日本では発達障害と見なされやすい?(その1)

仮説1: A)日本では場面緘黙が広汎性発達障害と診断されやすい傾向にある

まず、場面緘黙が疑われる場合、どんなルートで診断されるのかイギリスと日本で比較してみたいと思います。私はこちらでの経験しかないので、間違っていたらご指摘ください。

●イギリスの場合

通常、場面緘黙かどうかを見分けるのは言語療法士

まず言語療法士により、言語能力テストが行われる。発達に何らかの問題があるかもしれないと判断した場合は、心理士に連絡が行き、必要があれば発達テストが行われる。(”The Wandsworth Care Pathway for Selective Mutism” 参考。これは、ロンドンのワンズワース地区における場面緘黙治療のケアルートを示した資料です)。私の見聞きしたところでは、緘黙児が発達検査を受ける事はあまりないようです。

ちなみに、イギリスでも全国的に定められたケアルートや支援方法がある訳ではなく、地区やそれぞれの学校によって異なっているのが現状です。SMIRAの本拠地であるレスターシャー州と言語療法士マギー・ジョンソンさんが働くケント州では、特にシステムが整っています--というか、彼らが頑張って整えたのですが。同じロンドン市内でも住んでいるエリアや学校で受けられる支援がかなり違うので、宝くじのような感じですね…。

●日本の場合

場面緘黙かどうかを見分けるのは、児童相談所や発達センターなどの相談機関や医療機関に所属する医師または心理士、相談員(?)(正式な診断ができるのは医師のみ)

まず、保護者は相談機関を訪ねたり、学齢期の子どもの場合はスクールカウンセラーに相談することが多いという印象があります。そこで紹介されて、医療機関を訪ねることになるのかな?緘黙児にWISCなどの発達検査をする傾向が強い印象があるんですが、違っていたらご指摘ください。

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息子の場合は、学校側に場面緘黙の知識がなかったため、最初に小児クリニックの門を叩きました。ですが、通常は学校に言語療法士が来て子どもの様子を観察してから、言語能力テストをすることになると思います。イギリスでは学校と地区の医療機関が連携していて、特別支援教育を受ける子ども達のために、心理士や言語療法士などのセラピストが定期的/不定期的に学校に来てくれるのです。

言語療法士が学校でどうやってセッションをするかというと、授業中に子どもを連れ出して、別室で個別のアセスメントやセラピーを行なうんです。私にはとっても不思議なんですが、楽器の個人レッスンも各教師が学校へ出張してくるんですよね。授業を抜け出して15分~30分のレッスンを受けるんですが、勉強が遅れないか気が気ではありません。でも、それが普通です。地区の陸上競技会やコンテストなどでも、選ばれた子が授業を抜け出して参加したり…。

余談ですが、だからこそ子ども達は特別支援を受けている子どもに、それほど違和感がないのかもしれません。誰かが授業中に抜けるのが普通なので、「あっそう」という感覚なのかなと。教室内もいつもガヤガヤしてるし、基本的にグループ学習だし。その点では、日本で緘黙児が言葉の教室に通う方が、心理的に大変じゃないかなと思います。

長いので、ここで一旦切りますね。

関連記事:緘黙は発達障害なのか?

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日本では発達障害と見なされやすい?(その1)」への4件のフィードバック

  1. みくさん、こんにちは。せとっこです。
    ちょっと長くなってしまいました、ご容赦下さい。

    日本の場合、見分けるプロセス(相談や診断)に入る手前にまず問題があると感じます。仕組みとして早期発見が難しいこと。親の気付きや経験ある保育士の気付きによるところ大きい事。逆に周りの気付きが無ければ、場面緘黙児は見過ごされてしまいがちであると思います。

    愛娘の場合、1740gという低体重児で週数に比して発達遅延での出産(帝王切開)でした。1ヶ月程度愛知県心身障害者コロニーのNICUに入院。以降は少しずつ標準体重に近づいていきました。低体重児は3歳までは通常分娩のお子さんより、定期健診が多く、3ヶ月毎でした。にも関わらず、場面緘黙や発達障害などの兆しや気付きは無かったと記憶しています。

    我が家の場合は6年前の年中(6歳1ヶ月)時、中日新聞で場面緘黙という症状の記事を妻が発見。妻の「これだ!」という気付きが全ての始まりでした。そこから、近所の小児科に行き、相談した結果、長女が斜視で定期的に通っていた、愛知県小児保健医療センター/心療内科の紹介状を貰い受診しました。(2ヶ月待ち)

    心療内科では、知能検査(田中ビネー知能検査Ⅴ)、問診(親からのヒヤリング)の結果、場面緘黙と診断されました。その時点で広汎性発達障害とは言われていません。知能検査は初対面の先生に対し特に嫌がる様子は無く、スキップしながら検査室に入りました。緘黙も無かったようです。ただし、実際に検査が始まると、最初の問題で躓いてしまったため、緊張が一気に高まり、固まってしまった様です。先生の機転で簡単な問題に切替、「やれる」課題が続くと、検査に取り組めるようになったようです。

    知能検査の結果は、知的な能力は2学年分の差(4歳3ヶ月程度)があり、軽い遅れの範疇とありました。正直、夫婦でショックを受けたことを思いだいます。ただし、本来は問題の出し方を変えてはいけないため、今回理解力の程度を確認するため意図的に出し方を変えたため、大幅に変化させた課題は点数に加算されていません。との条件付きでした。

    そして、2年後の小学2年秋(8歳6ヶ月)、WISC-Ⅲを実施。全体所見では、軽度の遅れに該当。その時は前回と違い、検査に対する不安が高く、母親が同席しました。特に言語性検査の「単語」と「理解」は全く答えることができず、母親のほうを振り向くか黙ったまま横を向くことが多かったようです。母親も心の中で、どうして分からないの?いつもなら出来るんじゃない?と何度もつぶやいたそうです。

    事実として、知能が遅れている。それも2回の知能検査で。知能が遅れている・・・知恵遅れ・・・障害・・・やっぱり小さく生まれたから・・・など頭を駆け巡りました。そこから私の図書館通いが始まり、調べれば調べるほど、自閉症スペクトラム(自閉症やアスペルガー症候群など)の本ばかり目が行くようになりました。ただ、『自閉症は生まれつきの障害であり、中枢神経系が生まれつき上手く機能しない障害である。』と目にした時、愛娘は本当はどっちなんだと強く知りたくなりました。何故なら、これまでの成り行きを見守るような受け身な診察ではなく、投薬や治療方法などアプローチが全く違ってくるのではないかと、素人ながら考えたためです。

    結果、主治医の見解はアスペルガー症候群など持ち合わせている可能性はあります、ただし、それは今重要では無いと思いますとはっきり言われました。少しずつではあるが、診療の度に良い変化(出来ることが増えている)が報告されているからだと思いました。

    学校では臨床心理士の資格を持つ先生に1・2年生と2年連続で担任して頂き、毎週水曜日の授業後に箱庭療法や行動療法を実践頂きながら、普通学級に通っていました。担任の先生にも、懇談時に娘はアスペルガー症候群でしょうか?と聞いたことがあります。その時も、はっきりとは言及されず、授業にはついていけているので、経過をみていきましょうでした。

    次回の心療内科は11月にあります。その時に知能検査を受ける予定をしています。みくさんの疑問、場面緘黙が疑われる場合、どんなルートで診断されるのか。その仕組み(システム)について、主治医に質問してみたいと思います。

  2. せとっこさん

    娘さんの発達についての詳しい経過を教えていただき、ありがとうございました。
    次回の診療内科で日本の場面緘黙の診断ルートを探ってくださるということで、どうもありがとうございます。

    親は子どものことが常に気がかりで仕方ありませんよね。でも、子どもの成長する力って親が思っているより、もっともっとすごいと思うんです。どんな子でも可能性の塊だから、より成長できるように支援してあげたいなと思います。

    うちの子は赤ちゃんの頃から非常に敏感で、自閉症の特性のひとつとされる感覚過敏があり、2歳になる頃から抑制的な気質がだんだん表面に出てきました。
    だから、私は赤ちゃん時代から「あれっ、この子は他の子達とちょっと違う」という感覚を持っていたんです(今はHSPだと思ってます)。
    発達の問題はないように見えても、場面を切り替える(新しい場所へ行く、新しい人に合わせる)ことにものすごく抵抗があり、非常に頑固な部分がありました。
    例えば、家族やいつも遊んでいる友達と一緒の時はものすごくオシャベリなのに、一人新しい子が仲間に入った途端に、固まってしまうとか。仲良しグループで子ども達(3歳頃かな)を遊ばせている時に、新しいゲームをさせようとするとうちの子だけやらなかったり…。

    もしよかったら、娘さんに抑制的な気質があるかどうか、物心がつくようになってから対外的に引っ込み思案になったかどうか、教えていただけますか?

    私は9月から毎週水曜日に自閉症児専門校でTAの見習いをしています。(5人のアスペの男の子達のクラスなんですが、みんな本当に可愛い!これが自閉症だなと思うのは、会話のキャッチボールがうまくできないところで、それが明白に判ります)。私立の学校なので、校内に言語療法士と作業療法士がいます。今度、機会をみつけて、どのようなテストを使ってASDを診断するのか訊いてみようと思います。

    今月末くらいまでかかる仕事が2つ入り、コメントのお返事やブログの更新が滞るかもしれません。今までにボチボチ書いていたものを、何とかあげるようにしてみようと思ってますが…。

  3. みくさん、こんにちは。返信を義務に感じないで下さい、マイペースでお願いします。
    勝手に書き込みますし、私もマイペース&Small-stepで行きたいので。。。

    Q:もしよかったら、娘さんに抑制的な気質があるかどうか、物心がつくようになってから対外的に引っ込み思案になったかどうか、教えていただけますか?
    A:愛娘の幼稚園は3年保育ですが、入園前の一年間(3歳)、親子で週一回遊ぶ未就園児保育に参加してました。その頃から、母親は愛娘が他の子どもさんと少し違う、変だなぁ・・・と違和感を感じていたようです。具体的には、
     ・集団の中には入りたがらず、一定の距離を持って周りから見ている。
     ・手の汚れることをやらない。(紙粘土や砂遊び)
     ・無表情、喋らない。(当然笑わない)
     ・ママから離れず、そばに居なくなると不安になり、泣く時もあった。
    母親は、
     ・恥ずかしがりやで人ごみが嫌いなんだ。
     ・潔癖症なんだ。
    と違和感を感じながらも、自分を納得させていたようです。

    幼稚園入園式の当日、父親と母親がそばに居ないと気が付いた時、大泣きしました。そんな状態なので、5月後半頃までは、妻が教室に付き添うことで、少しずつ慣れていきました。担任(若い先生)と副担任(ベテラン)の働きかけもあり、少しずつ母親が教室に居る時間を減らしていき先生方に慣れていくことで、幼稚園を好きになっていき、6月ごろからバス通園に切り替えました。

    幼稚園バスは通園途中で見かけたりして不安は無かったようで、逆にバス通園は好きみたいでした。幼稚園を好きになったことで、母親と離れる不安より、幼稚園に行く事が楽しくなったみたいです。逆に土日が休みであることが理解できずに休みの日も幼稚園に行きたがり、母親と先生で説明して理解をさせたそうです。

    それでも、みんなの前では飲食ができず、半年ほど絶食とほぼ絶飲だったようです。先生の努力でまずは職員室でおせんべいを食べることから始めて頂き、徐々にクラスで食べられるようになりました。おトイレは先生の声掛けで行っていたようです。

    ある日、幼稚園の花壇で転んでしまい、膝を大きく擦りむいていました。先生にも言わず、泣き声も出せず、手で傷を隠し、一人で耐えていたらしく、母親が迎えに行くまで、先生は気がつかなかったようです。病気・怪我・事故の時、どのように対処させるべきか悩みました。

    何故緘黙症状を引き起こしたか、その時期ときっかけは分かりません。幼稚園の頃、字や絵を書く時に片方の手で囲いながら、人に見えないようガードして描きました。当初は絵をバカにされたとか笑われたといったトラウマが場面緘黙の原因か?と考えたこともありました。しかし、今考えると、神経質というか感受性が強いため、自分の中で他の子よりもできないと、劣等感持っていたのかもしれません。小4の現在は、はっきりと「だってあーちゃんは絵が下手だもん!」と劣等感を持っています。

    そこから考えると、愛娘は場所(幼稚園)や活動(授業や遊び)に対する不安より、人(特に同じ年の子ども)に自分のやっている事を見られるのが嫌という不安が強かったと思っています。

  4. せとっこさん

    再び丁寧なご返答ありがとうございます。
    娘さんの幼年期の様子、息子と似てます~。やはり根底にあるのは抑制的気質のような気がしますね。

    実は、忙しくなりかけたところに、Knetからの質問に対するカースティさんの返答が届きました。その翻訳などを優先してやってますので、また後でお返事させてくださいね。
    すみません。

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