場面緘黙とASDの併存率
この研究では、自閉症スペクトラム障害(ASD)が89名中34名で全体の38%でした。
なお、2009年の金原洋治氏の『選択性緘黙例の検討-発症要因と併存障害を中心に』(日本では発達障害と見なされやすい?(その3))では、ASDは23名中12名で全体の52%となっています。
アスペルガー障害やコミュニケーション障害の緘黙児を除外していない、H.クリステンセンの研究 『Selective Mutism and comorbidity with developmental disorder/delay, anxiety disorder、and elimination disorder(2000年)』では、アスペルガー症候群が7%(ASDという項目はなし)とそれほど多くありません。
発達障害以外の問題を調べた結果は、
<言語発達関連>
- 言語の遅れ 55名 (全体の62%)
- 聴力障害 3名
<迫害体験の有無>
- 被虐待児 29名
- 学校でのいじめ体験が契機 16名
驚いたことに、純粋な場面緘黙児は20名(全体の22%)のみとあります。全体の75%が介入を要する問題を抱えていると、場面緘黙の背景にある問題にもスポットを当てています。
緘黙発症から受診まで
また、大変気になったのは、緘黙の発症年齢と初診年齢にかなりの差があること。
●平均初発年齢 4.7歳
- 3歳(幼稚園入園時) 45名 (全体の51%)
- 6歳(小学校入学時) 35名 (全体の39%
- 7歳 4名
- 8歳 2名
- 9歳 2名
- 11歳 1名
(7~11歳の9名は、もともと不適応があり途中から緘黙が加わったケース)
●平均初診年齢 9.45歳
「90%の子どもたちは、集団教育の開始から緘黙があったのに、場合によっては6年間放置されておかれたことになる。緘黙は非行児とちがって人に迷惑をかけないので、放置されやすいという状況が如実に示されている」
(『そだちの科学』2014年4月号掲載、『選択性緘黙への治療(山村淳一・内山幹夫・加藤大典・杉山登志郎)』より)
もしかしたら、子どもが家で普通にしゃべっていれば、保護者はそれほど深刻に捕えられないのかもしれません。きちんと学校に通い、成績も良く、友達との交流もあり、学校から問題視されていない場合は、特に。また、児相やスクールカウンセラーには相談しても、病院の児童精神科を受診するまではいかないのかも…。
眠れない・朝起きれない、腹痛・体調不良といった身体症状が出たり、登校しぶり・不登校、学業不振、いじめなどの問題が起こってから、初めて病院を訪ねるケースが多いのかもしれません。この調査において、緘黙のみで受診した子どもが何人だったのか、とても知りたいです。
でも、問題が起こってから受診しても、緘黙も固定化しているだろうし、問題も深刻な状態になってますよね…。学校で話さないことが1ヶ月以上続いたら、保護者もですが、学校も動いて欲しいです。
全体の38%を占めるASDの子どもたちは、社会性とコミュニケーションに問題があるため、学校生活が大変だったはず。この子達は、受診するまでずーっとASDの診断がなかった訳でしょうか?学校で何らかの支援を受けていたのならいいんですが…。家族も気づかないということは、ASDの傾向くらいだったかも…それが、ずっと放置さ れマイナス体験が重なった結果、悪化したということも考えられると思います。また、精神遅滞、ADHD、言葉の遅れを持った子ども達も、授業についていくのが大変だったのでは?また、児童虐待が多いのも気になりますね…。
日本ではクラスに担任1人しかいないので、他に授業の妨害になるような子どもがいる場合、手が回らないような気がします。担任まかせではなく、子どもに何か問題があると感じたら、学校全体で取り組んでもらえるようになるといいなと思います。
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【今月は場面緘黙症啓発月間です】
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- 周囲の理解と共感が不可欠です!すぐには治りません。温かく、忍耐強く見守ってください
- 緘黙していると、言語、社会性、コミュニケーション・スキルの発達が妨げらる恐れがあります。家庭では安心して、楽しくおしゃべりできる環境を整えましょう
(5月の場面緘黙症啓発月間の発起人は、『場面緘黙ジャーナル』の富重さんです)
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