ジャコメッティ展と足元のアート


先々週、ハーフタームの中休みがあったので、友達とテートモダン美術館にアルベルト・ジャコメッティ(1901-1966年)展を観に行ってきました。スイス生まれのジャコメッティは、20世紀を代表する彫刻家のひとり。針金のように細長い人物像は、ひと目見ただけで彼の作品と解る独創的な造形です。

 

 入口の壁に投射された展示会のロゴデザイン。右は以前撮影した常設展示の作品

ジャコメッティは1920年代半ばにパリにアトリエを構え、キュービズムやシュールレアリズムに傾倒した後、第二次世界大戦後の1950年頃から独自の作風を確立。ピカソやサルトルなど第一線の芸術家や作家らと交わりながら、どんどん人間の本質に迫るミニマルな方向へと向かったよう。

興味深いなと思ったのは、助手でもあった弟のディエゴや妻のアネットなど、限定された一握りのモデルだけを使って作品を作り続けたこと。会場では晩年の制作風景とインタビュー映像が流されていたんですが、「向き合えば向き合うほど、本質に迫れば迫るほどわからなくなる」というようなことを言っていて、すごく興味深かったです。厳選した身近な人だけを対象に、時間と労力を積み重ねながら深く迫る――彼は一体何を見て、何を求めていたんでしょう?

全然知らなかったのですが、1955年から仏国立科学研究センターの研究員だった哲学者、矢内原伊作をモデルにと所望し、何度も滞在費を負担してパリに招待していたんだそうですね。(後に、矢内原はジャコメッティの生活や芸術をつぶさに観察した『完本 ジャコメッティ手帖』を出版しています。機会があったら是非読んでみたいです)。

 

  どことなくコクトーに似た風貌?右写真の左側の人物が矢内原伊作氏。ジャコメッティと20歳以上も年が離れた妻、アネットと関係を持っていたそうですが、彼の何に惹かれてモデルにしたんでしょう?

お茶をして一息ついてから、ドイツ生まれの写真家、ウオルフガング・ティルマンズ展も覗いてきました。1968年生まれ、音楽誌などでもお馴染みの写真家ですが、日常の何でもないシーンを切り取っただけのように見えるのに、妙にインパクト大。展示方法や構成にも工夫が凝してあって、現役アーティストの持つ熱や想いが伝わってきました。

     

テートモダン美術館に行くときは、たいていセントポール寺院をぐるっと周って、2000年に建設されたミレニアムブリッジを渡ります。以前息子と橋を渡った際、「この足元にあるのもアートだよ」と言うんです。

    

     左はセントポール寺院を背にして、テートモダン美術館を望む風景。右はテートモダンから見たセントポール寺院

「えっ?」と思ってよく見たら、金属製の床に何やら小さな絵(?)が! よく見ると、人の名前やら国旗やら、シンボルマークやらが描かれているのです(息子は昔から人が気づかないような細かいことに目がいきます)。ガムを踏みつけて金属の凸凹部分を埋め、その上に彩色したのかな?

誰が創っているのか判りませんが、この小さなガムアートが橋の上に点々と続いているのです。常にひっきりなしに人が行き交うので、座り込んで絵を描くのは難しいはず--ということは、早朝とか夜間の静かな時間帯に制作してるんでしょうか?

 

そういえば、2年ほど前に家の近くの大通りの歩道で、似たようなミニチュアの絵を描いているホームレス?/ 大道芸人の人がいました。傍らに置かれた帽子に小銭を入れる見物人も。もしかしたら、そういう大道芸人がテートモダンを訪れた旅行者を相手に、名前や日時を描き込んでお小遣いをかせいでいるのかもしれませんね。

  

誰も気づかなかったら、踏みつけられて消えていくだけのガムアート。目前に広がる巨大な美術館の建物や橋から見えるロンドンの風景に気を取られがちですが、ちょっと目線を変えただけで、こんな風に違う風景が見えてくることもあるんですね。

 

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