不安のメカニズム

私は英国カントリー調の暮らしを紹介する『Country Living』という月刊誌が好きで、昨年から定期購読しています。購読者にはウエブ記事のリンクが送られてくるんですが、その中の『不安が身体に及ぼす影響』というタイトルが目に留まりました。

その記事はイギリスのチャリティ団体、Anxiety UKの資料をもとに書かれたもので、この団体のサイトに行ってみたところ、ものすごい情報量とサポート!(会員になると大量の資料にアクセスでき、セラピーが割引に!)

列記された不安の病名・症状名だけでも、社会不安障害やパニック障害から、予見不安症(Anticipatory anxiety)やアグロフォビア/広場恐怖症(Agoraphobia)まで30を超える数。知らない症状名もいっぱいあって、奥が深いなあと…。ちなみに、場面緘黙は『若者と不安(Young People & Anxiety)』のカテゴリーに入ってました。

Anxiety UK によると、最近のリサーチでは6人に1人の若者が何らかの不安の症状に悩まされる(もしくは、された)経験があるとのこと。

  • イギリスでは16-18歳の10人にひとりが何らかのメンタルヘルス症状を経験 (Green et al 2005)――これには引っ込み思案や母子分離不安、不眠傾向、テスト前不安といったものも含まれています。
  • メンタルヘルス問題の半分以上が14歳までに発症し、75%は18歳までに固有の症状が出る(Murphy and Fonagy 2012)
  • 不安の症状は成績、ストレスへの耐性、自信、モチベーション、交友関係に大きく影響する(Layard 2008)
  • 不安と鬱が最も多く、他の症状との併発率が高い(Green et al 2005)

記事を読んでみて、「え~っ!!」とうなってしまいました。

多くのメンタルヘルスの問題は児童・青春期に発症し、その後の人生に大きく影響するにも関わらず、本人が助けを求めるまで平均10年もかかるんだそう!ということは、10年もの年月を不安の症状に悩まされ続け、成人してから耐えられなくなって相談や受診をするということ?

10代・20代という人生の一番いい時期に一人もんもんと苦しみ続け、その間に症状が固定してしまったり、悪化してしまったり、さらに合併症や二次障害を発症してしまう可能性もあるのです…。

誰にも緘黙の相談ができずひとり苦しみ続け、高校や大学で自力で話せるようになった後、社会人になってから鬱病や社会不安障害で病院を訪れたという話をききます。小中学校で受診するケースでも、発症から数年経って学校での問題が大きくなった後というデータがでているよう…。

多感な年ごろの子ども達は、親に自分の問題を言いたがらないし、16、7歳になれば親も口を出せない雰囲気になってきますよね。自らネットで色々調べることができる反面、それが裏目に出てますます不安を増大させることもあるかも…。

子どもが何かおかしいなと感じたら、親は早期に介入したいですよね。でも、メンタルヘルスに関する世間の目は、まだまだ偏見に満ちているというのが現状。身体の病気は平気でも、心の病気となるとちょっと言いにくい雰囲気があります…。

でも、大人の世界で考えてみても、職場で虐めにあって鬱気味になったり、極度の緊張や不安で眠れなくなったり、疲れて体調がおかしくなったりというのは、本当に誰にでも起こりうることです。

私自身のことでいえば、2ヶ月ほど前に全く知らない人から急遽翻訳の仕事を頼まれ、生活のリズムがガタガタに…。引き受けた後に文字数がどんどん増えて、結局4倍くらの長さになってしまったのでした(私は頼まれると「イヤ」と言えない性格で、息子もその傾向が強いです)。

週末を挟んで4日間くらいで何とか終えたのですが、他の仕事もあるし、失敗してはいけないとめっちゃ緊張。毎日夜中の2時位まで頑張っていたら、疲れているのに眠れなくなって、不眠症気味になってしまいました~!ついでに胃腸の調子もおかしくなって、踏んだり蹴ったり。

1週間くらいでやっと普段のリズムに戻ったんですが、あのストレスがずーっと続いていたらと思うと、ちょっと怖い。不眠が続くと肉体的にも精神的にもシンドクなって、心のバランスが崩れてしまいますよね。これは息子の赤ちゃん時代の経験で身にしみたことですが、長く続くとホントに辛いです。

以前にも書きましたが、イギリスでは比較的簡単に様々なセラピーを受けることができます。ヒーリングパワーからCBTまで個人で仕事をしているセラピストが大勢いて、「ちょっとセラピーを受けてみようかな」と気軽に相談できる空気があります。私の周りでも「スピーチが上手くなるように睡眠療法を受けた」とか「別居する前に夫婦でカウンセリングを受けた」というような話がちらほら。

「問題があったらプロに相談してみる」というのが普通というか、民間のチャリティ団体など相談できる機関がけっこうあるように思います。特に、イギリスではNHS(国民健康保険)を使うと待ち時間が長い・医者や専門家の選択肢が少ない・自分で選べないため、プライベート治療やチャリティの支援が充実しているよう。最近では、Skypeなどを利用したネット経由の治療も定着しつつあります。

場面緘黙に関しては、プライベートの治療を提供するセラピストが増えてはいるものの、まだまだ数が少ないのが現状。料金が高いことや、学校との連携の問題がネックになっている状態です。

前置きが長くなってしまったので、不安のメカニズムの内容については次回に書きます。

 

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