緘黙を克服しつつある17歳


前回のBBCで放映された場面緘黙の番組の続きです。実は、テレビで取り上げたのはサブリーナさんのケースのみで、お借りして貼り付けている映像はBBC News のMagazine サイトで紹介されているものです。いつまでアップされてるか分らないので、消されない内に映像の続きを翻訳しました。(聞き取りづらい部分もあり、正確ではないかもしれませんが、その辺りはご容赦ください)。

今回は17歳のケイティさんのケースです。映像の5:47~7:59を御覧ください。

<ケイティの独白>

話さなきゃいけないというプレッシャーに押されて、やっても無駄だと思うこともあったわ。自分の感情を押し殺して、きまり悪さを完全にシャットアウトしてたの。しゃべらない状態のほうが幸せなんだって。

友達A:カレッジを終了したらどうするつもり?

ケイティ(K):大学に行って、できればテレビやラジオ制作を学びたいの。

「ケイティ・スミスには3歳の時から場面緘黙の症状がありました。今17歳でカレッジの最終学年。場面緘黙を克服しようと、大きなステップを踏みだしています」

友達B: 場面緘黙を克服して、たくさんの人と接するようになって自信をつけていくって、どんな感じ?

K:うーん、説明するのは難しいわ。えーと…。

友達B: 多くの人に助けられたと思ってる?それとも、自分で何とかしたの?家族とか友達とか、助けてくれる人はいっぱいいた?

K:えっと、実は7年生になってあなた達と出会った時期が――あなたやトーリア達と出会って、新しい友だちができたことが、大きな助けになったわ。

友達C: 友達関係が変わったことで自信がついたの?

K: そう思うわ。家族は私がずっと緘黙だったことを知ってたから、変わってほしいと願ってたけど、もちろん強制するようなことはしなかった。進学してセカンダリーやカレッジに行ったら、新しい友人関係を築かなきゃいけないって思ってたから。

友達D: セカンダリースクールに入って、知らない子に話しかけるのはどんな気持ちだった? 人に評価されるよね?

K: そうね、偏見を持っていそうな、人気のある子達からは距離をおいたわ。あなた達がいてくれて本当に良かった。だって、あなた達だったら人をこうだって決め付るようなことはしないと判ってたの。

友達B: 私もちょっと変わった子だったし(笑)。

K: 変わった子が一番よね(笑)。

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17歳のケイティが友達に囲まれておしゃべりしている様子を見る限り、青春真っ只なかの普通の高校生にしか見えません。前出のサブリーナと比べると、ものすごく対照的です。

「捕われた様に感じている」というサブリーナは見るからに固まっていて、文字を打ち込みながら眉間にしわをよせ、いつの間にかしかめっ面のような表情に…。彼女のボディランゲージからは、「逃げたい」、「見られたくない」、「隠れたい」というネガティブなメッセージを受けませんか? きっと、長い間沈黙を続けている間に、縮こまったようなオドオドした態度や姿勢が身についてしまったのではないかと…。 一方、友達と談笑しているケイティは、自然でオープンな印象。最初の独白部分で沈黙している彼女とは違う人みたいです。

ちょっと微笑むだけで、人が受ける印象は随分違うもの。オープンな感じだと、声をかけやすそうだなと思ってもらえます。その点でも、サブリーナはすごく損をしてるなと思わずにはいられません。場面緘黙が長引くと、弊害はより広範囲で大きなものになってしまう可能性を含んでいるのではないでしょうか?

詳細は判りませんが、ケイティは小学校の頃から両親や学校から支援を受けていたものと想像しています。学校からの支援はなかったにしろ、両親の場面緘黙への理解と支援があったのは確かですね。イギリスでも10年ほど前は緘黙が知られておらず、学校や教育関係者、心理士から適切な支援を受けられない状況でした。

ケイティは、セカンダリースクールに進学した7年生(12歳)の時、新しい友達を作ったことが大きな転機になったと語っています。進学したり、転校したりして新しく環境が変わると、周りは「自分がしゃべらない」ということを知らないから、話し始めるのが楽になると言われています。年が上の緘黙の子どもに有効な方法ですが、誰にでも効果的という訳ではありません。

ここで決め手になるのは、やはり自ら「話すんだ」という意志を持ってチャレンジすることでしょう。そのためには、それ以前にスモールステップを積み重ね、「新しい環境だったら話せる」という自信を持っていることが重要だと思います。学校で話さなくても、外で話せるとか、知らない人には話せるとか、親以外にも親密に話せる人がいるとか…。

また、話せなくても同年代の友達がいるということが、すごく重要になってきそうです。ずっと友達付き合いがないという場合、最初は話せても、どんな話題で、何を話をしたらいいのか見当がつかず、友達付き合いが難しくなるかもしれません。好きなことや趣味が話の糸口になったりするので、子どもが好きなことを尊重してあげるのも大切ですよね。

なお、新しい環境だったら絶対に大丈夫という保証はどこにもありません。もし、ケイティが新しい友達を作れなかったら、学校で嫌な体験をしていたら、徐々にまた沈黙の世界に戻ってしまっていたかも…。新しい環境が自分に合うか合わないかは、宝くじのようなものだと思います。でも、これは緘黙でなくても、誰にとっても同じですよね。

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