第2回 場面緘黙 H.E.L.Pオンラインサミットから(その3)

<5月中旬に開催されたオンラインサミット、第2回Selective Mutism H.E.L.Pから>

緘黙体験者、ジェイミー・ラゴさん

ダンスの振り付師で緘黙絵本の著者でもあるジェイミー・ラゴさんは、幼少のころから20歳ぐらいまで場面緘黙でした。そんなジェイミーさんを救ってくれたのが踊ること。サミットでは緘黙になった時の状態を詳しく説明し、自分なりの対処法を語ってくれました。

ジェイミーさんは入園するまでただ内気な子と思われていました。でも、実は家族の中で打ち解けて話せたのは母親だけ。入園時のスクリーニングテストで言葉が出ず、場面緘黙症と判明しました。感覚過敏やADHD、ASDなどの診断はなかったそう。

園では周囲の子どもたちと交わることなく、ただ遠巻きに観察する毎日。遊びに参加したいのに身体が動かない――環境に馴染んで大丈夫と感じられるまでに、時間がかかりすぎたのです。

自分が普通に話せると解っているのに、どうして声がでないのか?そのメカニズムは不明でした。母親に「今日は園どうだった?」と訊かれる度に、「まあまあだった」と答えていたとか。

自らの緘黙状態を「冷凍庫の中にいるような感覚」と回想――頭が空っぽになって、自分の名前もわからなくなる…。本当にパニックになりそうな恐怖を感じていたといいます。

そんな恐怖の中で大人から矢継ぎ早に質問されても、何も言えないのは無理もありません。

「動けない恐怖から逃れられるなら何でも良かった。幼いころは、パーティーやお出かけなどで居心地が悪くなると、どこでも眠りこんでしまったわ」。

成人してから、「この不安を処理するには、ただ時間をかければいい」と自分なりのリカバリー法を発見。凍りついた瞬間をやりすごすことができれば、話せる状態になると判ったのです。

それからは、極度の不安に襲われることは稀になりました。でも、時間をかけても恐怖を処理しきれない時は今でもお昼寝するんだとか。「それが場面緘黙に対して起こる、私の身体の反応なんでしょう」とにっこり。

ジェイミーさんの場合、帰宅してからメルトダウンを起こすことはありませんでした。7歳のころからダンスを習っていたため、踊ることでフラストレーションを発散できていたと推測しています。

母親がダンスを始めさせた時、本当はやりたくなくて母親を憎んだそうです。でも、それは新しいことへの不安の裏返し。

当時、話せる仲良しの友達がいて、4人で一緒に習い始めたことが功をなしました。ひとりで参加していたら、続けられなかっただろうと振り返ります。

「チームスポーツだけど、自分で自分の体をコントロールできるから娘に合いそう」と、ダンスを選んだお母様。先見の明がありましたね。

小学校時代は『ジェイミーはシャイで内気』とレッテルをはられているようで、本当に嫌だったそう。園と小学校のメンバーが同じで、そのイメージを払拭するのは困難でした。

「小1の時が一番ましだったかな。みんなが私を変な目で見ないから、友達も一番できたの。でも、学年があがる度にクラスが変わって、話せる子と離れ離れになって、年々友達を作るのが難しくなった…」。

毎年慣れた頃に時計がリセットされる――違うクラス、先生、教室、クラスメイトたち――環境に慣れるのに時間がかかる緘黙児には辛い状況です。

学生時代を通して、緘黙を理解してくれた先生もいれば、そうじゃない先生も。

テストに関しては、ひとり別室で受け時間を延長してもらっていたとか。周囲のことが気にかかり、問題を処理するのに時間がかかったといいます。

学校や心理士を通して何度も検査を受けましたが、正式な治療プログラムを受けられたのは成長してから。場面緘黙症を克服できたと感じたのは20歳のころでした。

学生時代ジェイミーさんが習慣にしていたのは、不安を感じた時にそれを書きとめること。そのメモを心配箱(Worry Box)に入れると、少し安心できたといいます。

「後で心配箱を開けてみたら、メモに書いてあったのは取るに足りないことばかり。それでも、書くことで不安に対処できていたんだと思う」

なんでもいい、ジェイミーさんのように自分が安心できるなんらかの対処法を持てるといいですね。

場面緘黙症で苦しんでいるティーンへのメッセージ:

自分は自分のままでいい。言葉でなくても自らを表現できるものを探すことが大事。あなたはひとりじゃない。サポートグループやインターネットで仲間を探して、仲間を作って。

保護者へのメッセージ:

子どもが自分自身を発見できるように、十分な時間や機会を与えて辛抱強く見守ってほしい。

*          *            *

ジェイミーさんは26歳になった現在も、まだ場面緘黙(の後遺症?)に苦しむことがあるといいます。社会的な場面、特に大勢の人や同年代の人が集まる場では、自分に自信が持てなかった過去を思い出し不安になることがあると。

彼女の絵本『ウィローの言葉 Willows Words』は、話せない少女が踊ることで言葉をとりもどすというお話。この絵本を通じて緘黙の子ども達や保護者に希望をもってもらえたら、と願っています。

https://willowswords.com/willows-words/

なお、この記事はかんもくネットが発信しているnoteの記事に手を加えたものです。

https://note.com/kanmoku_net/

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