浅田真央さん、お疲れ様でした!

一昨日、どなたかがあげてくれた動画で、浅田真央さんの引退会見を観ることができました。白いジャケットを着て髪をひとつに束ねた真央さんは、清々しくてとても晴れやかな表情。もう心の整理が済んで前を向いてるんだなと思った反面、やはりこんな形で引退となったのが残念でなりません…。

その潔さは、とても彼女らしいのですが…。

長年日本フィギュア界を牽引し続けてきた国民的なスケーターにふさわしく、氷上で惜しまれながら競技人生を終えて欲しかった。

女子では歴代5人目となるトリプルアクセル(3A)をまだジュニア時代に成功させ、以来ずーっと跳び続けてきた真央さん。調子が悪い時も、「浅田真央の代名詞」と言われた3Aにずっとこだわり続けてきました。2012年くらいから腰痛に悩まされることが多くなり、昨年は左膝に故障を抱え、滑り込みができなかったとききます。

どんな時も言い訳せず、可能な限り最高の演技を目指すアスリート魂がすごい! 頑固すぎると言われることも多かったですが、そのひたむきさ、真っ直ぐさを本当に尊敬します。

オリンピックの金メダルを獲得することはできませんでしたが、バンクーバーでもソチでも、女子シングルでは彼女の演技が一番心に残っています。

2010年バンクーバーオリンピックの前年、真央さんは絶不調だったんですよね…。シニアにあがって初めてグランプリファイナル出場を逃し、オリンピックに出場できるかどうかは、全日本選手権にかかってました(ちなみに、グランプリシリーズでは、3Aは6回中1回しか成功してません)。

日本中のファンが固唾を呑んで見守る中、全日本のショートプログラム『仮面舞踏会』では、躊躇なく3Aに挑んできました。演技を終えたあとのキラキラ笑顔が本当にまぶしかったです。(この時の3Aは解説が「大丈夫」と言ってますが、回転不足と判定され減点でした)

バンクーバーオリンピックの伝説のフリープログラムでは、ご存知のようにミスが出てしまいましたが、それを補って余りあるほどドラマチックな演技。妖精のようなイメージが強い真央さんですが、ここでは戦う阿修羅王のよう。特に、スパイラルは鬼気迫るものがありました。

  ラフマニノフが19歳の時に作曲した『鐘』は、迫りくる大火への警鐘の鐘だそう。1つの試合で初めて3Aを3回成功させ、ギネス記録となりました

2014年ソチオリンピックのフリー演技は、今後もフィギュア史で語り継がれていくんじゃないでしょうか?金メダル候補だったのに、ショートプログラムではまさかの16位。引退会見では「もう日本に帰れないと思った」と言ってましたが、想像を絶する落胆とプレッシャーだったと思います。それを跳ねのけてのあの演技!本当に感動しました!(一緒にTVを観ていた息子とグラニーが、私の力の入れようにビビッてました)

そして、演技し終わった時の涙と笑顔…。こんなドラマをオリンピックで2回も繰り返すなんて、やはり持ってる人です。

  2度めのオリンピックに再びラフマニノフを選んだタラソワさん。彼女の選曲と振り付けは、真央さんの新たな魅力と可能性を引き出したように思います。この二人が引きおこす化学反応は特別でした

(ところで、このプログラム、8回の3回転ジャンプを組み込んだ女子フィギュア史上最高の難度だったんです。合計142.71は自身の最高得点でしたが、私は「えっ、低い」と思いました。2つのジャンプで回転不足判定があって減点されてますが、技術点の基礎点は1位。でもGOE(出来栄え点)が少なく、芸術点といわれる演技構成点は5位だったんですよね…で、フリーの順位は3位。バンクーバーの後、佐藤コーチについてスケーティングもジャンプも1から見直し、滑りは格段に美しくなったと思います。でも、その努力が点数に反映されていない…。

「最終グループで滑ったら、もっと演技構成点が出た」と評論家がいってましたが、それって変じゃないですか?そして、ジャンプの判定もいまどき目視だけって時代遅れでは? 毎年のようにルールが変わり、見た目と点数が乖離してることも多いので、フィギュア観戦はモヤモヤ感が消えません)

実は、私は天才少女と呼ばれていた頃の真央さんには、あまり興味がなかったんです。昔からフィギュアを観るのは大好きでしたが、渡英してからはフィギュアのTV放送なんてなくて。忘れかけていた頃にトリノオリンピックを観て、再びフィギュア熱を取り戻したのでした。インターネットがあって、本当に良かったです。

その後帰国するたびにフィギュアの大会をテレビ観戦する機会に恵まれたんですが、男子を中心に観てたんです。ある冬(2008年かな)、真央さんが黒い衣装を着て『仮面舞踏会』を踊っているのを観て、「あの真央ちゃんが、こんなすごいプログラムをやってるんだ!」と驚かされました。

以来、割とのめり込まずに傍観してきたつもりなんですが、やっぱり唯一無二の存在だったなあと。ふわりと軽いジャンプと所作の美しさ、演技のどこを切り取っても美しく、とにかく気品がありました。常に前を向き、努力する天才でした。何といっても、スケートが大好きという気持ちが伝わってきて、彼女の生き様を見せてもらっているようでした。

彼女のほどのスケーターは、今後なかなか現れないと思います。淋しいけれど、ひとつの時代が終わりを告げたんですね。

真央さん、今まで本当にご苦労様でした。感動と勇気を与えてくれてありがとう!

今後も笑顔で前に進んでいきたいという彼女に、心からエールを送りたいです。

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