薬の威力(その2)


この夏私たち家族は、イングランド南西部に位置するエクスムーア国立公園で、1週間のコテッジホリデーを楽しみました。その帰り道、SMIRAコンファレンスで出会ったティーンの女の子の家を訪ねたんです(彼女は家族と一緒にコンファレンスに参加していたので、ご両親とも顔見知りでした)。

今回私は家族連れだし、コンファレンスで話さなかった姿を見られているため、彼女が話すことはないだろう  そんな風に予測してました。緘黙の法則というか、一度話さない姿を見られている人には心理的に話しずらいだろうなと思ったので。

その予測の通り、1時間半ほどの滞在中ずっと筆談のみ。でも、彼女の姿勢や態度には大きな変化が見られました。薬の影響に加え、自分が一番安心できる自宅という環境、そして両親が側にいたことがプラスに働いたと思います。

まずお母さんに案内されて居間に入ると、彼女はちょっと固まった感じでうつむいて立っていました。前と印象が全然違うなぁと思ったら、長かった前髪をばっさりカットし、メガネをかけた彼女の顔がはっきり見えたからなんですね。後でお母さんと二人になった時、「薬を飲み始めてすぐに、自分から切るっていったのよ」と。もう前髪で顔を隠す必要はないと感じたんでしょうね。

彼女の家はかなり田舎にあって、家のすぐ横には大きな河が流れ、広い庭の向こうは林という、自然に囲まれた環境。お父さんの趣味で、庭には珍しい種類の鶏が何羽も駆けまわっていました(囲いはあるんですが、とにかく広い!)。挨拶が終わったあとは、お父さんの提案ですぐ庭に移動(グッドアイデアですね)したんですが、その頃には彼女の姿勢も態度もごく自然な感じに。

お父さんが彼女に話をふると、手に持った小さなホワイトボードに返事を書いてくれます。そのうちに、鶏を抱っこして私に見せてくれたり、息子と私の手にエサを入れてくれたり。ふと気づくと、私と二人きりになっていたのですが、鶏たちが小屋の中ではなく河のほとりにある樹の高い枝にとまってで眠ることや、キツネに襲われた時、何羽かは河向こうまで飛んだことなど、自分から色々教えてくれました。

隣にいて、彼女がリラックスしてお喋りしたい気分なんだなというのが伝わってきました。もし私が一人で訪問し、もっと長い時間滞在していたら、もしかしたら声が出ていたかもしれません。でも、そんなことよりも、彼女から人と接したいという気持ちが伝わってきたこと、少しはにかんではいるものの本来の彼女の姿が垣間見られたことが大きかったです。

最初の出会いで感じたネガティブな要素(カチカチに固まって、私に話しかけないでオーラが漂っている)が消え、「大人しくて、ちょっとはにかみ屋の女の子」という良い印象だけが残りました。

これって、人付き合いをする中で結構重要じゃないでしょうか?

私達がおいとまするのと入れ替わりに、彼女のご両親の知り合いがやってきて、「頑張って社交の機会を増やしてるのかな」と感じました。多分、彼女を色々なところに連れて行って、見知らぬ人と話す機会を作っているんではないかと小さな村だから、知り合いばかりですものね。

彼女の家を訪問してみて、こんなに小さな村の学校から、少し離れた町のマンモス校に移るのは、相当大きな負担になったんだろうなと思いました。ご両親は、彼女が特別支援学校で話し始めても、今のところ授業は一日3~4時間にとどめているとか。「焦らず、少しずつ」をモットーに、娘の気持ちや体調によりそいながら、サポート体制を整えているようです。

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