場面緘黙と自閉症スペクトラム障害(ASD)SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その11)

あっという間に5月も下旬…前回の投稿から既に1ヶ月以上経ってしまいました。今月から全国統一試験GCSEが始まり気合を入れていたのですが、途中で脱落者が出てしまい教えている側の私にとってもダメージ大。試験のプレッシャーにその他様々なストレスが重なり、本人はとても辛そうで…。どうしたら気分を上げてあげられるのか、ASDのティーンに寄り添うことの難しさを感じています。

   記録的な晴天が続いたイギリスではライラックが終わってバラの季節。我が家のピンクのイングリッシュローズが満開。通勤路の住宅街のバラも見頃です

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ASD(自閉症スペクトラム)とSM(場面緘黙)の交差点

アンディ・スミスはASD(自閉症スペクトラム)の成人で、ASDの若者たちをサポートするオンラインコミュニティ、スペクトラムゲーミング(Spectrum Gaming 2020年)の創設者。 英国全土に 1,700 人のメンバーを抱えるこのコミュニティでは、SM に苦しむASDの若者をサポートする活動も行っています。アンディの熱心な取り組みは全国的に知られており、グループやパートナーシップを戦略的に組織して、ASDの若者たちの意見を表明。地方自治体で SEND (Special Educational Needs & Disability 特別教育のニーズ及び障害)を持つ若者の擁護者として働いた経験もあり、その間にマンチェスター周辺のSM ネットワークも設立しました。アンディの特別な関心の 1 つが、SM、およびSMとASDが交差するポイント。アンディは2度の対談に登場。1回目の対談ではASDについての理解を深めてくれます。

僕はかつて話さない人のアシスタントをした経験があるんだ。人々は話さないという理由だけで、彼に何を話しても解らないと思い込んでいた。高い言語能力を持ち全てを理解しているにも関わらず、子ども扱いしたり、無視したり…。彼は全て解っているけれど、それを言葉で表現できないだけだったのにね。ASDの人は各自それぞれ違うから、決めつけたりネガテイブな部分ばかりに焦点を当てないで欲しい。

場面緘黙の発症率は通常の人よりASDの人のほうが高いと言われている。ただ、ASDの人の中には話すことが困難な人もいるから、SMと見分けがつきにくいと思う。

センサリーオーバーロード(Sensory Overload 知覚過負荷)

 感覚過敏が強いASDの人が感じている日常

ASDの人は感じ方や物事の捉え方が通常の人と異なる。だから、社会的なコミュニケーションが上手くいかず、それが苦い経験として蓄積していくことが多いんだ。また、普通の人より不安が強く感覚過敏を持っていることが多いから、小さなストレスでも強いストレスと感じてしまう。感情をコントロールすることが難しく、自己評価も低くなりがち。

マスキングをして自分の思いや要求を内に秘めるケースも多い――これがメルトダウンに繋がるんだ。家や学校で爆発してしまう場合は、外見からは判らなくても大きなストレスを抱えていることが多い。多くのASDの人はADHDや不安障害、学習障害など他の疾患を併発しているから。

SMの症状は特定の場面のみで起こるけれど、ASDの症状は場所や状況に関係なくどこでも起きる。普段不安を抱えているように見えなくても、ASDの人はマスキングをして不安を隠している場合が多いことを覚えておいて欲しい。

アンディ自身がASDの診断を受けたのは20歳の時ですが、小さい頃から自分が他の人と違うことが解っていたとか。18歳の時にASDの若者を支援するアルバイトをした際、自分と多くの共通点があることに気付いたそう。ASDのラベルを貼られることが嫌で、大学に入学してからずっとマスキングをして隠し続け、皆に合わせようと試みたものの、ストレスで心身ともにダウン。診断後、自閉症の自分が幸福で充実した人生を送ることは不可能と悲観して、自殺を計ったことも…。その時に出会ったASDのコミュニティで、自閉症であることを肯定的に受け止めて自分らしく生きる姿勢を学び、人生観が変わったといいます。

現在では、診断を受けることで、ASDや自分自身について話をしたり、診断名がつくことで正式に助けを求めたりできる利点を強調しています。

長いので次回に続きます。

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