場面緘黙と自閉症(その3)SMiRAの立場

イギリスはもうすっかり秋の気候。今日は久しぶりに秋晴れのいい天気になりました。これから落葉樹の梢がだんだんと紅葉していくのが楽しみです。

    雨降りの夕方、東の空にくっきりと円い虹がお目見え。よく見たらダブルレインボウでした。近くの公園でイギリスでは珍しいススキを発見

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場面緘黙の診断に関するSMiRAの立場

a. 診断担当医は、患者がSMの診断基準を満たしていると考える場合、SM(かどうか)の評価を行う必要がある。2018年、ICD-11が発表される前に推奨されていた診断基準は、SMを不安障害として記載していた DMS-5の診断基準でした。ICD-11ではSMを「不安障害または恐怖関連障害」として分類しています。除外疾患として次のものが挙げられます:

  • 統合失調症
  • 幼児の分離不安の一部としての一過性緘黙症
  • 自閉症スペクトラム障害

ICD-11における除外とは、「他(の分野)に分類されるという条件」であり、「ICD内で相互参照として機能し、カテゴリーの境界を定めるのに役立つ」ものです。これはSMとASDが別の障害として分類され、したがって併存疾患として診断できることを意味します。これは「(ASDの経過中)のみに起こるものではない」というDSM-5で使用されている除外の定義とは異なります。

注:解りにくいのですが、DSM-5ではASDの経過中にSMを発症した場合はASDが一次障害として上位診断され、二次障害であるSMは除外されて診断されないことになります。

SMIRA’s position on diagnosis of SM:

a. Diagnosing practitioners should make an assessment for SM where they believe the patient meets the criteria for such a diagnosis.The preferred diagnostic criteria prior to the publication of ICD-11 in 2018 were those published in APA DSM5, which lists SM as an anxiety disorder. ICD-11 classifies SM as an ‘Anxiety or Fear Related Disorder’. It lists as exclusions:

  • Schizophrenia
  • Transient mutism as part of separation anxiety in young children
  • Autism spectrum disorder

Exclusions in the context of ICD-11 are ‘terms which are classified elsewhere’ and which ‘serve as a cross reference in ICD and help to delimitate the boundaries of a category’. This means that SM and ASD are classified as separate disorders and can therefore be diagnosed as co-morbid. This differs from the definition of exclusions used in DSM5 as ‘does not occur exclusively’.

b. 診断担当医は、たとえ他の疾患に対する既存の診断があったとしても、SMについては別個の診断をくだす必要があります。SMiRAではDSM-5の併存診断からSMを「除外」することは、医療従事者とその患者にとって非常に無役だと考えています。これは、特に併存障害がASDの場合に当てはまります。私たちはASDを持つ人はSMの可能性もあると考えており、これはIDC-11の分類を使用すれば〈診断は)許容されます。

このSMiRAの立場は、『場面緘黙リソースマニュアル第2版 The Selective Mutism Resource Manual 2nd Edition』と『場面緘黙支援の最前線 Tackling Selective Mutism』で明らかにされており、後者ではマイケル・ラッター教授(キングスカレッジ・ロンドン精神医学研究所)によって支持されています。

b. Diagnosing practitioners should make a separate diagnosis for SM even if there is a pre-existing diagnosis for another disorder. SMIRA believes that ‘excluding’ SM as a comorbid diagnosis in DSM5 has been very unhelpful to medical practitioners and their patients. This is especially true in the case of ASD. We believe a person with ASD can also be selectively/situationally mute (SM), and this is allowable using ICD-11 classification.

This position is made clear in The Selective Mutism Resource Manual 2nd Edition and in Tackling Selective Mutism, the latter being endorsed by Professor Sir Michael Rutter (Institute of Psychiatry, King’s College London).

SMiRAがこの声明を出しているということは、イギリスでもまだSMの併存診断がつかないASD児がいるということですね…。うちの特別支援学校でも、SMや書字障害などのLD、ADHDを併せ持つ子が大勢います。イギリス国内ではASDの他に、これらも別個の障害として診断がおりているものと思いこんでいました…。

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