4月も半ばにさしかかりましたね。イギリスでは記録的な好天が続き、昨日・今日と最高気温が22度に達しました。でも、明日から天気が崩れてまた肌寒い天候に逆戻りするよう。
白い小花をつけた木々が続く雑木林の散歩路。ロンドンの八重桜はほぼ満開で、ブルーベルも既に花を開き始めています
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ASDとSMが併存する場合、特に注意すべきことは?
ASDの人から見ると、健常と言われる人の言葉は非常に曖昧です。私たちはそれに気づいていません。ASD児は長い質問に答えられないことが多いですが、それは文章の中に含まれる隠喩を理解できないという理由からかもしれません。また、私たちが常識としている概念を理解できていないかもしれないのです。
例えば、『いつ親友と出会ったか』という作文の課題が出たとします。まず親友がいるか、そのことを書きたいかどうか(公表したいか)、そして書くことが全部事実でなくてもいいという通念を持っているかどうか、などを考慮する必要があります。
クレアさんにはASDの息子さんがいますが、『架空のマーケットのガイドブックを作る』という課題に詰まってしまったことがあったとか。第一に、ガイドブックは事実が書いてあるものなのに、架空のことについて事実は書けないというのが理由でした。
ASDの人には隠喩が通じません。教師は課題の目的が何なのか、重要な点は何なのかなどを明確に伝える必要があります。何を求められているのか、曖昧さが残らないように丁寧に説明することで不安が減ります。また、間違えることを恐れる傾向が強いのも考慮に入れておきましょう。
スモールステップの組み方
まず、コミュニケーションロード(communication load :コミュニケーション負荷=情報伝達や意思疎通の量と質)を考慮する必要があります。コミュニケーションにはリスクが高いものと低いものがあることを忘れないこと。
まずは、低リスクのコミュニケーションから
- 曜日を順番に言う/ 数を数える
- Yes/Noの回答
- 短い回答
- フレーズを入れた回答
- 自分の意見を言う/ 自分のことを言う
例えば、学芸会でセリフを言うことは低リスクに含まれます。というのも、いつ・どこで・何を言えばいいかが明確だからです。これと同じで、声を出して読むこと(音読)も低リスク。話すことだけでなく、書くことも同じです。
反対に、誰かとの会話は自分が話題やその経過をコントロールできないため高リスク。簡単そうに思えますが、「今日は」と挨拶することも高リスクです。挨拶は会話を始めるツールとなるため、次に何かを聞かれる可能性が高いからです。「ごめんなさい」「お願い」「ありがとう」「さよなら」なども、言うことを期待される言葉であり、過去に苦い経験をしたことがある子どもには、心理的に重たい言葉なのです。
ASDの若者にとって、興味のあるもの/ことは低リスクとなるため、それに纏わるコミュニケーションを奨励しましょう。
クレアさんからのアドバイス
「まずはSMに関する周囲の理解を深めることが肝心。悲しいことに、まだまだ周知の症状ではないため、保護者が周りに伝えていかなければならないことが多いのが実状。また、ASDとの併存の場合は、「不安を減らすこと」と「不安と対峙すること」のバランスを取るのが難しいことも理解しておきましょう。いつ押していつ引くのか、その判断が難しいところ。不安に対峙する機会を潰さないこと、できるだけ多くの機会を作ることも重要です。
「息子は何かが起きた時に母親の私にも言いたがらない傾向があります」。子どもに何か嫌なことが起こった時、すぐに原因を探るのではなく、時間をあげて自分から言い出すのを待つことも重要。すぐ答えを強要するのではなく、「今言わなくてもいいよ。あとで言いたくなったら言いに来て」と声をかけましょう。「原因は学校、それとも家?」「先生、それとも生徒?」など、選択制の質問をすることも有効です。
保護者が過保護すぎると言われたり、家族のせいにされたりすることもまだまだ少なくありません。気に病まないようにしましょう。
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