緘黙児とイジメ


前回の投稿から、またあっという間に時間が経ってしまいました。その間、元緘黙の息子は生まれて初めて家を出て、大学の寮へ。イギリスの大学には入学式というものがなく、息子と荷物を車で寮の小部屋に送り届けて、それでお終い…。

空っぽになった自宅の息子の部屋を見ると、やっぱり淋しい~😢でも、少しずつ大学生活に順応できているようで、ほっとひと安心。イギリスでは18歳を過ぎると成人と見なされるため、大学で何かあっても本人の承諾がなければ家に連絡は来ません。まだまだ内気な彼が、大学生活を無事乗り切れるよう願っています。

  

 当日は和食のランチで送り出しました。自炊できない寮なので、イングリッシュフードの毎日に…

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さて、場面緘黙のために虐めを受けた――そういう話をよく聞きます。特に、交友関係が複雑になってくる小学校中高学年、中学校で多くなるような印象。

緘黙児って虐められやすいのでしょうか?

幸いなことに、息子の場合は緘黙が理由で虐められたことはなかったような。緘黙になったのは小学校に入学したばかりの4歳半で、学校での会話にだいたい支障がなくなったのが7、8歳のころ。低学年のうちに話せるようになったため、虐めに遭わなくて済んだのかもしれません。

今でも鮮明に覚えているのは、レセプションクラス(4~5歳)でお姉さん格の女の子達によく抱っこされていたこと。早生まれの息子は、クラスで最もおチビさんのひとり…。女の子は成長が早いし、きっとなにも喋らず動けない息子を不憫に思ったのでしょう。まるで赤ちゃんのような扱いに笑ってしまったのですが、虐められはしませんでした。いつも友達のB君にひっついて、守ってもらっていたようにも思います。

低学年くらいまでの子どもって、「変だな?」と思っても状況をそのまま受け入れてくれます。ある日、クラスの女の子を家で預かったところ、息子が普通に話しているのを見て最初は怪訝な顔に。でも、すぐに慣れてそれが当たり前のように接してくれました。素直というか、単純というか、許容力があるというか、緘黙治療の早期発見・介入が効果的なのは、周囲の子ども達のこういった特性に負うところが大きいのかも。

過去のブログで何度か触れましたが、子どもの発達において、よく「9歳の壁」という言葉が出てきます。9歳頃になると、子どもは物事をある程度対象化して認識できるようになり、自分と周囲を意識しはじめます。ちょうど小学校の中学年にあたり、自己肯定感や否定感が育ち始めるのはこの頃から。

緘黙児自身もですが、周囲のクラスメイト達も自我がどんどん発達して、周囲や集団の中の自分を意識するように。また、仲間意識が強くなるギャングエイジでもありますよね。特定のグループに仲間として受け入れてもらえるかが問題になってくると思います。

仲間意識を持つには、「話すこと」よりも、周囲とコミュニケーションが取れているか、親しい友達はいるかなど、子どものコミュ力によるところが大きいような気がします。また、緘黙の度合いや、他に不安障害の症状があるかどうかも問題になってきそう。緊張で固まって動けなければ、コミュニケーションどころじゃないですよね…。

また、学校の方針や雰囲気、担任の態度なども重要になってきそう。クラスの雰囲気がよければ、虐めも起こりにくいのではないでしょうか?

子どもが中学生になる頃には、思春期に入って自分の内面世界に気づき始め、自意識 と客観的事実との違いに悩んだり、葛藤したり。自己のアイデンティティーを確立し始める時期でもあります。周囲のみんなが生き方を模索しているため、排他的になりやすい年頃と言えそう。

前回、前々回のブログで取り上げた元緘黙のアーティスト、クリスティーナさんとパリス君は、セカンダリースクール(12~16歳)で初めて虐めに遭っています。

イギリスでは、小学校は小規模でとてもアットホームな雰囲気なのに対し、セカンダリースクール(12~16歳)では突然マンモス校になり、授業は大学のような移動教室式に。子どもは自立し始めることを期待され、小学校時代のきめ細かなケアに比べると、より事務的なものに変わるように思います。

小学校では登校拒否になったり、学校をドロップアウトしたりする子どもは殆どいません。でも、セカンダリースクールでその傾向が高まり、問題を起こして停学や退学になる子どもが増えます。二人が虐めに遭ったのは、こうした学校のシステムによるところもあると考えられます。

緘黙児は繊細で傷つきやすく、自己肯定感を育てるのが難しい傾向にあります。話せないうえに、自分に自信が持てないと、自意識過剰になって余計に友達やクラスと関われなくなることも…。

やはり家庭や学校外で自信が持てる体験を積み重ね、自己肯定感を持つことが重要になってくるんじゃないでしょうか?家族との楽しいおしゃべり、熱中できる習い事、得意な趣味など、なんでもいいんです。勉強やスポーツ、音楽などができればクラスで認めてもらえる要因ともなるので、是非後押しをしてあげたいですよね。

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