新年、明けましておめでとうございます。こんな辺境のブログを訪れてくれる方々、ありがとうございます。なかなか思うように更新できず、息子の緘黙記も停滞しているのですが、今年もどうぞよろしくお願いします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昨年の暮れ、12月30日のTimes紙日曜版を読んでいたら、教育セクションにあった『あなたのお子さんはたんぽぽ、それとも蘭?』という記事が目にとまりました。
これは、1月24日に出版されるアメリカの児童心理学者、トーマス・ボイス博士(Dr Thomas Boyce)の著書『蘭とたんぽぽ(The Orchid and the Dandelion)』を紹介したもの。ボイス博士は、カリフォルニア大学の小児発達行動医学部長で、カナダの最新医学研究所で小児脳発達プログラムの共同監督も務めています。
彼によれば、子どもの5人にひとりは「蘭」。周囲の環境に鋭敏に反応し、病気になったり挫折しやすい傾向を持つ…ただし、適切に養育されれば最高レベルで成功できる素養を持つとのこと。
対して、それ以外の80-85%の子どもは「たんぽぽ」で、雑草のようなタフな精神と抵抗力を持ち、 どんな家庭や学校環境でも伸びることができるという学説。
あれっ、このパーセンテージ、どこかで聞いたことがある⁉
そうです。場面緘黙になる要因として知られる、行動抑制的な気質に生まれつく子ども10〜15%と、ほぼ重なるのです。この有名な学説は、同じくアメリカの発達心理学者、J ケイガン(J Kalan)博士によるもの。
ケイガン博士の説は『ささいなことで動揺してしまうあなたへ』の著者、エレイン・アーロン氏の著書の中で何度も引用しています。
アーロン女子は『敏感すぎる子どもHighly Sensitive Child(HSC)』の中で、「HSCはありえないストレス下に置かれなければ、精神的に病むことはない。その90%は、ケイガン博士が唱えるように、常に行動抑制的で不安に悩む成人にはならない」と記しています。
が、それに反してボイス博士は、「子どもの15-20%は『蘭』で、『子どもの集団に見られる、すべての身体的および心理的な病気の大部分を経時的に経験する』」と述べているのです。
「『ラン』の子どもは往々に泣き虫で、シャイで過敏であり、周囲の環境に対して脆弱で過敏に反応するため、より共感的な養育・教育が必要となる。適切な支援がなければ、病気になったり、薬物に依存したり、犯罪に手を染めたり、精神を患う傾向が強くなる」とも。
ひょえ~、こんな風に言い切られると怖いです…。ケイガン博士やアーロン女子と比べると、悲観的ですよね…。
でも、ボイス博士の研究のきっかけは、自身の家族なのです。なぜ他の子と同様に成功する能力を持ち合わせた子が病気に屈してしまうのか――転校をきっかけに苦しい日々を送るようになった妹、メアリーを真近で見てきて、興味を持つようになったといいます。
メアリーは、他の子どもなら踏み越えていくだろう困難にぶつかってレールから脱線していき、52歳という年齢で自らの命を絶ったのだそう。
彼は、二人の子ども時代は何ら違うところはなかったと回想しています。1950年代にカリフォルニアの中流家庭に生まれ、両者ともに頭脳明晰。しかし、スタンフォード大学とハーバード大学というアメリカ最高峰の大学2校で学位を取得したものの、内向的だったメアリーは徐々に精神を病み絶望感にさいなまれたといいます。
記事より:
「蘭」の子どもは生まれつき特別に繊細で、この繊細さはソックスの皺を気にするというような身体への刺激に対する過剰反応によって、幼い頃に発見されることもある。
↑ これって、ASD児やSM児によくある感覚過敏のことですよね…。
彼らはストレスに対して顕著な反応を示し、内向的であることや、学校で仲間外れになったり虐められたりすることにより敏感だ。
↑ 同じストレス、虐めや仲間外れでも、「蘭」の子と「たんぽぽ」の子では受け止め方や衝撃度が異なるということ?「蘭」はより傷つきやすく、回復が難しい・時間がかかるということなんだろうと思います。
また、「多くの保護者に『蘭』の子と『たんぽぽ』の子が一人ずつ生まれるだろう」とも。
↑ 実は、彼の子ども二人もこのパターンなんだそう。でも、ボイス博士の妹が「蘭」であったことを考えると、彼の家系には「蘭」のDNAが流れているので、「蘭」の子が生まれる確率が高いように思います。
彼の説によると、人口の1/5は「蘭」に生まれついていることになり、35人のクラスに5~6名は超繊細な「蘭」の子がいることになります。けれど、その子たちが全員辛い人生を送るようになる訳じゃないですよね。
私はシャイで敏感な子どもでも、徐々に鍛えられて強くたくましく生きることができると信じてます。実は、自分も「蘭」の部類だったと思うのですが、時を経て面の皮が随分厚くなってます(^^;)
アーロン女史もいうように、どのように支援しながら養育・教育するかが、将来の鍵となるよう。
私たちも、通常よりも育てにくく、周囲からの配慮が必要な「蘭」の子の保護者。責任重大だなあと改めて思いますが、周囲の環境などはコントロールできない部分が大きいです。保護者も、メゲずに柔軟に対処していけるといいなと思います。
<関連記事>