルトに乗せる クリア
⑤ 最終目標: 店員にクレジットカードを渡す ← ここでも更に細かな計画を立て、時間をかけた クリア
ケリーさんの言葉:
子どもが成長していく段階ごとに、これほど幅広いエクスポージャー法があると知らなかった。また、娘のSMがどれだけ深刻なのかもやってみるまで判らなかった。
スモールステップは一回でうまくいくものではない。マラソンのように長期戦になると心得たほうが良い。子どもが慣れるまで何度も繰り返す必要も出てくる。子どもを励まし、小さいステップができたら褒めること。常にチャレンジし続けることが重要。
本当に小さなチャレンジでいいんです。週に3回くらい、買い物などのついでに親子で頑張ってみてください。不安に対する耐性を身につけるには、不安と向き合うしかないのです。
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