学期末でバタバタしていて随分遅れてしまったのですが、3月18日(土)に、イギリスの場面緘黙支援団体SMIRAの定例総会に行ってきました。
今年も全国各地から緘黙児の家族、言語療法士を中心とする専門家やTA(教育補助員)などが集まり、参加者は90名ほど。昨年10月に『場面緘黙リソースマニュアル第2版』を出版したSLT(言語療法士)のマギー・ジョンソンさんとアリソン・ウィンジェンズさん、昨年の講演者でアニマルセラピストのリビー・ヒルさん、BBCに出演した緘黙克服中の成人女性、サブリーナさんなど、錚々たる顔ぶれが揃い、活発に意見が交わされました。
SMiRAコーディネーターのリンジーさん(左)と役員のヴィッキーさん
今年の講演プログラムは:
- 場面緘黙克服のために抵抗力(Resilience)を高める SLT(言語療法士)アニータ・マッキアナンさん
- 私の回復体験 ナターシャ・デールさん(21歳)
- NYの治療プログラム “Brave Buddies” 参加体験 児童セラピスト ルーシー・ナサンソンさん
- ディスカッション
- 1月に亡くなった緘黙児、ケイティ・ラフちゃん(7歳)の追悼イベント(希望者のみ)
今回講演した二人のセラピストは、いずれもプライベートでSM治療を行っています。NHS(国民保健サービス)に頼る場合は、長い順番待ちがあるうえセラピストや専門家を選ぶことはできません。また、地区によってサービスにバラつきがあり、宝くじに例えられることも…。
最近イギリスでは、オンラインで言語やコミュニケーションの治療を受けられるプログラム等も出現。料金はかかりますが、プライベート治療の選択肢が随分増えたように思います。
コンファレンスでは資料が配布されなかったため、手書きのメモしかないのですが、講演の概要は追ってKnet会員掲示板と稚ブログで紹介していく予定です(大幅に遅れててすみません)。
追記:
コンファレンスが終了した後、会場となった教会ホールの向かい側にある公園で、ケイティ・ラフちゃんの追悼イベントが行われました。
春の花が一斉に咲き始め日増しに春めいてきていましたが、この日は朝から灰色の曇が垂れ込め、肌寒い気候に逆戻り。どんよりとした曇り空の下、ケイティちゃんの冥福を祈って、自由の象徴ともいえる白い鳩を空に放ちました。
イギリス北部の都市、ヨークに住む7歳のケイティちゃんがナイフで殺害されるという痛ましい事件が起きたのは、今年1月のこと。犯人がまだ15歳の少女だったという事実が明かされ、全国的なニュースになりました。
ケイティちゃんが場面緘黙だったこと、SMiRAとの関わりがあったことで、SMiRA役員や関係者、保護者や当事者のメンバーたちの間に大きな衝撃が走りました…。
はにかんだ笑顔が本当に可愛い女の子――ケイティちゃんは緘黙ではあったけれど、みんなと一緒に外遊びをするのが大好きで、友達も多かったといいます。いつもは自宅の庭で遊んでいたそうですが、彼女が発見されたのは自宅のすぐ近くの公園…。
もしかしたら、話せないケイティちゃんを無理やり誘い出したのかも…、叫びたくても「助けて」の声が出なかったのかも…。どんなに怖かったことか――そう考えると本当に切ないし、ご家族の気持ちを思うとやり切れないです。
娘を悲劇の少女としてではなく、自分たち家族を幸福にしてくれた茶目っ気ある美しい少女として覚えていて欲しい――そんなご両親の思いに敬意を払いたいです。
ケイティちゃんのご冥福を心からお祈りします。