昨日、イギリスでは今年の最高気温、34度を記録しました。刺すように暑い陽射しの中、徒歩とバスを使ってウォーキング仲間と近隣のオープンガーデンへ。木陰でいただいた紅茶とケーキが美味しかったです。お隣のフランスは45度を超えたそうで、地球温暖化を防がないと今後どうなってしまうのか恐ろしい…。
さて、今回で今年のSMiRAコンファレンスの記事もやっと終わりです。長い間おつきあいくださった方、ありがとうございました。
SLTのマギー・ジョンソンさん(中央メガネの女性)に支えられ、プレゼンや講演に臨むSMiRA会員たち。(左端ナターシャさん、中央奥ジェーン・サラザーさん、右端クリスティーナさん)
4) 緘黙の大学生による短い講演とプレゼンほか SMiRA会員
場面緘黙を抱えながら大学で学ぶナターシャさんとクリスティーナさんは、10代後半に緘黙を克服し始めました。かなり話せるようになったものの、いまだその影響が残るといいます。
- ナターシャ・デールさん(23歳) イーストアングリア大学 心理学専攻
2017年のコンファレンスでも講演したナターシャさん(23歳)(詳しくは『ナターシャ・デールさん (21歳)の緘黙克服』をご覧ください)は、最近になってASDの診断も下りたそう。イギリスの大学では、1年目は大学の寮で共同生活を経験することを推奨しています。生徒の部屋は個室か少人数でのシェアですが、キッチン、居間、バスルームはグループで共用。彼女はこの共同生活がとても辛かったと語ってくれました。
見知らぬ人たちと生活を共にする不安に加え、常に聞こえる人の声や生活音が気になり、部屋から出るのが怖かったとか。また、ルームメイトの場面緘黙に対する理解が浅く、孤独を感じたとも…。
その反面、大学には障害を持つ学生への支援サービスがあり、支援者に相談できるメリットも。偶然にも、クリスティーナさんと同じ大学だったため、頻繁に会うことができたのも大きな助けになりました。
- クリスティーナ・キム=シムズさん(24歳) イーストアングリア大学 アート修士課程専攻
クリスティーナさんは、自分の作品も含めた画像を使ってプレゼンを行いました。アートが場面緘黙を克服する助けとなり、話す代わりに自分を表現できる媒体となっています。また、FBグループやSNSで多くの人と知り合い、支援を受けたとか。8月にはロンドンで個展を開く予定で、今後の活躍が楽しみです。
(余談ですが、私がコンファレンス会場に着いて受付に行くと、クリスティーナさんがいました。どうやら不安が大きく、受付にいたリンジーさんに空き室(控室)はないかと相談中のよう。こうやって、自分から配慮をお願いできることは強みだなと思いました)
この後、会場にいないメンバー2人の話もありました。
- サブリーナ・ブランウッドさん(39歳) オープン・ユニバーシティ 心理学専攻
2015年にBBCのドキュメンタリー番組で緘黙の成人として紹介され(詳しくは『BBCが大人の場面緘黙を紹介』をご参照ください)、2016年のコンファレンスに登壇(詳しくは『サブリーナさんのプレゼンテーション』をご参照ください)したサブリーナさん。彼女はオンラインでの通信教育を選び、週に一回メンタルヘルスの支援を受けているそう。
- スザンナさん(19歳) バース大学 文芸科専攻
彼女もまた大学での寮生活が大きなネックとなりました。不安で共同キッチンに行くことができず、誰かに聴かれるのではという心配から、母親に電話することも、音楽をかけてリラックスすることもできなかったそう。寮を出て、出席できない時は講義をスカイプで聴講するなど、現在はうまく対応できているとのことです。
みく備考:
場面緘黙の人は、ASDの特性でもある感覚過敏を持つことが多いとされています。年齢があがるにつれて症状が和らぐことも多いようですが、不安な状態になると過敏さは増す傾向に。
また、生まれ持った不安になりやすい性質は、成長してもそれほど変わらないとも言われます。自分なりの対処法を身に着けていけば、徐々に社会不安とうまく付き合っていけるようになるのかな…。
新しい環境に慣れるまで頑張れればいいですが、無理は禁物。どんな配慮が必要か、どこまで我慢できるか――人によって違うので難しいですが、なんとか落ち着ける環境を整えられるといいですね。でも、それには周囲の理解が必須です。
夢に向かって一歩一歩進んでいる彼女たちの姿は、今緘黙で苦しんでいる子どもや成人、保護者に大きな希望と勇気を与えてくれたと思います。
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