マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その2)

この3月に開催されたSMIRAコンファレンスで、イギリスの緘黙治療の第一人者、マギー・ジョンソンさんが、小学校中・高学年&ティーンのための支援方法について講演されました。その内容をKnetと拙ブログに公開する許可をマギーさんから得ましたので、概要を少しずつ翻訳してご紹介したいと思います。

なお、内容の著作権はマギーさんに属しますので、この記事の転記や引用は固くお断りします。年が上の子どもへの支援の詳細は、緘黙支援のバイブルと呼ばれるマギーさんとアリソン・ウィンジェンズさんの著書『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual Speechmark社)』に掲載されていますの第二版(2015年春/夏出版予定)に新項目として掲載される予定です

《緘黙に苦しむ小学校中・高学年生&ティーンの支援》

場面緘黙アドバイザリーサービス 言語療法士マギー・ジョンソン著                         ケント州コミュニティヘルスNHSトラスト

1) 自己評価をあげる - (その1)からの続き

子どもを受容する

  • 学校、そして学校外の活動などで、偏見なしに子どもをありのまま受け入れる
  • 共有体験--場面緘黙に苦しむ他の子どもやティーンと会ったり、連絡を取りあう。言語療法士に対しては、場面緘黙と訥弁の子どもを一緒に活動させたり、グループ活動を検討するよう奨励。FBやインターネット上でSMの子ども/ティーン用のグループに参加する

*みく注: 講演会では、重症の吃音に苦しむティーンの学校での受容例(教師、TA、クラスメイト)を映像で紹介。周囲の理解と支援があれば、学校に居場所ができ、モチベーションもあがることが判ります。 https://www.youtube.com/watch?v=cWeKiZS-dxM&hd=1

担任の取る態度や言葉だけでも、クラスの子ども達が受ける影響や態度は随分変わってくると思います。例えば、うちの息子(当時4歳)は緘動のため課題ができなかった時期がありました。「何でやらないの?」と訊ねるクラスメイトに、担任は「○○君は準備ができたらやるから、いいんだよ」と諭していました。自分のペースでやればいいと言ってもらえて息子も安心できたと思いますし、クラスメイトも「そういうものか」と納得したと思います。子どもがクラスで孤立しないような雰囲気を作ることは必須ですね。

2) 場面緘黙を理解し、自分でコントロールできる”症状″と捕らえる

  • 場面緘黙を外在化させるために必須 - 緘黙は彼らの個性ではない
  • 場面緘黙を克服する唯一の方法は、本人が自ら不安と向き合い、その時々に可能なステップを一歩ずつ踏んでいくこと - これは他の誰でもない、本人しかできないこと

<事例>

1) 場面緘黙とASDを併せ持つ14歳の少年

マギーさんが送ったハンドアウトを使い母親が2)を説明したところ、少年は非常に腹を立てました。(多分、誰かが話しているのを聞いたのでしょう)彼は地方自治体がこの問題に対処し、治療をしてくれるものと思い込んでいたのです。怒って部屋を飛び出し、その後この件については触れませんでした。

その週末買い物に行った際、突然彼の姿が見えなくなりました。母親がパニックに陥りそうになった時、少年は雑誌を手に戻ってきました。生まれて初めてひとりでニュースエージェントに行き、毎週取り寄せている雑誌を自分で取ってきたのです。驚く母親に、少年はすました顔で、「自分でやるようにしたら、怖くなくなるって言ったでしょ」と告げました。

2) 学生時代を通して場面緘黙に苦しみ、その後克服した若者

「最も開放されたのは、場面緘黙が自分の資質ではなく、不運にも罹ってしまった(アトピーのように)ものと捕えるようになったこと。一旦このような見方を始めると、何とかその症状と共存することを学び、さらには対処し、克服できるものと考えられるようになりました。今でも不安になりやすいですが、もはや不安が私をコントロールするのでなく、私が不安をコントロールしています」

3) 学生の頃ずっと緘黙に悩まされたが、現在は回復している若者

「-学校の外で、私の問題を知らない人たちとの間で自信をつけることに焦点を当て、怖いけれどやれそうなタスクを、難度をあげながら自分に課していきました。私のことを、ちょっと大人しい子と思っているだろう人たちと交流すればするほど、自信がつきました。それでも学校では話せませんでしたが、大学に入学して緘黙を克服することができたのです」

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