6月ももう半ばを過ぎたというのに、イギリスではまだ肌寒い天候が続いています。去年は春から夏まで天候が良かったので、また通常運転に戻ったかなという感じかな…。
ケンジントンにあるデザインミュージアム。スタンリー・キューブリック展は見ごたえがありました
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「教師に伝えて欲しいこと」 SLT リビー・ヒルさん “What would you have wanted me to tell your teachers?”
リビー・ヒルさんは、CBTやアニマルセラピーなど多面的なアプローチでSM治療に取り組むSLT(言語療法士)。彼女が主催する言語療法センター、Small Talkの取り組みについては、 4年前に記事にしました(詳しくは『SMIRA2016年コンファレンス(その2)』をご参照ください)。
リビーさんは緘黙のティーンの治療にも多く関わっており、全員にかなりの改善があったと報告。今回の講演では、30名の緘黙のティーンの協力を得、治療の現場から彼らの生の声を届けてくれました。
<緘黙のティーンと保護者への質問>
1) SMを発症した時期は?
幼稚園・小学校入学時 / セカンダリースクール(12~16歳)入学時(原因:社会不安、虐め、ASDなど)
2) 今もSMの影響を感じているか
- ティーン自身がまだSMだと感じている 22人
- 保護者がまだSMだと感じている 6人
<緘黙のティーンの声>
- もっと緘黙を理解して欲しい(話すことを拒否している訳ではない)
- 緘黙症状の改善には担任の役割が大きいと感じている(75%)
- 学校での不安を減少させることが、自信につながる(95%)
- クラスでの席順はとても重要 → どの席がいいか訊いて欲しい
- クラスで目立つのが嫌 → 支援も、褒める時も他の子に判らない様にして欲しい
- 長期に渡って同じ支援スタッフをつけて欲しい。継続して関係を保ちたい(75%)
- 自分から助けを求めることができない(100%) → 先生から聞いてくれると助かる
- 先生に何か聞かれて応えることができなければ(非言語も含め)、とばして欲しい
- 先生やTAとコミュニケーションを取るツールが欲しい(75% 例:WhatAppなどのSNS機能)
- 場面緘黙であることで、周囲から好奇/哀れみの目で見られていると感じる(67%)
- 信頼できる友達がいると安心(100%)
- 小グループ活動の時に信頼できる友達と一緒だと安心(93%)
- 放課後の活動に参加したいけど、できない(67%)
リビーさんから:
クラスにひとりだけでも信頼できる友人がいると、学校生活がぐんと楽になる。緘黙症状の改善には小グループ活動が効果的。休み時間、特にお昼休みはSMのティーンにとってトリッキーな時間。他の子たちと一緒にご飯を食べられないこともあるので、適切な配慮を。また、課外活動では、話せなくても役割を考慮してあげると良い(演劇部だったら、照明や音響、衣装係など裏方の仕事を)
不安を感じている状態だと、情報処理に時間がかることが多い。課題を与える時は、何を求められているかを明白にすること。SMのティーンは目立つことを嫌がるので、クラス全体に指示を出した方がいい。また、次にする活動を事前に教えておくと安心できる。
セカンダリースクールでは子どもの自立を推奨し、家庭との連絡が少なくなる傾向にあるが、連絡は密に取ること。介入・支援することで、学業・社会性ともに進歩が見られることが多い。緘黙や不安が試験の結果に影響を与えている場合は、試験会場や試験の方法、時間を延長することなどを考慮に入れる
SMのティーンは自分のSMに対する周囲の反応に非常に敏感。言動には注意が必要。場面緘黙と関係ない分野で、子どもを評価してあげる必要がある。
みく備考:
イギリスの公立校システムでは、小学校(5~11歳)の次は、5年間のセカンダリースクール(12~16歳)に通います。2018年調べによると、小学校の全校生徒数は平均で280名ほど、それがセカンダリーになると平均で1000名近くに膨れ上がります。
小学校では1学年が平均1、2クラスとアットホームな感じなのに、セカンダリーに上がると途端に規模が大きくなり、大学のような移動教室式に。ベースになる教室や自分の机はなく、カバンを持ったまま次の教科の教室(別棟のことが多い)に移動しなければなりません。休み時間やランチタイムにいられる教室がないため、緘黙のティーンにとっては、過酷な環境といえます。
(息子がセカンダリーに入った時は(2012年)、学校との距離がとても遠くなったように感じました。連絡は学校のサイトで確認、担任や教師との面会は、メールでアポを取る形式。学年末の懇談会やたまにある保護者会をのぞき、学校に行った記憶があまりないです。そういえば、入学時の保護者会では「子どもを自立させるため、保護者はあまり学校のことに口を出さないように」と言われたような…)。
小学校で緘黙症状が改善したのに、セカンダリーに入って逆戻りしてしまったというケースも…。セカンダリーでは複数の小学校から生徒が集まるため、新たな友達関係を築く必要があります。緘黙児が新しいクラスで新たな友達の輪に加わることは、かなりの難関…。思春期の生徒がそれぞれ悩みを持つ難しい年頃でもありますね。教科数も担当教師もぐんと増えることから、学校での支援も難しくなると予測されます。
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