『私はかんもくガール』―場面緘黙児のなんかおかしな日常って?


今年2月に出版されたコミックエッセイ『わたしはかんもくガール』(合同出版社)は、元緘黙児でイラストレーター&2児の母親でもある、らせんゆむさんの作品です。(実は、私も帯のお手伝いさせていただきました)。

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もう読まれた方も多いと思いますが、今さらながら感想を。まず最初に思ったのは、やはり日本のコミックカルチャーはすごい!ということで、文字だけだと判りにくい緘黙児や抑制的な気質の子どもの気持ちや態度、表情などがつかみやすいですね。苦悩の末、どんな風に緘黙を克服し、後遺症と戦ったかをユーモアたっぷりに綴っています。

らせんさんが緘黙になったきっかけは、幼稚園に入園したこと。初めての公の場で緘黙になる子どもは多いですが、それ以前の3~4歳の段階で自ら「外ではしゃべらなくていい」と決心するなんて…とても早熟で利発な子だったのでしょう。そして、とても感受性が高かったんじゃないでしょうか?それゆえに、家庭環境からの影響も強く受けただろうと想像されます。

私は所属しているTAエージェントでも、ボランティアをしていた特別支援校でも、愛着論理(Attachment Theory)の研修を受けました。乳・幼児期に少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持できないと、子どもは社会的・心理的な問題を抱えるようになるというものです。Wikiの愛着論理の説明: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E7%9D%80%E7%90%86%E8%AB%96

両親が喧嘩をしていると、子どもは自分のせいではないかと不安になります。その上、無条件で愛してくれるはずの母親が、時として自分を否定するような言動を取るというのは、めちゃくちゃ辛くて混乱することだったに違いありません。

軽妙なタッチで描かれていますが、緘黙と家庭での問題がダブルでのしかかり、それを自分だけで克服していくのは本当に、本当に大変だったと思います。

学校で話せない緘黙児は、同世代の子ども達や大人とコミュニケーションを取ることが難しく、社会的な体験を積む機会が失われがち。学校は子どもが社会性を培い人格を形成していく集団生活の場でもあるので、長く緘黙していると社会性の発達に支障をきたし、いわゆる「後遺症」が残ってしまいます。ちなみに、緘黙に限らず、話し言葉、言語、コミュニケーションに難しさを持つ子どもは、心理的・社会的な問題を抱えやすく、その影響が態度やふるまいに反映される傾向が強いようです。(2年ほど前、『Supporting Children with Speech, Language & Communication Needs』というコースで学びました)。だからこそ、家庭が安心できる場であり、のびのびと過ごせる環境であることが望まれます。

ゆむさんは社会人になってうつ状態になった時、自らクリニックに通い、たくさんの本を読んで思考を転換する強さを持っていました。そして、「母も母なりにしんどかったんだろうなあとは思う」、お父さんと旅行した際「初めて父の心境や苦労を聞けた」と、不安や怒りを浄化し、過去を受け入れて親に思い遣りを持つまでに自分の気持ちを整理できたよう。すごいことです!

ゆむさんを支えていたのは、「好きなこと」で培った自信だと思います。「やりたい」ことへの情熱と追求心は半端なく、苦境を創作意欲に変えてきた面もあったでしょう。もともと才能があったところに、努力を積み重ねて希望する職業に就き、色々な人と関わって自信をつけていった結果、緘黙もうつも克服できたのではないでしょうか。

「好きなこと」「得意なこと」の力ってすごいなと、改めて思いました。

それと、私も母親なので、読んでいてお母さんのことが気になりました。彼女は彼女なりに娘のことを愛し、心配していたのではないかな?好きな習い事を続けさせたり、美術系の高校に進学させたり、ゆむさんの個性を尊重し才能を認めていたと思います。ただ、自分が問題に直面すると、その不満のはけ口が自分より弱い存在である子どもに向かってしまった…特に攻撃しやすい対象だった長女のゆむさんに…。

そういう私も、時々息子に怒りを爆発させてしまいます。何かにつけて慎重な性格なので、「早く!早く!」とガミガミ急がせることもしょちゅう…注意しないといけませんね。緘黙支援をしている時、子供や自分のことで悩んでいる時、のめり込んでしまってどうしても視野が狭くなりがちかと思います。母親にも話し相手や息抜きがとても大切ですね。

*ここ数日間サーバーがダウンしていて、ブログへのアクセスができない状態でした。もしアクセスしてくださった方がいらっしゃったら、どうもすみませんでした。

 

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