場面緘黙と強迫性障害 SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その6)

もう今日で2月も終わりですね。イギリスでは徐々に日が長くなり、随分春めいてきました。今週は気温がぐんと上がって、公園や道端にクロッカスや水仙など早春の花が咲き乱れています。2月頭に咲き始めたスノウドロップの白い小花はもう終わりかけーー名残惜しいです。

    

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ミシェル・ウィトキン博士(Dr. Michelle Witkin )は、カリフォルニア州バレンシアで開業する公認心理学者。国際OCD(強迫性障害)財団(International OCD Foundation)の一般・小児行動療法トレーニング 研究センターの教員で、米国不安鬱病協会(Anxiety and Depression Association of America: ADAA)の臨床フェローでもある。認知行動療法(CBT)の経歴は30 年以上、専門は強迫性障害や不安障害を持つ子供、ティーン、成人の治療。

我が子に強迫性障害(OCD)の兆候が

小児心理士になって10年が経った頃、ウィトキン博士は自分の子どもにOCDの症状が出ているのに気付きました。明白な兆候は、手を洗いすぎて洗面所の床がびしょ濡れになっていたこと。息子が6歳半になるまで小さなサインが出ていたにもかかわらず、1年ほど見逃してしまったといいます。

しかしながら、子どもの症状を自覚しても治療や支援の仕方が全く判らなかったそう。当時はOCDの診断に時間がかかり、治療を受けるまで10年以上もかかるという状況…。幸運にもOCD専門の心理士を探し出し、息子のエクスポージャー法を家庭で支援し始めることができたのです。

何故OCDになるのか?

脳内の神経伝達物質(特にセレトニン)のバランスの乱れ、遺伝的な要因、強いストレスやトラウマなど環境的な要因、不安になりやすい気質など、様々な要因が複雑に絡み合って発症するといわれています。

強迫観念(obsession)とは?

自分の意志に反して、考えたくないことが繰り返し頭に浮かび、それを払いのけることができない

強迫行為(compulsion)とは?

不安を打ち消すためにする行動

患者は強迫観念を消すために、脅迫行為をし続けます。行為をしている時は不安が軽減するように感じ、何度も何度も繰り返す様に…。長く時間がかかり、本人にとっては大きな苦痛で、症状が悪化すると生活に支障をきたすようになります。

例えば、家を出ると戸締まりをしなかった様に感じ、戻って確認すると安心できる――これを延々と繰り返すといった行動です。

冗談で「ちょっとOCDで」などと言う人がいますが、なにかに固執することがあっても、本人が苦痛を感じていなければOCDではありません。

子どもが何度も同じことを言ったり、同じ行為を繰り返したり。そして、周りにも同じルーティンを繰り返すことを強要し、それができないと悪いことが起きると信じこんでしまう――保護者は最初子どもが何故そんな言動をするのか判らず、何度も大丈夫と言い聞かせる様な状況に陥ります。

子どもが何らかの不安障害を抱えている場合、OCDを併発していることも多いといいます。不安な時に居心地悪さを感じるのはどちらも同じです。不安を回避するのではなく向き合うことを教える必要があります。治療は少し違ってきますが、不安と向き合うのは同じです。

保護者は本能的に子どもの不安や心地悪さを取り除こうとしますが、かえって脅迫行為を養護することになりかねません。子どものためにできることは、「そんなに何度も手を洗わなくてもいいんじゃない?その時間に本を読もうよ」と言ってみること。子どもが安全で楽しいと思えることをやらせてみて下さい。セラピストのところに連れて行き、子どもに年齢に合わせたOCDの説明をして下さい。脳が間違った信号を送っているのだと。

治療では、まず子どもが何に怯えているか、どんな脅迫行為で恐怖を和らげようとしているかを調査。不安の度合いを計りながら、エクスポージャー法を開始します。例えば、自分が犬になってしまうという強迫観念を持つ子どもがいたとします。子どもは極力犬に近づかず、犬のことを話したり写真を見ることもしません。まず、犬の漫画を見せて10段階で恐怖の度合いを調べます。10のうち3、4位だったら、再び画を見させて、その間に犬にならないことを実感させます。悪いことは起きるかもしれないけれど、OCDは嘘つきだと理解させるのです。

OCDのエクスポージャー治療は平均して12~20セッションくらい。年齢が上がると治療に時間がかる傾向が強くなります。5歳位の子どもだったら、まだOCDが定着していないため、5~6回で済むことが多いとか。ストレスが強い状況になるとOCDが再発することがあるので要注意です。

再発の予防対策として、何ができるか?

この病気への理解とエクスポージャー法で身につけたスキルとを武器にして下さい。保護者と子どもと一緒にエクスポージャー法を考えさせ、毎週セラピーに通うのではなく、自分たちでもやってみて下さい。できたらご褒美をあげるなど、エクスポージャー法は楽しみながらできます。

保護者へのアドバイス

まず、自分のせいだと思わないこと。子どものメンタルヘルスに問題がある時、保護者は自分を責める傾向があります。まずはOCDについてよく知って下さい。OCDの専門医にかかり、子どもの治療経験を持つセラピストを選ぶ必要があります。子ども自身が治療に挑まなければ克服できないため、保護者は自分たちの生活を守りながら根気強く支援をして下さい。

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