金原氏は『選択性緘黙例の検討-発症要因と併存障害を中心に』の中で、自分の研究結果をH.クリステンセン(2000年〝Selective Mutism and comorbidity with developmental disorder”)のそれと比較しています。H.クリステンセンは、欧米では唯一、併存障害のケースも含めた研究結果を出しています。
金原・発達に関連する障害との併存率: 60%
- PDD: 52% (疑いのあるケースも含めると70%)
- 精神遅滞: 13%
- LD: 9%
- (社会不安障害: 65%)
クリステンセン・発達に関連する障害との併存率: 69%
- アスペルガー: 7%、
- 言語・コミュニケーション関連の障害: 50%
- 発達性強調運動障害: 17%
- 軽度精神遅滞: 8%
- (不安障害: 74%)
『選択性緘黙例の検討-発症要因と併存障害を中心に』かねはら小児科・金原洋治著(2009年 日小医会報)より引用
…………………………………………………………………………………………..
ここで注目したいのは、PDD(広汎性発達障害)とアスペルガー障害(ASD自閉症スペクトラム障害でなく、それに含まれるアスペルガーのみ?)ですが、何故か45%も違いがあります。ASDだったら、違いはもっと少なくなるんでしょうか?とっても謎です。
『場面緘黙Q&A』には、「クリステンセンの研究対象はDSM-IVの診断基準で抽出された緘黙児ですが、アスペルガー障害やコミュニケーション障害の緘黙児は除外されていません」とありますね。(私はクリステンセンの論文の抄録を読んだだけなので、不勉強ですみません)
また、注目したいのは、金原氏の併存障害の中には、緘黙児の3分の1が持つといわれる、言語やコミュニケーション関連の発達障害(吃音、音韻障害、受容-表出言語の障害など)が含まれていないこと。
これは、緘黙児に言語能力テストを行えないため、言語やコミュニケーションに問題があるかどうか解らないという理由から?それとも他に理由があるのでしょうか? 言語能力(特に、話し言葉)については、IQテストでどの程度判断できるんでしょう?
異なる研究であるにせよ、併存している発達障害の種類がバラバラなのも気になります。
こうやって見てみると、「発達障害」という言葉が示す障害の範囲が、使う人やケースによって、明確に定められていないのではという疑問も湧いてきます。日本で発達障害という場合、どうも「自閉症関連の発達障害、LD、ADHD」といった狭い範囲で使われているような…。
またまた続きます。
みくさん、おはようございます。この前からブログに Twitter ボタンがついていますね。Twitter で取り上げてよいのでしょうか?
せっかく勉強になる記事なので、もっと多くの人に読んでもらいたい気がします。
富重さん
こんばんは。お久しぶりです。
はい、どうぞよろしくお願いします。弱小なのでありがたいです~。
今まだ仕事が立て込んでいて更新できないのですが、土曜日にカースティさんにもお会いしてきました。また時間ができたらレポートしますね。
お忙しい中、お返事ありがとうございます!早速 Twitter で取り上げてみました。「日本では発達障害と見なされやすい?(その1)」の記事にリンクを貼ってあります。
https://twitter.com/nesamimus
富重さん
Twitterで取り上げてくださって感謝です!ありがとうございました!