SMIRA2016年コンファレンス(その2)– 二人の少女の例

言語療法士のリビー・ヒルさんの講演の続きです。

<治療例2>

小学校低学年のスージーちゃん: 話せるのは唯一お母さんのみ。父親とも、親しくしている3人の叔父とも全く話せない。

このケースでは、犬の調教を利用したスライディングイン法の説明をしてくれました。スライディングインというのは、通常は緘黙児が話せる大人(母親やTA)と言葉ゲームをしているところに、徐々に第三者(大人もしくは子ども)を入れていき、緘黙児が自分の声を聞かれる・言葉を交わすことに慣れさせていくという手法。学校や自宅の一室で行うイメージが強いですが、スージーちゃんの場合はアニマルセンターで犬を介して行いました。動物が好きな子にはぴったりですね。

どの段階で、犬の調教をセラピーとして取り入れたのかは不明ですが、多分お父さんや家族に話せるようなってからかな?まずは、スージーちゃんが、「来て」「お座り」「待て」など言葉をかけ、ラルフという名の犬をしつけました(どれ位で声がでるようになったかは不明)。慣れてきた頃、スージーちゃんとセラピストがいる部屋に叔父さんがひとりずつ入り、スージーちゃんがラルフに話しかけるところを見せました。最後は3人の叔父さんたちが見ている前で、「Come! 来て!」と大きな声を出せたそう!

<治療例3>

4歳のミリーちゃん: 家庭外では全く話せない。母親との分離不安あり。2歳半の時にリビーさんのセンターで治療を開始。

まず、関係者の教育・啓発からスタート。まず、「ただ内気なだけ」と考えていた父親や幼稚園の先生たちに、本や映像を使って場面緘黙について説明しました。遠方に住んでいたため、Skypeを利用してファミリーセラピーを行ったそう。

イギリスでは5歳になる年から小学校のレセプション・クラスが始まります。ミリーちゃんはまだ4歳ですが、昨年9月に同じ建物内にある幼稚園から小学校に進学。進学前に、新しい教室に慣れさせるため、幼稚園の教室から小学校のレセプションクラスに何度も足を運んだとか。また、新しい教室を中心に、これから使用する施設の写真を撮って写真付ストーリーブックを作成。上級生の女の子にお世話係を頼むなど、スムーズに小学校生活に移行できるよう計らいました。出席を取る際は、名前を呼ばれた子が「I am here(ここにいます)」というべき返事を、クラス全員に言わせるという工夫も。

<まとめ>

  • 取り組みは常に計画通りにはいかない。子どもの心によりそって、じっくり構える
  • 子ども、保護者、学校のスタッフのサポート体制が整っているか、省みることが必要
  • どの子も違うので、決まったルールはない。柔軟な対応を心がける

以上が、リビーさんの駆け足の講演内容でした。なお、この講演については資料が配布されず、私のメモと記憶からお伝えしているため、誤りがあるかもしれません。その点はどうぞご容赦ください。

リビー・ヒルさんのサイト Small Talk http://www.private-speech-therapy.co.uk

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