バイリンガルの子どもは緘黙になりやすいといいます。正確には、抑制的な気質が強いバイリンガルの子どもが緘黙になりやすいということですが。
たとえ抑制的な気質ではなくても、学校で母国語ではない言語が話されている場合、どんな子どもでもその言語に慣れるのに数ヶ月はかかり、言葉がなかなか出ない期間があるといわれています。
言語の習得は、「聞く」 → 「理解する」 → 「話す」 という順番になるため、言葉が出ない時期があるというのは納得できます。私も英語学校に通っていた頃、最初は聞き取るのに苦労し、その次は理解出来てるのになかなか英文が出てこない時期がありました。文章を組み立てるのに、「日本語」 → 「英文に翻訳」という作業をしていたため、ぱっと英文が出てこなかった訳です。「解ってるのに、言いたいことを表現できない」というのは、かなりフラストレーションがたまる状態でした。
すっと言葉が出てくる頃には、知らないうちに英語のまま頭に入って、自然に英文を組み立てられるようになっているんですね。英語が何となく身につくというんでしょうか。まあ、いつまでたっても、まだまだ感いっぱいですが、言葉の習得って不思議です。
緘黙になりやすい抑制的な気質の子どもは、完全主義的な傾向が強い子が多いようです。気にしやすく傷つやすいため、ほんの小さな間違いにも、激しく落ち込んでしまう…。自分に自信がないんですね。
それに加えて、バイリンガルの子どもは二ヶ国語を同時に習得しなければならないため、ひとつの言語だけを話す子ども達に比べると、少し遅れがあることが多いかもしれません。息子の幼稚園時代(3歳半)の親友は両親とも日本人で日本育ち。やはり息子より語彙が多いし、日本文化に対する知識も深かったです。
繊細なバイリンガルの子どもが幼稚園や小学校に入った際、自分の言語能力に気づいて、引け目を感じてしまうことも頷けます。「できないかもしれない」、「間違えたら恥ずかしい」という気持ちが強く、引っ込み思案になって声が出にくくなるのではないでしょうか?そして、話さないことで身を守り、それが習慣化していく…。
うちの息子は早生まれなんですが、早生まれの子はずらして誕生日順に入学させるというのが学校の方針。9月ではなく、1月の下旬に最後にクラスの仲間入りをしました。そして、初日に帰宅しての第一声が、「僕の英語は皆みたいに上手くない」でした。クラスには外国から来たばかりで英語が全くできない子が数人いて、息子はまだ喋れる方だったんですが…。息子の中では、自分がいちばんダメだったんでしょう。
英語学校に通っていた頃の私自身の体験から、その心情はすごく解ります。先生に指名される以外は、自分から挙手して発言することにかなりためらいがありました。「皆の前で間違えたら恥ずかしい」と自意識過剰になってたんですね。ちなみに、ヨーロッパ系、アラブ系の子たちは、我先にと発言するんです…でも、よく聞いてると、文法が間違ってるし。でも、全然気にしないんですよね。その一方で、アジア系の子たちはテストをすると成績がいいのに、授業中の発言は少ないんです。民族性もあるかもしれませんね。
そういえば、昨年所属するエージェントのTA達と一緒に『発音、言語、コミュニケーションに困難を持つ子どもの支援』というコースを受講していた時、私は極力当たらないように小さくなってました…。学校でのTA実体験が少ないうえ、皆の前で理論的に説明するというのが不可能に感じ(私だけ舌足らずの子どもレベルだった)、劣等感の塊みたいになってたんですね。それでも、レポートでは割と評価してもらえ、お陰様でちゃんと合格できました。
バイリンガルの子どもが、学校でどんな風に語学の苦手感に対処したらいいのか?私が現在TAの仕事をしている小学校にはバイリンガルの子どもが大勢いるんですが、レセプションクラスでは人前での発表や人とのコミュニケーションなど、色々な苦手感を徐々に克服できるような授業をしてるなと、感心することが多いんです。次回はその例をご紹介したいと思います。