今年の仕事始めは、ホームスクールスタッフの集まりでした。私はASDの子どもを対象にした 特別支援校での仕事とは別に、SENTA(特別支援員)のエージェントにも属していて、こちらでも日本語を教えています。(以前にも書きましたが、緘黙児の支援をしたくてエージェントと契約したのに、緘黙児には巡り会えず…)。エージェントでは主に地区の学校にSENTAを派遣しているのですが、私の担当する生徒さんは学校に通わず家庭を拠点に学ぶ(ホームスクール)ティーンです。
イギリスではインクルージブ教育を掲げていて、障害を持つ子どもでも普通の公立学校で学ばせる方針。でも、どうしても学校に馴染めない子もいるし、最初からホームスクールを選択する家庭もあります。エージェントに依頼してくるのは、だいたいがEHC(Education Health Care)プランを持ち、地区から支援金が出ている子ですが。
木曜日のミーティングでは、集まったホームスクールスタッフがそれぞれの状況や悩みなどについて語り合いました。普段は1対1で担当教科を教えているため、同じホームスクールの仕事をする人たちと会う機会はほとんどありません。
詳しくは書けないのですが、今回の集まりで本当に様々なケースがあるんだなと驚かされました。重篤なASD児に2人で対処しているケース、引きこもりの子とコミュニケーションを取ろうと頑張っているケースなど千差万別。アニメが大好きで、頑張って日本語を勉強してくれている生徒を持つ私は、なんとラッキーなことか。
今まで研修会はあっても、このように自分たちの状況や問題を語り合ったことはなかったので、ものすごく参考になりました。同じような体験をした人からのアドバイスには説得力があるし、意見を交換するうちに新しいアプローチのアイデアも出てきたり。人の体験や話を聞くことで、仕事への理解がぐっと深まったように感じました。
それに、自分だけで考え込まないで、人に話すことって大切ですよね。誰かに聞いてもらえるだけで、すごく癒やされます。多分、エージェントがこの会を持ったのは、そういう意図もあったんじゃないかな。個人で仕事をしていると、ひとりで問題や悩みをため込んでしまうことが多いと思うので。
実は、私も学校の生徒さんがひとり先学期から登校拒否気味なんです…。夏休み前の学期(3学期)に急に頼まれたんですが、多分学校嫌いを少しでも和らげるために、興味のある日本語を習わせることにしたんでしょう。彼は飲み込みがよく、ひらがなもカタカナもすぐ使いこなせるようになって、嬉しい限りでした。
が、どうした訳か夏休み明けからパッタリと学ぶことを拒否。あれっと思ってSENCOに報告したところ、どの教科も同じような状況だと…。授業中でも廊下の踊り場や反省室でひとり漫画を読んで時間をやり過ごしていることが多くなり、その姿を見る度にせつない…。
一応私の授業には来てくれるのですが、漫画やPCを離さず…。用意したテキストを学ぶ気はほとんど無く、勉強は全く進みません。仕方ないので、漫画の主人公について話したり、表情が和らいだところで日本語に切り替えたり。彼の好きな漫画のキャラクターをいっぱい使ったテキストを作るんですが、これもなかなか…。理由を聞いても、「もう学校には来たくない。家にいたい」としか言わないし。
一度、廊下で立ったまま動かなくなり(その時指定された教室が嫌だった)、私も付きあったことがありました。時々話しかけながら観察していると、他の生徒やTAが通る度にビクビクして嫌悪感も露わ。不安が高い状態なので、音や人の流れが普段より気に障ったよう。
彼が学校が嫌いだという理由はすごく解るんです。生徒が30人ほどしかいない小規模な学校ですが、彼にとっては人が多すぎるし、騒がしすぎる—例えば、教室の移動や、予期できない人の行き来、喧騒が多すぎる。あと、友達を作ろうとしないので、休み時間が結構辛いんだろうと想像できます。(他のASDっ子たちはグループや友達付き合いが結構できてるので)。
お母さんはどう思っているのか訊いてみたら、「僕の言うことなんか全然きいてくれない」と諦め顔。自分が何もしないことで、何かが動くのを待っているような状態です。
とても頭のいい子なので、ホームスクールか他の学校を探した方がいいのではと思うんですが、以前に不登校の時期が長くあり、その間家で何もしなかったとのこと。お母さんにとっては、とにかく学校に行かせて、社会性と勉強を学ばせたいという気持ちが強いのかも…。
外部の人間だからか私はミーティングには呼んでもらえず、担任やSENCOに相談しても忙しくて立ち話程度になってしまうし…。彼が苦しんでいるのに、何もしてあげられません。悶々としていたところに今回のミーテンングがあり、何だか救われた気持ちになりました。
子どもが緘黙で苦しんでいるのを見て悩む保護者の方も、先生方も、自分の中にため込まないで、誰かに話を聞いてもらってください。特に、緘黙の子どもを抱える親同士だったら、お互いに解り合えるし、励まし合えると思うのです。
子どももひとりじゃないし、大人だってひとりじゃない。
新年早々、重たい話ですみません。